木曜時代劇 ぼんくら2(5)「新たなる容疑者」 2015.11.24


(平四郎)ハハハ…。
(錠之介)井筒殿。
はい?委細承知。
定町廻り同心佐伯錠之介をもてなし葵殺しを調べ直す許しを得た平四郎はおふじや孫八ら葵に恨みを持つ人物を疑う
だが弓之助は葵殺しの現場の様子からこの事件は何かの間違いで起こったとっさの犯行ではないかと推理する
(弓之助)「人」ではなく「事」を見るのです。
だから?あの場で起こった「事」のありさまだけを見てみると葵さんに深い恨みを持つ人の仕業だとは思えないのです。
平四郎は鍵を握るもう一人の人物湊屋総右衛門と会う事になった
まるでもののけの親戚だな。
(烏の鳴き声)うわ〜!
(鳴き声)葵の事は気の毒だった。
井筒様にはいろいろご造作をおかけ致しました。
遅まきながら厚くお礼とおわび申し上げる次第でございます。
気持ちばかりでございますがおわびとお礼のしるしに井筒様のご新造様にお召し頂ければとあつらえさせたものでございます。
日本橋通2丁目上総屋の品。
もしお気に召して頂けましたならば上総屋の者をやりまして仕立てに取りかかる手配はできておりますので。
手に取ってみてもいいかい?
(総右衛門)もちろんでございます。
(錠之介のまねで)委細…承知しておるので遠慮なく。
ヘッヘッヘ…。
…と言いたいところだがどなたかとは違って小心者に出来てる。
それにこいつは三十俵二人扶持の小役人のご新造様には過ぎたべべだ。
気持ちだけ頂いておこう。
お気に召さなかったようだ。
葵の着物も上総屋のものかい?あの日この座敷の衣桁には白菊柄の着物が掛かってたそうだ。
葵には特にひいきのお店はなかったようでございます。
白菊の着物は確か白木屋かと。
大店だ。
さすがだな。
佐吉はやっちゃいねえよ。
佐吉の話によればたまたまあの場に居合わせ葵の亡骸を…。
いや…死んだと思っていた母親の亡骸を見つけただけだ。
下手人はほかにいる。
そこでだ湊屋さん。
あんたたちの中にそれと心当たりのあるやつがいるならさっくりと教えてほしいと思ってね。
それが今夜の用向きだ。
下手人は佐吉。
…という事で事は収まったはずでございます。
もとより私どもにはあれをそんな立場に追い込んだ責めがございます。
ですからこそ手を尽くしてあれを縄付きにはしませなんだ。
湊屋さん。
あんた本当に佐吉が葵を殺めたと信じてるのかい?事は収まったなんてよそ行きの口上はいらねえ。
本音を聞かせてくれ。
ほかに誰がございましょう。
あんたの頭の中を駆け巡ってる女はどうだい?
(久兵衛)井筒様のおっしゃっているお方はおふじ様の事でございましょうか?ほかにいるなら教えてくれ。
旦那様。
井筒様におふじ様の事をお話しした方がよくはございませんか?ここはお話しなさった方がおふじ様にとっても救いになるのでは…。
おふじがどうかしたのかい?旦那様。
井筒様はあれが首くくりのまねをした事はご存じでしょうか?佐吉から聞いた。
だが今の言い方はおふじに気の毒だ。
まね事だったかどうかは分からねえ。
本気で死ぬつもりだったのかもしれねえ。
まね事であったにしろなかったにしろあの時を境におふじは乱心致しました。
あ…?おふじは今己がどこの誰であるのか分からなくなっております。
昼も夜もうれしいも悲しいも何もございません。
日がな一日空を眺めております。
おふじは人を殺める事はおろか一人で出歩く事もできやしません。
ですから下手人は佐吉と思うほか道はございませなんだ。
何しろ亡骸のそばにいたところを捕らえられたのでございますしな。
その事ほかに知ってる者は?手前に久兵衛それと房吉。
へえ。
あとはふじ屋敷の女中たちでございます。
ほかには決して漏れてはおりません。
井筒様。
この事どうかご内聞に願いたいのでございます。
ああ。
俺だってそこまで粗忽者じゃねえ。
いいな?政五郎。
(政五郎)へい。
かわいそうな女だ。
井筒様がおふじと佐吉のほかに葵を恨んでいる者がいないかとお聞きなのでしたらほかにはございませんと申すほかありません。
葵は上方じゃ手広く商売をしてたっていうじゃねえか。
商売敵はいなかったのか?いたとしても江戸まで追いかけてくるとは…。
あんたの商売敵はどうだい?私に恨みを持つ者は数え切れません。
それでもその数ある敵の眼中に葵は入っておりません。
湊屋総右衛門の敵は湊屋総右衛門を狙います。
湊屋の身代のれん看板。
葵を殺めたところで湊屋のどこに傷がつきましょうか。
あんたの心には?どうしたい?人は誰でもいつかは死ぬものでございます。
定めがある以上嘆いてばかりもいられません。
そうかい。
心の声…だとさ葵さん。
お前さんが死んでも立ち直れないほど深い傷じゃねえって旦那はそう言ったんだぜ。
人は誰だってみんないつかは死ぬんだってさ。
(葵)それでこその湊屋総右衛門でございますよ。
心の声そうかい。
だったら聞こう。
あんたを殺したのは誰だい?
