パリ同時多発テロを受け、政府はテロ関連情報を集約するため、12月上旬にも外務省に「国際テロ情報収集ユニット」を新設する。来年5月の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)に向け、国内でのテロ対策を強化する構えだ。 情報収集ユニットは過激派組織「イスラム国」による邦人人質事件を踏まえて設置が決まった。当初は来年4月の発足予定だったが、パリのテロで前倒しとなった。 警察庁や外務、防衛省などの専門家ら数十人規模で構成し、在外公館からのテロ関連情報の集約や過激派組織の活動状況の分析にあたる。外国の治安・情報機関との情報交換も強化するという。省庁の縦割りをなくし、情報を共有してテロ防止に役立てることが大事だ。 政府は伊勢志摩サミットの警備関連費に約340億円を見込む。メーン会場となるホテルの海上からの警備や仮設ヘリポートの整備などで、2008年の北海道洞爺湖サミットを上回る。広島市での外相会合や仙台市での財務相会合など、4~9月に10の関係閣僚会合が開かれる予定で、国内全体で警戒が必要となる。 さらに、19年にはラグビーワールドカップ、20年には東京五輪・パラリンピックがあり、多くの外国人が観戦に訪れると予想されている。テロリストの渡航を阻むため、成田、関西などの主要空港だけでなく地方空港も含めて出入国管理体制を拡充する水際対策が欠かせない。 パリではコンサート会場やレストランなど警備が手薄な場所が狙われた。日本国内でもこうした施設が標的となることを想定して手を打たねばならない。 だが、自民党内からテロ対策の一環として、殺人などの重大犯罪の謀議に加わっただけで処罰対象となる共謀罪の新設を求める声が上がっているのは問題だ。運用次第では日常会話やメールが捜査対象になりかねず、国民監視につながる恐れがあるからだ。 政府はこれまでに共謀罪新設のための組織犯罪処罰法改正案を3回提出し、いずれも廃案となっている。来年1月4日召集の通常国会への改正案提出は見送る方針だが、政府は「法整備は必要」との立場だ。特定秘密保護法のように数の力で強引に成立を図ることは許されない。 安倍晋三首相は情報収集ユニット設置など政府のテロ対策を国会でしっかりと説明し、国民の理解を得て進めるべきだ。
[京都新聞 2015年11月25日掲載] |