脳が感知して、尿意を催す。
≫たまっているものがきてしまう。
(アナウンス)「東教授の総回診です」
(財前)ガンですね。
大丈夫です。
わたしが手術を引き受けますから。
(里見)医者は神様じゃない。
患者と同じ人間だ。
(東)自分の腕に酩酊してはいけない。
彼はいささか野心が勝ちすぎるところがありましてな。
(鵜飼)嫌ならよそから後任教授を連れてくればいいじゃないですか。
(ケイ子)教授になれないかもしれないわよ。
(又一)人間の究極の欲望は名誉だ。
(財前)鵜飼教授の見落とした患者を切ったりしたらあとがうるさいからな。
(里見)医者であるかぎり患者の命を守るために全力を尽くすべきじゃないのか?医者は神様じゃない。
人間だからな。
患者はどうなるんだ?小西みどりは君の玩具じゃないぞ。
残念だが僕の患者は小西みどりだけじゃない。
鵜飼教授のミスを指摘したことで僕が動きにくくなったらそれこそほかの患者の命にかかわる問題だ。
まあできる範囲での協力はさせてもらうからオペは勘弁してくれ。
申し訳ない里見。
(佃)金曜日に予約が入っている特診患者なんですけれども東教授が東京にご出張なのでお願いしてもよろしいでしょうか?
(財前)みかさ銀行の清水会長か。
向こうが納得してるならいいが。
(佃)向こうは東教授がご出張なのでラッキーなんじゃないですか?なっ。
冗談でもそんなことを言うな。
第一外科の教室の長はあくまでも東教授だぞ。
もっと尊敬しなさい。
(安西)アイアイアイテテテアイテ。
(局員)だ…大丈夫ですか?
(小西)でも良かったと思うよ。
財前先生みたいな有名な先生が手術をしてくれるっていうんだから。
(みどり)うん。
(小西)それにしても膵臓ガンとはな。
どうして最初に診てくれた鵜飼先生はひと言も言ってくれなかったんだろう。
(佐川)例えば医師にとって最も切実な問題として誤診があります。
画像診断の技術が進み以前に比べて誤診を起こす確率は低くなっています。
財前君の代わりは見つかりましたか?ああいえ。
まだ財前に譲らんと決めたわけではありませんので。
退官までそうお時間もないのですからそのおつもりなら早めに手を打たれたほうがいいですよ。
ありがとうございます。
(佐川)まずこちらを御覧ください。
ずいぶん手間のかかるテーマを選んだな。
みんなすぐに答えの出るものをやりたがるのに。
(柳原)僕財前先生のような医師になりたいんです。
僕のような?あの…僕の家金がないんです。
田舎で今どき6人兄弟で。
だから奨学金で医学部を出ました。
財前先生も奨学金で医学部を出られたと耳にはさんで勇気がわきました。
大変だなあ。
しかし苦学は何の言い訳にもならないぞ。
大学は力の世界だ。
そんなことでは誰も同情はしてくれない。
はい。
読んでおくよ。
はい。
よろしくお願いします。
失礼します。
一緒にするな。
(財前の鼻歌)
(佃)《金曜日に予約が入っている特診患者なんですけれど東教授が東京にご出張なので》いかがですか?何とか覚悟決めました。
(小西)で里見先生。
手術はいつになりますか?僕たちにも時間がかかるというか…。
あの大学病院の偉い先生に手術をしてもらうには前もってその特別にごあいさつをするのが常識だと聞きまして。
謝礼のことをおっしゃってるんでしょうか?あの僕たち何にも知らないから一体どれくらいお包みしたらいいんでしょう?
(みどり)ちょっとやめて。
里見先生に失礼よ。
謝礼などは一切必要ありません。
正規の治療費だけで結構です。
でも財前先生は有名な先生だから…。
一切必要ありません。
じゃあ特別なことをしなくても必ず財前先生に切っていただけるんですね?小西さんちょっとお話が。
はい。
(ノック)
(財前)やはりオペをやらせてもらうよ。
(里見)何を言ってんだ?