(総右衛門)井筒様。
ああすまねえ。
ぼんやりしちまった。
それで例の幻術一座にあてられた孫八だが…。
(久兵衛)あのあと湊屋の使いの者に連れ帰ってもらい手前どもの目の届くところにおります。
どこに?私が旦那様に任されている川崎の別邸に下男として住み込んでおります。
ここまで連れてくるのはいささか難しいので井筒様に足を運んで頂くしかございません。
湊屋さん。
もうほかに聞く事はねえ。
ただし…これから先佐吉には一切関わらないでくれ。
あいつをふじ屋敷に出入りもさせねえ。
いいな?それはもうよろしいように。
では私はこれで。
井筒様。
明日組屋敷の方にお伺いしてもよろしゅうございましょうか?あ…?ああいいよ。
それでは。
久兵衛さんは何のお話があるのでしょうか。
さあな…。
しかし旦那の言うとおりだ。
湊屋さんてのはもののけの親戚みたいなお人だ。
なあ。
ところで政五郎。
杢太郎の話だが…。
(杢太郎)晴香先生!
杢太郎の話とは法春院へ手習いに通っているおはつが一時行方知れずとなり葵の家で見つかった事である。
杢太郎は子盗り鬼の仕業だと断じていた
いかにもおかしな話です。
同じ場所で続けての首絞めって事になります。
葵さんの一件と関わりがあると考えるのが道理でしょうがしかしどうつながるのか。
あ…。
お…叔父上。
ああ行ってこい。
ほら。
おでこも行ってこい。
ほら…。
(ため息)弓之助はな悪い夢を見ておねしょをする癖がある。
ええ。
殺しだ何だと子どもが聞く類いの話じゃありませんからね。
心がついていかないんでござんしょう。
だがあいつのおつむりを働かせるのをやめさせる訳にもいかねえ。
それはそれであいつにとって酷だ。
今はつらくても心が育つのを待つしかねえ。
へい。
さてと…。
(腰が鳴る音)旦那?う〜ん…腰が…。
えっ…旦那…。
…とまあそういう訳だ。
ちょうどよかったよ。
お前に知らせをやろうと思ってたところだったからな。
(佐吉)俺もあのあとの事が気になってましたから。
旦那のおっしゃるとおり湊屋とはもう関わりを持ちたくありません。
お恵も同じ気持ちです。
ですがおふじ様がそんなあんばいだったとは…。
ああ。
下手人は一体誰なんだって話だ。
あっ…そういえば昨日法春院で手習いの師匠だとおっしゃる晴香先生というお方が通りがけに挨拶に見えられました。
ああ。
政五郎がそんな事言ってたな。
お前が「いい匂いがする」とべんちゃらを言ってたとな。
いや…いや…べんちゃらではございません。
本当にお着物からいい匂いがしたのでございます。
晴香先生からの匂いは匂い袋でした。
佐吉さんもお母上の亡骸に駆け寄った時いい匂いがしたとおっしゃってましたが。
え…?はい。
甘ったるいいい匂いが。
(弓之助)それは葵さんの着物の匂いでしたか?いや…違ったと思います。
ああほら…衣桁に掛けてあった白菊柄の着物の匂いじゃねえか?おい。
(小平次)旦那。
仕立て上がったばかりの着物は匂いません。
しばらくの間匂い袋と一緒にしまうとか匂い袋を袖口や胸元に忍ばせるとかしなくちゃ。
ふん。
うへぇ。
確かにそうです。
白菊の着物からの匂いじゃなかったような…。
あ…あの…叔父上…。
叔父上。
ああ?何だ?あ…ほら。
