北星学園大学で記者会見する非常勤講師、植村隆元朝日新聞記者=11月26日、札幌市(杉浦美香撮影)

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 来年3月から韓国の私立「韓国カトリック大学校」に招聘(しょうへい)教授として就任することを26日に発表した北星学園大学(札幌市)の非常勤講師で元朝日新聞記者の植村隆氏(57)の記者会見の詳報は次の通り。

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 植村隆氏「今回の問題を、大学とどういう風に総括していきたいのかということですが、先ほども、学長がおっしゃって、ここに本学の経験を検証総括し、広く社会に問いたいと思っており、再発防止とおっしゃっていましたが、私は、この考えに非常に強く打たれ、共感しています。今回、北星学園が昨年、激しい攻撃、脅迫状、この卑劣な攻撃に打ち勝って、そしてなおかつ、攻撃された資料を全部公開するということをおっしゃっている。これは大変なことだと思う。つまり、北星学園に攻撃した人々の卑劣な文章が秘匿されるのではなく、社会の共有の検討材料として公開される。これはさまざまな注目を集めると思う。北星学園に直面している問題は、北星学園だけではなく、全国いろんな大学で、あるいは言論の場で起きている。それを勇気をもって公開されて、それを基礎に考えていく姿勢を、非常に高く評価したい。これがすごいとおもう」

 「昨年、私の雇用を守ってくださったのも大変だと思うが、今回、それを全て公開するとおっしゃったのもすごい。日本の大学史上に残ることだと思う。もし、出版されれば、各大学必携ですよ。どこの大学でも起きると思います。私も資料を分析しながら、どうやって乗り越えていくのかを考えていきたい。学内の講演は、基本的に前向きときいている。時期等については田村学長と相談して、いずれにしても(カトリック大学は)協定校ですのでいつでも来られる。裁判でこちらにも来るので、時期を調整しながらいきたい。日本国内でも北海道大学や上智大学、さまざまな大学で、お話をさせていただく機会があります。もちろん、北星学園大学でもあると信じております」

 「カトリック大学との関係をきちんと説明したい。これは、北星学園大学が斡旋(あっせん)して決まったわけではない。私の方から学長に情報を伝えた。私は4年間この大学で教えてきた。日本語学科の学生が留学して結構楽しく4年間過ごして慕ってくださって、連絡を取り合ってきました。今回、なぜ、カトリック大学に決まったかですが、先月の下旬ぐらい、私の所にカトリック大学が呼びたいという話があるがどうだ、ということがありました。大学のチャンネルとは違う。もともとカトリック大学の学生を中心に始めた講義ですから、話を聞こうと、ソウルに今月中旬ぐらいに行ってきた。カトリック大学の方々と話をした。じゃ、1年間、教えさせていただこうと私の方で決断をして、それを帰った翌々日、(11月)17日に帰ってきて19日に学長に報告するということで伝えた」

 「もちろん、(韓国カトリック大学校が北星学園大学の)協定校ではあるが、協定校ルートとか、そういうことで始まったわけではない。ただ、思うに、4年間、カトリック大学の学生を教えて、その子達が韓国に帰って私の評判を伝えるわけです。マイナス評価があれば、こういう話がこないので、私としては、学生たちと過ごしてきた、教育の実績が何らかの形で評価されたのかなと思う。日本でも最初は、韓国語で授業する予定だった。実は私はソウル特派員をしたり、語学留学生をして、韓国語を少し話せるが、ずいぶんさびついているので、それをブラッシュアップできる機会でもあると思っている」

 「講義は、これからシラバスをつくるが、日韓の長い歴史、友好交流、ま、一時期、不幸な時期もあるわけですが大きな歴史をもう一回振り返りながら、単に教科書を読んで勉強するわけではなくて、今までもこの授業でやってきましたが、ビデオや当時の資料や記録、ドキュメンタリーを見たりとかね、共に学んでいって、韓国を知り、そして友好を深めるような授業をやりたい。日韓交流の歴史を学ぶみたいな。学んで未来を考える、ということを考えている。今計画をして、カトリック大学とのすりあわせが必要だが、基本的にそういうことを韓国語で教えようと思っている」

 「(雇用継続を願う韓国からの)署名の件ですが、私の教え子たちが韓国でも心配してくださった。私の問題が韓国でも昨年の早い時期から報道されていた。今年の8月に、韓国に国際シンポジウムで訪問したときにも記者会見を開いて、私の話を韓国の記者が聞いていたので記事がたくさん出ていて、学生たちも常に心配してくれていた。教え子たちが植村さんの雇用を守ろう、守ってほしいという署名活動をした。その署名が917人あって、それが北星学園に届いた。それは本当にありがたいことで、署名活動があったからということではないが教え子たちに応援していただく、というのは、私として教員としての冥利(みょうり)につきる…。本当にありがたい。その学生たちと学べるという機会を与えていただいたことを私は本当に感謝しています」

 《植村氏は声を詰まらせ、涙をこらえた》

 植村氏「(カトリック大学の)1年の雇用の後はどうするのか私もわからない。来年1年間一生懸命やって、あるかないかもわかりませんが、今、考えているのは、いずれにしても来年の講義をうまくやりたいと思っているだけです」

 =(完)