(財前)今ウチの外科で膵臓ガンを切れるヤツは僕以外にいないからな。
(里見)今更勝手なこと言うな。
(財前)じゃ断るか?オペの日程だが金曜に変更する。
金曜?やけに急じゃないか?緊急オペとしてやる。
緊急オペなら患者の名前は手術表には載らないし当日東教授は東京に出張だから許可もいらない。
よって鵜飼教授には知られずにすむ。
隠れてオペをやろうってのか?人聞きが悪いな。
僕は胃ガンの患者の緊急開腹を引き受けるだけだ。
その結果運よく膵臓ガンが出てきたら無論切るがな。
断る。
なぜ正しい治療をするのにこそこそ隠れてしなければいけないんだ?君は技術は確かだが肝心なとこで間違ってる。
おい。
患者はどうなるんだ?小西みどりは君の玩具でもないはずだぞ。
僕は医者として助けたいんだよ。
彼女を。
同じ気持ちさ。
君と。
(テーマソング)〜
(政子)佐枝子さんお願いね。
外科学会のパーティーは地位の高い方が見えてるから失礼のないようにごあいさつするのよ。
(佐枝子)心配ならお母さまがお供すれば?
(政子)しかたがないじゃないの。
くれない会があるのだから。
嫌なら手を抜けばいいじゃないか。
(政子)そうはいきませんわ。
私教授夫人会の副会長ですのよ。
特に今回は会長の鵜飼教授夫人のお誕生会ですからいろいろ準備が大変なんですの。
私がお役目をおろそかにすればあなたの大学でのお仕事のお立場にも響いてきますでしょう?
(佐枝子)行ってまいります。
(政子)はい佐枝子さん。
行ってらっしゃい。
東京ではくれぐれも皆さんにご無礼のないように…。
緊急で申し訳ない。
患者の姓名は小西みどり。
32才。
早期の胃ガンの所見だが膵臓にもガンを併発している疑いがあるため開腹にて確認する。
(安西)膵臓ガン併発ですか?
(財前)膵臓ガンが根治できる段階で確認されることはめったにない。
よく見ておきなさい。
(一同)はい。
(金井)あのなぜ緊急オペなんですか?なぜとは?
(金井)膵臓ガン併発なら定時手術として態勢を整えて臨んだほうが確実ではないかと。
ある事情があってこのオペは公にはできないんだ。
あのそれは…。
それは?東教授にも内密にオペを行うということですか?そうだ。
どういうことでしょう。
事情を教えてもらえませんか?君たちに話せることではない。
ただ僕に言えることは患者の命を救うことに全力を尽くすそれだけだ。
たとえ密室のオペにしてでも。
もし僕を信じてついてこられない者がいるならかまわない。
ここから出ていってくれ。
では画像に関してだが…。
(金井)すいません。
財前先生を信じられないわけではありませんがどんな事情があるにせよ密室のオペには賛同できません。
佃。
金井の代わりに前立ちに入れるか?
(佃)はい。
(小西)大丈夫だからな。
財前先生が切ってくれるんだから。
なっ。
(みどり)うん。
(娘の泣き声)
(小西)大丈夫だから泣かないの。
ねっ泣かない。
(娘の泣き声)
(小西)なあ泣かないの。
大丈夫だからなっ。
あっ。
(竹内)すいません。
(君子)あら。
鵜飼先生に診ていただいたんですか?はい。
初診のときに。
(財前)結紮。
(佃)3−0絹糸。
(財前)クーパー。
結紮点を動かすな。
(佃)すいません。
(財前)術中プローブ。
(看護師)はい。
(安西)金井先生。
(財前)遅いじゃないか。
ハーケンだ。
(金井)はい。
(財前)おっいたいた。
腫瘍だ。
大きさは1センチ強ってところだな。
当たりだ。
(佃)初めてですね。
ここまで初期の膵臓ガンは。
(財前)うん。
(竹内)ホントに大丈夫ですか?こんなオペをやって。
(里見)この件は聞かなかったことにするんじゃなかったのか?