えっ?またか。
行ってこい。
ほら…。
いえ違うんです。
あの…尾籠な話なのですが人は首を絞められて死にますと大抵…ね…その…。
下の方が緩むと申しますか。
ああ。
まあ大抵そうなるな。
(弓之助)はい。
あ…?そうか。
あの時…。
(嗅ぐ音)ありゃあそいつを嗅いでたのか。
はい。
まだ少々残り香が残っておりました。
残り香ねえ。
事程左様にあの臭いというのは強烈なものですが佐吉さんはいい匂いがした事の方を覚えていたんですよね?へい。
そっちの臭いは…。
けどよ匂い袋からの匂いはそんな強いもんじゃねえだろう。
そこです。
どこ?あ…ですから匂い袋の匂いは袋が破けて中身が散ったりしない限りはほのかな匂いです。
じゃ佐吉さんの嗅いだ匂いの正体は何なんでしょうか?何だったんでしょうか…。
俺にも分かりません。
だてに寝小便してねえな。
弓之助!この野郎!叔父上!叔父上!叔父上!
(腰が鳴る音)腰が…。
あ…。
旦那?えっ…?旦那!叔父上!旦那!えび反った。
えび反った。
2年ばかり前久兵衛は鉄瓶長屋で口うるさいが実直な差配人として平四郎やお徳と見知った間柄であった

(小平次)旦那。
おいしそうな干菓子を頂きましたよ。
おおそうかい。
お懐かしゅうございます。
お元気そうで何よりです。
うへぇ。
お願いします。
・湊屋はあんたがとっくに川崎に戻ってると思ってんだろ?いいのかい?必要とあらば主にうそをつきますのも奉公人の働きのうちでございます。
なるほど。
…で?井筒様。
旦那様とおふじ様の間にある事情がございます。
それを聞けってか。
井筒様には湊屋の事を知っておいて頂きたく。
実は湊屋のご長男跡取りの宗一郎様は旦那様の実のお子ではございません。
…へっ?久兵衛。
はい。
総右衛門とおふじの縁組みは総右衛門の商人としての先行きを見込んだおふじの父親がまとめたって話だったが。
ですが当時おふじ様にはよそに思うお人がいらしたようで。
つまり嫁になってからもその男とって事か。
ひそかに通じておられたようです。
もっとも宗一郎様が生まれて間もなくその男は病を得て死んだそうです。
・不義の子って訳か。
宗一郎は…。
手前がこの事を知っている事を旦那様もご存じありません。
だったらあんたは誰から聞いたんだ?ご本人の宗一郎様からです。
久兵衛が任されている川崎にある湊屋の別邸にある日宗一郎が突然訪ねてきた事があった
(宗一郎)そうか。
知らなかったのか。
お前は親父の懐刀だから知らされているとばかり思っていた。
ですがそのような話一体誰からお聞きになったのでございますか?おふくろからだよ。

(おふじ)お前はね宗一郎。
旦那様のお子じゃないんだよ。
それは旦那様もご存じの事。
旦那様はお前を跡取りに据えるとおっしゃってるけど先は分からない。
だからお前も覚悟をしておくんだ。
おふじも余計な事を言ったもんだ。
まあ俺が宗一郎ならそんな事打ち明けられた時点で家を飛び出してる。
さもなきゃ放蕩三昧で大暴れだ。
それを知らん顔して真面目に商いやってるってか。
はっ!仏様かよ宗一郎は…。
井筒様には湊屋の悪い事ばかりお見せしなければならずまことに…。
何だっていいや。
…で久兵衛さん。
