アフガン・クンドゥズ病院爆撃は人的ミス=米軍調査
- 2015年11月26日
米軍機が10月初めにアフガニスタン北部クンドゥズで医療慈善団体「国境なき医師団」(MSF)運営の病院を爆撃した問題について、米軍は25日、「人的ミス」が原因という調査結果を発表した。
アフガニスタン駐留米軍のジョン・キャンベル司令官が調査結果を発表し、クンドゥズの病院爆撃は「回避可能な人的ミスが直接の原因で、そこに手続き上のミスや機器の故障が加わった」と説明。さらに、AC-130攻撃機の乗務員は、過激派勢力タリバンが近くで占拠した政府庁舎と病院を間違えたのだと話した。
攻撃機の乗員は、アフガン軍が提供した外見の説明をもとに標的に建物を特定したと司令官は説明し、攻撃対象外リストに含まれていたMSF提供の位置情報には言及しなかった。
「この誤認が任務継続中ずっと続いたために、悲劇につながった。目視情報と異なるデータもあったのだが」と司令官は述べ、「悲惨はミスだった。米軍は決して病院など保護対象の施設を意図的に攻撃したりしない」と強調した。
司令官によると、誤爆につながったほかの要因は以下の通り――。
- 兵士の「疲労と作戦のハイペースな速度」
- 攻撃機内の電子通信系統の故障
- クンドゥズにおける「作戦計画・承認プロセス」の状態
- 標的を攻撃対象外リストに照会して確認する、一元化された仕組みの欠如
米軍によると攻撃機は25分の間にMSF病院に対して211発の砲弾を撃ち込んだ。
病院攻撃に関わった兵士たちは職務停止中で処分決定を控えているという。
アフガニスタン北部の主要都市クンドゥズをタリバンから奪還しようとする作戦の中で起きたこの病院爆撃により、少なくとも民間人30人が死亡している。
MSFは報告結果を受けて、米軍による「重大な過失」を避難。「戦争におけるルール違反」で、「独立の第三者による客観的調査」を求めた。
米軍は当初、この周辺から攻撃されたから爆撃したと理由を説明していたが、MSFはこれを強く否定。米軍も後に誤爆と認め、原因調査に着手した。
<英語ビデオ> アフガン駐留米軍のジョン・キャンベル司令官は爆撃は「人的ミスが直接の理由」と説明
<英語ビデオ> MSF国際部門責任者のジョアン・リウ氏は「本当に何が起きたのか知る必要がある」と述べ、ミスが再発しないという保証が必要と
<分析> バーバラ・プレット・アッシャー、BBCニュース、ワシントン
米軍の報告には、実にありとあらゆるミスが並べられている。あらゆる次元でミスが重なったというのだ。
何より驚くのは、軍用機の乗務員が標的を間違って違う建物を爆撃していると、計器から気づかなかったと認めている点だ。軍用機が司令本部に送信した位置情報は明らかに、MSFの病院のものだったのに。
ただちに対策を指示したとキャンベル将軍は話したが、起きたミスのリストはあまりに長くて細かい。今回はMSFのような団体が問題を指摘したからミスが明らかになったが、実はこれまでもどれくらい誤爆が起きていたのかという疑問が浮上してくるし、今後も再発するのではないかという懸念も浮上する。
キャンベル将軍は、人員の疲労とクンドゥズ作戦がハイペースに展開したことが悲劇の一因となったと将軍は認めている。それだけに、同様のミスはほかにないのかという疑問が高まるのだ。
タリバンの司令本部を爆撃していると乗員たちは誤認していたという。これはつまり、殺害と破壊が目的の任務だったということだ。
しかし米軍報告は予想通り、戦争犯罪という指摘については言及していない。軍報道官は戦争法について問われても回答せず、米軍の交戦規定に違反したとだけ認めた。
MSFのクリストファー・ストークス事務局長は25日、「広い野原にもっとも近い大きい建物がMSFの病院で、標的の外見に『だいたい一致した』というそれだけの理由で、クンドゥズで30人が殺され、何十万人もの人が救命治療を受けられずにいるということらしい」とコメントした。
MSFが今月初めに公表した報告書では、爆撃の最中に病院スタッフは米軍主導の多国籍軍に病院が攻撃されていると何度か連絡したという。
<英語ビデオ> BBCが独占入手したクンドゥズのMSF病院内の被害状況を映した映像
アフガニスタンのガーニ大統領は25日、病院誤爆は「戦争の代償がいかなるものかを示す、つらい事例だ」と声明を発表。「このような間違いは回避できるし、回避されなくてはならない」と強調した。
病院爆撃について二転三転した米軍説明
10月3日、ブライアン・トライバス大佐、アフガン駐留米軍報道官
米軍は10月3日午前2時15分(現地時間)、米軍にとって脅威となる者たちを空爆した。これに伴い付近の医療施設で民間人に被害が出た可能性がある。本件は事実関係を調査中。
10月4日、国防総省報道担当
米軍は10月3日午前2時15分(現地時間)、クンドゥズのアフガン治安部隊に助言し支援する米軍関係者に直接攻撃を仕掛けてきた反政府勢力に対し、空爆を実施した。爆撃は「国境なき医師団」の医療施設の付近で行われた。
10月5日、ジョン・キャンベル将軍、アフガン駐留米軍司令官
10月3日、アフガン軍が敵の所在地から攻撃を受けているため米空軍に支援要請したことが分かった。要請を受けて米軍がタリバン脅威排除のため空爆を実施したところ、民間人数人を誤射した。これは、米軍が脅威を受けたため空爆を実施したという当初の報告内容と異なる。
10月6日、上院軍事委に対するキャンベル司令官の証言
3日午前に米軍はアフガン軍の要請を受けて援護空爆を実施した。空からの砲撃提供は米国の指令系統の中で米国が判断したことだとはっきりさせておきたい。病院が誤って砲撃された。保護された医療施設を意図的に標的にすることはあり得ない。(略)徹底して客観的、かつ透明な調査を実施すると約束する。
11月25日、キャンベル司令官発言
クンドゥズのMSF救急医療施設への米軍の攻撃は(略)人的ミスを直接的な原因とするもので、ここにシステムおよび手続き上のミスが重なった。この事態に直接かかわった米軍部隊は、標的となった建物がMSFの救急医療施設とは承知していなかった。米軍人員が医療施設を誤って標的にしたのは、武装勢力がいると報告のあった数百メートル離れた場所の別の施設と誤認したためだ。