(竹内)もし鵜飼教授に知れたら…。
くだらんこと言ってないで君も医者ならちゃんと見ろ。
これはめったに出会えない手術だ。
〜
(業者)つまんない物ですけれども甘い物ですがどうもお納めください。
頂きます。
(業者)はい。
先生それからもう一つ。
お納めいただけますでしょうか。
(鵜飼)いやそれは…。
(財前)ブルドック。
(船尾)遠いところ申し訳ありません。
いえいえ。
東都大瀬川教室の同じ門下じゃありませんか。
(鵜飼)おおうまそうじゃないかね。
(看護師)わあおいしそう。
(看護師)ありがとうございます。
僕はこれがいいね。
うん。
(看護師)ピンクですか?かわいい。
(財前)ちょっと暑いな。
(佃)空調下げて。
(看護師)はい。
(財前)標本出るぞ。
(佃)はい。
〜
(財前)ハーケン。
いいご縁がございましたらご紹介ください。
(船尾)独身の医局員がたくさんおりますのでこちらからお願いしたいぐらいです。
ハハハハ。
(財前)完了だ。
(一同)お疲れさまでした。
(看護師)4時間ちょうどです。
(財前)君の診断どおりだったよ。
あれなら鵜飼教授が見落とすのも無理はない。
ホントによく見つけたな。
検査の値を見て念を入れただけだ。
誰にもできそうでいてなかなかできないことだよ。
財前。
内科医の自分から見ても見事なオペだった。
膵臓ガンのオペをこれほど完璧にできる人間は君をおいてほかにはいないと思う。
君に褒めてもらえるとはな。
いやすばらしいよ。
でも残念だな。
これほど見事なオペならこそこそせずほかの研究室のヤツらにも見せてやりたかった。
まっ患者は助かったんだからいいじゃないか。
それよりどうだ?久しぶりに。
お互いの実力に祝杯を上げようじゃないか。
ああごめん。
3時間おきにデータを取らなきゃいけない実験があるんだ。
じゃあ。
(里見)ああ。
〜〜
(船尾)正直驚きました。
あの財前助教授に教授を継がせるお気持ちがないとは。
どうでしょう?船尾先生のほうで私の後を継いでくれる人材にお心当たりはないでしょうか?いないではないのですが…。
船尾先生のほうも浪速大へ門下を送ることになればご自身の勢力を拡大するわけですから悪い話ではないのでは?
(ノック)
(又一)はい。
失礼いたします。
(又一)は〜あ甘いのう。
何を子供みたいなことやっとんや。
子供みたい?脇がスカスカや言うとんのや。
(又一)五郎君。
自分が何をやったか分かってるのか?
(又一)医学部長の誤診を指摘するようなオペやったら教授になるどころか医学部から追い出されるで。
ああ?
(財前)それでしたら心配はいりません。
万一を考えて表向きはあくまで緊急手術でとおしてあります。
アホが。
そういう操作やったらかえってばれたときに言い逃れできへんやないかい。
しかしオペをした患者は特診でも紹介患者でもない一般の患者です。
月に300人以上を診る鵜飼教授がたった一度だけ外来で診た患者のことを覚えているとは到底思えません。
そこが甘い言うてんのや。
あいつら学者面してええかっこしとるくせにもうしっと心は人一倍強うて陰険な目光らせとるんや。
五郎君。
何でまた医学部長の鵜飼教授の介在しとるオペなんぞに手出したんや?それは膵臓ガンのオペは回ってくる確率が高くありませんのでぜひやっておきたかったのです。
危ない橋渡ってまでかい?僕の専門とする食道ガンは最近内科的治療が進出してきております。
ここはやはり最も困難といわれる膵臓ガンの分野に引き出しを増やしておきたいのです。
食道外科だけを頼りにしていては教授になってから行き詰まりますので。
ほう。
教授がゴールやないとでも?〜
(又一)よっしゃ。
わしも次の手考える。
こないなったら後へは引けん。
あんたを絶対に教授にしたる。
あんたも鵜飼ににらまれんようしっかりと後始末しときなはれ。
下手を打ったらほんまに一巻の終わりやで。
後始末?今も昔も世の中実弾やゆうこっちゃ。
(三知代)好彦がお父さんに渡してくれって。
(里見)あいつまたたくさん描いたな。
(三知代)今日ね則内院長の奥さまから電話があったわ。
院長の?