あんたどうしてこんな話を俺に聞かせたんだ?葵殺しには関わりあるのか?いいえ。
ただ旦那様のために少々言い訳をしたくなりましたので。
つまりその…葵様と比べておふじ様に対するなさりようが冷たく厳しいと井筒様は思っておいででしょうから。
弁解に来た訳だ。
総右衛門の忠実な奉公人として。
ですが本当のところは分からないのでございます。
…うん?長じて宗一郎様はお声や立ち居振る舞いが旦那様に似てまいりました。
宗一郎様がお生まれになったのはご夫婦が添ってからの事。
月日に足りない事もありません。
ですから恐らくおふじ様もどちらの…。
なるほど。
おふじはただただ宗一郎を思う男の子だと思いたかった。
だから総右衛門に告げた。
総右衛門はそれをのみ下し葵に逃げた。
はあ…なんともはや俺にはもうお手上げだ。
日々の暮らしで精いっぱいのやつらの事は俺もよく分かる。
だが湊屋さんの事情だけは手に負えねえや。
ただ…。
一つ分かった事がある。
てめえにどんなきつい事を言おうと母親は母親だ。
おふじの気がふれたもとが葵にあると知ったなら宗一郎が葵を殺してやろうと考えたって不思議じゃねえ。
本当の父親じゃない総右衛門の泣きっ面が見られるんだからよ。
つまりは「鼬の最後っ屁」って訳だ。
井筒様。
顔は仏でも心は夜叉。
湊屋さんの血筋ならお得意だろ?宗一郎。
いや…いい。
心の声まさか…。
うう…。
ああ…すまねえな。
(志乃)いいえ。
はあ…。
なかなかやみませんわね。
霧雨はなぜかしら悲しいものです。
空も寂しい色をしております。
こんな雨を見てるとさふっとさ妙に泣きたくなったりするものかい?はい?お前さんがおぼこ娘のような事を言うからさ。
どんなおなごでもどんな大年増になってもどこかにおぼこ娘の部分を残しているものです。
そうかねえ。
殿方がどんなに枯れたお年寄りになってもどこかにすけべえを残しているのと同じ事でございますよ。
ハハハ…。
悋気はどうかな?あれは大年増になっても続くものかな?さあ…。
あなたそれは謎かけでございますか?えっ?何やら悪さをしておいでなのでございますか?…いやいやうっ!
(腰が鳴る音)平気で…。
平気だ平気だ。
頂きます。
はい。
そういや坊ちゃん近頃は…ほら坊ちゃんお得意のこいつはやりませんね。
ああ。
測る事はやめたのです。
もう時期ではないと先生が…。
ふ〜ん。
塾で教わっている測量好きの先生か?はい。
先生は「物を測るという稽古は積んだ。
これからは測れぬところを測りなさい」と。
測れないところってどこですか?あ…人の思いでございましょうか。
例えばお嫁入りの用意をしているとよねえ様の幸せな気持ちとか。
えっ!そう?決まったか。
は…はい。
とよねえ様のお顔はあのお日様よりも輝いております。
よくできました。
ウフフ。
おとよには幸せになってほしいもんだ。
どこぞの大問屋の主人とお内儀のような掛け違いなどないようにな。
はい。
うん。
えっ?おいおいおいじいさん。
どうした?腰やっちまったか?
(友兵衛)へえ。
ああ…。
た…立とうとしたら思いっきりギク〜ッと…。
そうかい。
おい…。
俺は治ったぜ。
え〜っ!ハハハ!お大事にな。
お達者で。
さよなら〜。
さよなら?