(三知代)来週鵜飼教授の奥さまのお誕生日パーティーがあるから参加しないかって。
で?ああいう集まり苦手だから行きたくないんだけど。
じゃあ断ればいいさ。
でも鵜飼教授はあなたの教授だから…。
行きたくなければ行くことはない。
教授だから助教授だからと立場ばかり考えてるからおかしくなるんだ。
正しいことも言えなくなるんだ。
(好彦の咳)すまん。
ちょっと俺疲れてるみたいだ。
今日ね栗ご飯なのよ。
栗むくの大変だけど好彦も好きだし。
俺はこんな立派じゃないな。
(ケイ子)おやすみなさい。
(運転手)ありがとうございました。
(ケイ子の鼻歌)あっ…。
ハハハハ。
(ケイ子)寝たいだけならゆっくりウチ帰って寝たらいいのに。
ここへ来て寝たいんだ。
(ケイ子)難しいオペがあってそれがうまくいったんでしょ?膵頭十二指腸切除をやった。
我ながら完璧なオペだった。
(ケイ子)奥さんじゃオペの後の興奮は分かってもらえないからとりあえずここへ発表に来るんでしょう?
(財前)さすが女子医大中退だな。
キャッ。
外科医の気持ちがよく分かってる。
でも本当の意味で患者の命を救ったのは五郎ちゃんじゃないわね。
何?フフフ。
だって膵臓は沈黙の臓器だもの。
ガンを切った外科医よりもそれを発見した内科医のお手柄なんじゃない?あら怒ったの?もっと単純に褒めてほしかった?もっと怒っていいわよ五郎ちゃんねえ。
わたしねもう五郎ちゃんが怒るともうわくわくするの。
もう退屈も憂鬱ももういっぺんに吹き飛ぶ感じ。
鵜飼教授ってよく店に来るのか?うん。
何よ急に鵜飼さんの話なんて。
オペというのは後始末が重要なんだ。
そうね月に1回ってとこかしら。
ケチだからお酒も女もあんまり好きじゃないみたい。
何が好きなんだ?うーん。
やっぱり後に残るものなんじゃない?お金とか地位とか後は…。
(杏子)ふうん。
あなたが絵を見たいとはね。
(財前)君のお父さんにいつも言われてるからな。
医者は趣味くらい持たないとダメだって。
おお。
あれなんかいい色だな。
えっ?ああ。
ふうん。
おい。
向こう行ってみようか。
(杏子)うん。
(店主)バニアルブファールの海はリャドが晩年を過ごしこよなく愛したマジョルカ島を描いた一連の作品の…。
ほら。
あれがスペインのマジョルカ島だ。
(杏子)ああホント。
ねえ新婚旅行を思い出すわね。
うん。
まだ研修医だったな。
(杏子)うん。
(財前)うん。
何だ財前君じゃないか。
あっこれは鵜飼教授。
(鵜飼)いやこれは奇遇だね。
君が細君を連れて画廊に現れるとは珍しいじゃないか。
(財前)先生こそいつも目の回るお忙しさと伺っております。
(鵜飼)いやいや僕は絵を見て歩くぐらいの時間はあるよ。
多忙なのは君のほうだろう。
じゃんじゃん仕事はするしマスコミには派手に出てるし。
先生までそんなふうに僕が派手にやっているなどとおっしゃられては困ります。
また誤解されて…。
誤解?はあ。
僕はどうもいろんな面で誤解されやすい人間で。
今日も妻の誤解を解くために街に出てきた訳でして。
(鵜飼)ハハハ。
お互い愛妻家は苦労するね。
(典江)あなた。
あまりデートのお邪魔しちゃ失礼だわよ。
はいはい。
じゃあ失敬するよ。
はい。
いい休日を。
それでは失礼いたします。
そろそろ時間じゃないのか?えっ?遅れると友達に悪いだろう。
僕はもう少し絵を見ていくから。
大学病院って大変。
じゃ。
あっ。
ねえ。
パパじゃないけどあなた早く教授になってよね。
わたしもどうせなら教授夫人になりたいわ。
うん。
君。
(店主)はい。
(財前)この絵はいくらだ?いやこのサイズでしたら400万ぐらいになりますけど。
400万か…。
(財前)ありがとう。
昨日柿がついた。
うまかったよお母ちゃん。
(きぬ)ハハハよかったよかった。
いえねいつも同じもので悪いんだけどさあんたちっちゃいときから好きだったからね。
いや昨日難しいオペがあって疲れてたからなおさらうまかった。
(きぬ)無理すんじゃないよ。
えっ五郎。
(きぬ)身の丈に合わない無理をして偉くなったって幸せになれるとはかぎらないんだからね。
(財前)心配するなよ。
僕は毎日何人もの命を救ってる。
患者はみんな僕に感謝してるし教授も僕には一目置いてる。
何もかもうまくいってるさ。
(典江)あなた。
あなた。
(店主)堂島の財前マタニティクリニックさまからお届けせよとのことでございます。
(典江)まあ。
(鵜飼)財前の舅が?財前さんって田舎者だと思っておりましたら意外と気が利くのね。
はいご苦労さま。
(財前)経過はとても良好ですよ。
お大事に。
(小西)財前先生すいません。
ホントにこの度はありがとうございました。
あっこれつまらない物ですけど。
ウチは国立の大学病院です。
このような物は頂けません。
ただのまんじゅうです。
僕の実家が和菓子屋をやってまして。
ほんの気持ちだけなんですけど。
まあお気持ちということであれば。
(足音)
(助手)第一内科鵜飼講座教授総回診。
よろしくお願いいたします。
(一同)よろしくお願いします。
はいよろしくね。
(看護師長)本日の患者数は83です。
里見君特に報告することはないね?はい。
(鵜飼)どうした?里見先生。
すいません。
すぐに戻ります。
これ頼む。
何だ。
ただのまんじゅうか。
うん。
(ノック)はい。
何だいきなり?なあ財前。
やはり鵜飼教授にありのままを報告しよう。
(財前)何を言いだすんだ今さら。
(里見)何度も考えたんだが事実は公にし教室の症例検討会にも出すべきだ。
何度言ったら分かるんだ。
そんなことをすれば鵜飼教授の誤診をみんなに知らせることになる。
大学の医学部内ではたとえ教授の診断が間違っていてもそれに批判を加えたり訂正することはタブーじゃないか。
だから…。
だからそんな旧態依然としたタブーに縛られてはいかんと言ってるんだ。
医学部は旧態依然としたところなんだよ。
正しい診断より教授の権力のほうが強大だというのが現実なんだ。
その現実にある程度妥協しないとお互いに教授にはなれないぞ。
教授などというものはなろうとしてなるものじゃない。
自分の研究を積み重ねていくうちに認められて教授に選出されるものだ。
それは君と僕の人生観の違いだな。
まっ僕の人生観についてはいずれ日を改めてゆっくり話させてもらうよ。
なぁ財前。
よく考えろ里見。
君の大好きな研究も教授という権力に集まってくる寄付や製薬会社の委託研究費で賄われてるんだ。
鵜飼教授に盾ついて地方へ飛ばされたら研究どころじゃなくなるぞ。
それならそれでかまわん。
ホントにかまわないのか?地方の大学へ行けば試薬1瓶マウス1匹入れるのだって思うようにはならない。
日本で一、二を争う恵まれた環境で研究している君に果たしてホントに耐えられるのか?僕なら耐えられないね。
絶対に。
お宅の先生は中だ。
いいえ財前先生に。
鵜飼教授からです。
ご苦労さま。
失礼します。
(佃)おっうまそう。
ちょうだいします。
(安西)ヤナ第二に行ってお茶もらってこい。
(佃)先生もいかがですか?甘い物は苦手でね。
(安西)金井先生もどうですか?いただきます。
おはようございます。
(安西)おはようございます。
(東)おはよう。
(財前)出張お疲れさまでございました。
(東)留守中何か変わったことはなかったかね?何もございません。
(財前)こちらはみかさ銀行の清水会長のカルテです。
先生がご不在でしたので代わりに診察させていただきました。
うんこれは?患者さんからの進物かね?