(腰が鳴る音)ああ〜っ!痛い痛い痛い…!これは新しいおかずですね。
(お恵)本当おいしそう。
(おさん)でしょう?八はい豆腐っていって水とお酒で煮てしょうゆを加えて煮立ててからお豆腐を入れてグラグラッときたらおたまですくって大根おろしをかけて頂くんです。
そうなのですね。
今度作ってみます。
ねえ長坊。
は〜い。
食べたいです。
(おしま)買ってきゃいいんだよ。
買ってきゃ。
(おさき)そうさ。
売るほどあんだから。
はい。
(お徳)お恵ちゃん。
おいしいものいっぱい佐吉さんに食べさせてりゃそのうち子宝に恵まれるよ。
嫌だお徳さんたら。
(笑い声)明後日の朝川崎に行く事になったんだ。
先方に頼み事をするんで土産の折詰をこしらえてほしいと思ってさ。
頼み事って何ですか?内々の話だ。
できれば立派な折詰をこしらえてほしいんだよ。
できるかい?へい。
旦那の頼みとあらばどこまでもってね。
ねえ?お徳さん。
うん。
そりゃいいけどさ何人分ぐらいの折詰ですか?2〜3人ってとこか。
あっ私がしょっていきますんで。
そうだよね。
そういう時の中間さんだもんね。
うへぇ。
じゃあ旦那と小平次さんの道中の握り飯も要りますね。
一緒にこさえてくれるとありがたい。
でしたら明後日の朝暁七つぐらいまでにはお届けに上がります。
さてどうしようかねえ。
あんまり重いと小平次さんが難儀だしね。
かといって手抜く訳にもいかないし。
えっ?板に着いてきたなと思ってさ。
仕出し屋のおかみが…。
うへぇ〜。
ハハハ…!はいお待ち。
ナスの煮物だよ。
うわ〜おいしそう。
これどうやって作るんですか?これはねナスをごま油でさっと炒めてからだし汁としょうゆとみりんで煮るんだよ。
仕上げは大根おろし…。
心の声お徳。
その仕出しはお前が大好きだった久兵衛に食わせるんだ。
湊屋にちゃんと話しとかなきゃ後でいろいろ面倒なんじゃないのかい?ええ。
あんたの立場もつらいもんだ。
心の声あいつを喜ばしてやりたいんだ。
お前が作ったもんだって言ってな。
食べてみるかい?ウフフ…。
旦那。
私の顔に何かついてんのかい?いや。
相変わらずべっぴんだなあと思ってさ。
怒るよ旦那!全く…。
ハハハ…。
お徳の店の帰り平四郎はお六が働いている店に立ち寄った。
神田多町1丁目のいさごという飯屋だ
そうでした。
叔父上が川崎に行ってる間に政五郎さんにお願いして芋洗坂の例のおはつという女の子に会いに行ってもよろしいでしょうか?首絞めに遭った子か?はい。
いいだろう。
俺からも頼んでおく。
(お六)どうですか?旦那。
いや〜こいつはうめえや。
いや特にこの山椒を利かした身欠き鰊は絶品だな。
ありがとうございます。
でも旦那にこんなきれいな坊ちゃんがいたなんてお見それしました。
甥っ子だ。
だから顔が似てねえ。
なっ?どうでしょうか。
ハハハ…。
ハハハ…。
うへぇ。
うへぇですか?ああこいつの口癖だ。
ああ…。
ところでお六。
何か葵の事で思い出した事はあったかい?それなんですけどね洗いざらいしゃべったと思ってたんですけど葵様が言った事で一つだけ付け足しておこうかって思って。
付け足す?そんな事を…。
何ですか?後でな。
はい。
お六さん!はい!こっち。
じゃ旦那ごゆっくり。
うん。
焼き魚1つに煮魚1つ。
はい。
え〜っとそれからきんぴらを2つ頂いて…。
葵もこんな暮らしがしたかったろうよ。
あんな隠居みてえな暮らしじゃなくよ。
えっ…?本人だって体を養生して元に戻ればまた忙しい日々に戻る事ができると…思ってたはずだ。
下手人の野郎も今頃知らん顔で飯を食ってるかもしれねえな。
面白くねえ。
平四郎が川崎へ行く当日である
あなたがお徳さん。
この間頂いた仕出しのおかず大層おいしゅうございました。
めっそうもない。
旦那にはいつもお世話になってばかりいて。
ご新造様にもこうしてお目にかかれて幸せでございます。
ご丁寧なご挨拶恐れ入ります。
旦那!えっ?右と左脚絆の高さが違うよ!…あっ申し訳ありません。
出過ぎた事を。
いえ。
私もどうもそのような気が致します。
ですよね?旦那もお徳さんとご新造さんにかかっちゃ形なしだ。
うへぇ。
フフフ…。
こうして平四郎が小平次と共に川崎に旅立ってしばらくした後
今日は何をなさろうってんですか?芋洗坂の杢太郎とおはつって子から話を聞き出すだけですかい?実は杢太郎さんにおはつちゃんをかくまってもらおうと思っているのです。
かくまう?はい。
おはつちゃんが首を絞められたのは多分脅されたのだと思います。
葵さんを手にかけた下手人に…。
葵殺しの下手人に脅された?…だとしたらおはつは下手人を見たという事ですか?見たというより出くわしたのでしょう。

(物音)ところで坊ちゃんいや…弓之助さんは葵殺しは何かの間違いでとっさに起こってしまった事だと井筒の旦那におっしゃったとそうお聞きしました。
そうです。
今回の事は私「通りもの」の仕業ではないかと考えております。
「通りもの」?