(財前)はい。
患者からの付け届けは禁止されてるのは知っているだろう?申し訳ありません。
どうしてもと言われ受け取ったほうがご家族も気が済むのではないかと…。
こういう些細なことが1回のオペで100万円の礼金を取るなどという噂につながるんだよ。
おおっぴらに分けるなど不注意でした。
今すぐ返して参ります。
(東)いやそこまでしなくてもいい。
ただ医者というのは腕だけでなく人格も優れたものでなければならんと言っているだけだ。
(財前)申し訳ございませんでした。
(女たち)「ハッピーバースデーディア鵜飼会長」
(女たち)「ハッピーバースデートゥーユー」
(拍手)
(政子)お誕生日おめでとうございます。
鵜飼会長。
ホントに感激でございますわ。
この年になってこんなにたくさんの方々にお祝いしていただけるなんて。
さあさあどうぞ皆さん。
お座りになって。
(昭子)くれない会は鵜飼会長なしには存在しませんもの。
(喜久子)ますますお美しくなられてうらやましいわ。
娘にもいつも鵜飼会長のお人柄については言って聞かせておりますのよ。
(三知代)お邪魔いたします。
(喜久子)ほかにもお若い方をお呼びしてございますのよ。
さあどうぞ。
お入りになって。
あっあの…。
おめでとうございます。
まあ。
里見さんじゃございませんの。
お珍しいわね。
あのいつも不作法ですいません。
(典江)いいえ。
よく来てくださったわどうぞ。
教授夫人と助教授夫人はもっと仲よくいたしませんと。
あっはい。
ねえ。
ねえ。
(君子)お疲れさまです。
(東)里見君じゃないか。
(里見)ああ…。
外科に何か?いえ。
(君子)あっ里見先生内科から来た患者さんのことを心配なさってるんです。
(東)ほう感心だね。
医者は派手な功績にばかり目を向けるのではなく君のように誠実なところがなくてはならない。
わたしは誠実ではありません。
どういう意味だね?何かあの患者に疑問でもあるのかね?いえ。
あの患者の手術は成功しました。
命は救われました。
〜
(典江)大学院ですって?
(政子)フランス文学を。
(典江)すばらしいこと。
(喜久子)会長!
(政子)おくてっていうんでございますか…。
あっ!
(喜久子)ごめんなさい。
すばらしい絵ですわね。
(昭子)まあきれいな。
あっ。
ちょっと失礼。
ちょっとちょっとちょっとごめんなさいませ。
あら。
会長これリャドじゃございません?さすが東さん。
目がお高いわ。
私展覧会行ったことございますの。
もうとてもとても高くて求められませんでしたけれど。
宅だって買えませんわよ。
ちょっとした頂き物なんですの。
東さんのところにはもっとすごいのが届いてるんじゃございません?何せ財前助教授は何かと派手な方ですもの。
ホホホ。
いいえホホホ。
(女たちの笑い声)
(足音)
(女たちの笑い声)どうぞ。
ありがとうございます。
ああいう集まりあんまり慣れてなくて。
わたしも母に連れ回されるばかりです。
大変ね。
大変です。
(女たち)「ハッピーバースデートゥーユーハッピーバースデー…」飲みましょう。
はい。
(ケイ子)ごぶさたしてます先生。
お待ちかねよ。
遅くなりました。
(鵜飼)財前君。
あの絵はどういうつもりかね?やはりそのことでございますか。
当たり前じゃないか。
何百万もするものを贈られて平気な顔をしていられるほど僕は図太くないんでね。
あれはわたしの義父が鵜飼医学部長に差し上げるようにと申しましたものです。
君のお舅さんから絵などもらういわれはないよ。
義父は医師会の役員をしておりましてこの先鵜飼教授にいろいろとご指導を賜りたいと願っておるのでございます。
ふうん。
すると医師会の役員として僕にあいさつをしておきたいという意味で他意はないということかね?はい。
一切ございません。
(ケイ子)どうなさったの?
(鵜飼)おお。
名医が難しい顔を突き合わせて。
いや。
今日はね財前君のすばらしいオペ技術についてご指導承ろうと思ってね。
財前先生のオペの腕はすごいそうですものね。
そうなんだよ。
いやおからかいを。
いやからかっちゃいないよ。
まずはウチの科から君のところに回った膵臓ガンのオペについて聞こうか。
思い出せないかい?小西みどりという患者なんだが。
僕も外来で一度診ただけで顔はもうすっかり忘れていたんだが今朝ご主人があいさつに来てね財前先生の手術のおかげで命拾いをしたと喜んでいたよ。
ああ思い出しました。
あの患者は鵜飼教授のご指摘どおり初期の膵臓ガンでしたので膵頭十二指腸切除を行いました。
僕が膵臓ガンを指摘した?はい。
鵜飼教授のご診断なら間違いあるまいとわたしがオペをかって出たのです。
ふうん。
そりゃあ患者も幸運だったね。
おかげさまでいい勉強をさせていただきました。
そりゃご苦労さまでした。
とんでもございません。
さっどうぞ。
(鵜飼)で?東教授は何と言ってるんだね。
それが東教授は東京に出張中でしたのでまだご報告は…。
そりゃいかんな。
助教授が主任教授を差し置いて勝手にことを運ぶなんてのはもってのほかだよ。
第一膵臓ガンなら東教授が自ら切ると言ったかもしれん。
お茶。
甘いわこれ。
あっ…ああ。
はい。
まあいいとするか。
患者もこうして喜んでいることだし。
今回のことは東教授には黙っておこう。
ご配慮ありがとうございます。
これからも何かとよろしくご指導願います。
で財前君。
あの絵だがね…。
はい。
頂くことになるか返すことになるかともかく今日のところは預かっておくことにするよ。
いや鵜飼先生。
鵜飼先生!失礼いたしました。
あの受け取っていただけないのでしょうか?賄賂をもらったととられると何かと面倒だからね。
じゃ失敬するよ。
(ケイ子)あっ先生。
お茶。
ちょっとヤボ用でね。
あらそうなの?ありがとうございました。
(又一)あっもしもし?あっ財前又一でございます。
ええ。
実はあの折り入ってあのお願いしたいことがありまして。
ええ。
婿のことなんですけど。
ええそうですねん。
あの目に入れても痛うない財前五郎の。
ええ。
どうでっしゃろ。
急ですねんけどこれから一席設けますさかい話聞いてもらえまへんやろか。
ええぜひともお力お借りしたいんですわ。
ええあなたさまの強大なお力を。
『アメイジング・グレイス』〜〜〜〜〜2015/11/24(火) 14:55〜15:50
関西テレビ1
白い巨塔 #02[再][字]【教授の椅子に座るのは誰か?財前の野望を賭けた戦い!】
「贈り物」
詳細情報
番組内容
飛び切り腕は立つが権力欲の塊の浪速大助教授で外科医・財前五郎(唐沢寿明)は、里見助教授(江口洋介)が相談に来た膵臓がん患者が、鵜飼医学部長(伊武雅刀)の診断見落としと聞き、出世の妨げとばかりに手術を降りることにした。しかし、初期膵臓がんという貴重な症例の手術に意欲と功名心を抑えきれず、責任者である東教授(石坂浩二)の出張中に緊急オペとして執刀、見事に成功させる。
番組内容2
だが、そのころ東は外科学会パーティの席で、弟弟子である東都大の船尾教授(中原丈雄)に自分の後を継ぐ教授の人選を頼んでいた。 人心の裏を読む舅の又一(西田敏行)は、五郎の行動の甘さを指摘。“実弾攻勢”を命じる。五郎は、鵜飼部長を取り込むべく、偶然を装って鵜飼の訪れている画廊に足を運び、後で鵜飼好みの高価な油絵を贈る。鵜飼は五郎を呼び出し真意を問うが・・・。
出演者
唐沢寿明
江口洋介
黒木瞳
矢田亜希子
水野真紀
沢村一樹
片岡孝太郎
伊武雅刀
若村麻由美
西田尚美
野川由美子
池内淳子
伊藤英明
石坂浩二
西田敏行ほか
原作・脚本
【原作】
山崎豊子
【脚本】
井上由美子
監督・演出
【企画】
和田行
【プロデューサー】
高橋萬彦
川上一夫
【演出】
西谷弘
【音楽】
加古隆
「アメイジング・グレイス」ヘイリー
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
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