(せきこみ)
「通りもの」とはある時唐突に乱心し暴れたり人を殺したりする文字どおり通って過ぎるもの
ですが通りものが2度も同じ場所で同じ事を繰り返すって話は聞いた事がござんせん。
それに通りものがいきなり家に上がって座敷で殺すってのもげせねえ。
もっと言えば家に行った時は乱心していてそのあと正気に戻っておはつに出くわした事を思い出してそれで口封じなんて考えられませんや。
通りものはてめえがやらかした事をまるで覚えてねえもんです。
ですから葵さんを殺した通りものは私たちが普通に知っている通りものとは違うのではないかと…。
あまりうまく言えませんがただ…。
それは急に起こったのです。
そして下手人が我に返って逃げ出す時おはつちゃんに顔を見られた。
おはつちゃんが出くわしたその人はおはつちゃんが顔を見知ってる人なのです。
おはつちゃんにとってはその人を見た事はどういう意味かは分からない。
ですがその人物にとっては何かの拍子におはつちゃんの口から自分の事がしゃべられたらたまらない。
だから脅しをかけた。
…子盗り鬼。
そうです。
子盗り鬼の仕業に見せかけたのです。
つまり下手人は芋洗坂の家のそばにいるはずに違いないのです。
今もいるはずです。
下手人が次におはつちゃんを狙う時は本気です。
だから急がなければなりません。

(久兵衛)井筒様。
よう。
久兵衛。
井筒様。
本日は遠いところご足労頂き恐れ入ります。
さて弓之助の言うとおり通りものが下手人ならばそれは一体誰なのか。
はたまた湊屋の別邸に向かった平四郎の目算は一体何なのか。
事態は佳境を迎えつつある
(おふじ)あんたは私に意趣返しをしてるつもりなんだ。
そうなんだろう!?鬼!鬼〜!湊屋の身代を取ってほしいんだよ。
もう一つ聞きてえ事がある。
葵にも後ろめたさや償いたいという思いがあった。
だましたい相手がいたものだからさ。
おふじ相手にヒュ〜ドロドロ…。
何だ?おい。
弓之助?えっ?
(弓之助)見当違いの事をしておりました。
手口ではなく匂いなのです。
誰もいなくなっちまった。
下手人がさ…。
2015/11/24(火) 14:05〜14:50
NHK総合1・神戸
木曜時代劇 ぼんくら2(5)「新たなる容疑者」[解][字][再]

宮部みゆきの時代劇ミステリー「ぼんくら」シリーズ第2弾。個性豊かなレギュラー陣に加え、新たなキャラクターも続々登場。加えて本格ミステリーを楽しめる究極の時代劇。

詳細情報
番組内容
葵(小西真奈美)殺しの下手人とにらんだおふじ(遊井亮子)の現状を知る平四郎(岸谷五朗)。また一人、湊屋の跡取り・宗一郎(屋良朝幸)が総右衛門(鶴見辰吾)の実の子ではないかもしれないと聞き出し、宗一郎にも疑いの目を向ける。一方、おはつという幼子が、葵の家近くで首を締められるという事件があり、葵殺しの下手人が何かの理由で彼女を狙ったのではないかと考えた弓之助(加部亜門)は、その身を案じて芋洗坂へ急ぐ。
出演者
【出演】岸谷五朗,奥貫薫,風間俊介,秋野太作,志賀廣太郎,小西真奈美,遊井亮子,西尾まり,村川絵梨,なだぎ武,鶴見辰吾,大杉漣,松坂慶子,【語り】寺田農
原作・脚本
【原作】宮部みゆき,【脚本】尾西兼一
音楽
【音楽】沢田完

ジャンル :
ドラマ – 時代劇
ドラマ – 国内ドラマ

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
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日本語(解説)
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