「きょうの健康」です。
今日は月に一度最新の医療情報をお伝えします「メディカルジャーナル」です。
今年の6月小児用の補助人工心臓が日本で初めて承認されまして8月には保険適用になりました。
今後心臓移植を待つお子さんの助けとなる事が期待されています。
今日はその補助人工心臓について詳しくお伝えします。
お話は…心臓外科医で主に重症の心不全の治療がご専門です。
どうぞよろしくお願い致します。
よろしくお願いします。
その補助人工心臓初めて知ったんですけどもどういうものなんでしょうか?補助人工心臓というのは重症の心不全を患ってる患者さん命の危険性がある場合ですね。
命の危険性がある患者さんで多くの場合は心臓移植を必要とするような方を対象としています。
装置の役割としては従って…今日お持ち頂いたんですね。
はい。
こちらが今回認可された小児用の補助人工心臓です。
これは血液ポンプといって2つに接続部分がございますがこちらから心臓を通して血液を引いてポンプを介してこちらの方から体に血液を送るといったような働きをしています。
かなり小さいものですがちょっと触らせて頂いてよろしいでしょうか。
軽いですし透明ですね。
よく血液の流れ見えますね。
これは大体1歳くらいまでの主に新生児乳児を対象にしたポンプでありまして1回の拍動で約10ミリリッターの血液を送る事ができます。
またお子さんの体のサイズに応じて全部で6種類の大きさのポンプが現在あります。
なるほど。
成人用の補助人工心臓というのは1990年代ごろから使われておりましたけれども体の小さなお子さんについてはなかなか日本では認可されてきませんでした。
ポンプが小さいとこのポンプの中に血栓ができてしまったりしてまたポンプの故障不具合などもあって耐久性に問題があったんですがこれらの問題をクリアしたのがこの世界で唯一の小児用の装置になります。
血液が固まったりする…ある訳なんですね。
日本ではこれまで臨床試験を行って9人のお子さんに使ってまいりましたけれどもこの9人の方全員が非常に順調な経過をたどっています。
これを…心臓にどのようにして取り付けるんでしょうか?どのように取り付けるかを説明したいと思いますがその前に心臓の働きについてご説明したいと思います。
肺から酸素を含んだ血液が心臓に入ってきます。
それは血液は左心房を通って左心室を通って最後に大動脈から体に血液を流していく訳です。
心臓の左側はこういう働きをしています。
ところが心臓左心室が悪くなって体に血液が十分に送る事が難しくなってきます。
そこへ手術をしてこの補助人工心臓を取り付ける訳です。
左心室と大動脈に管を取り付けてこの管をそれぞれ体の外に出します。
それぞれの管の部分に先ほどお示しした補助人工心臓の接続部をつなぐという事になります。
こうする事によって心臓から血液を引いて大動脈を介して体に血液を送るという事ができるようになります。
この小児用の補助人工心臓はポンプ自体は体の外にあります。
ちょっと心配かもしれませんがこれは専門の医師がきちっと管理をしますので特に心配をされる必要はありません。
実際に動いてる映像があるんですね。
これがそのポンプが動いてる映像です。
このように膜は動いてますがこのポンプは空気によって動いています。
空気を送ってまた空気を引き抜いてそれによって血液を送り出すといった安定した操作ができる事になっています。
その空気はどこから…。
はい。
これがその空気を送り出す動力源としての駆動装置というものです。
大きさは小さな冷蔵庫ぐらい。
重さ90キロぐらいありますけれどもこういったものを使います。
でもどうなんでしょうか。
その空気で動かしてるという事なんですけども血液自体はどんなふうに循環をしてるんですか?これが先ほど示したポンプの断面図になります。
このポンプのケースの中に3枚の膜で仕切られた空気を入れるスペースと血液を入れるスペースがあります。
このように駆動装置から空気を送りますと膜が押し上げられてたまった血液が大動脈を介して体に流れていきます。
弁が開いて出ていく訳ですね。
そうです。
そのあと弁が閉まります。
逆に今度空気を駆動装置側に引きますと膜が引き下げられて弁が開いて心臓側から血液がこのようにポンプの中に入ってくる。
こういう働きをしています。
この動作を1分間に数十回繰り返します。
そうする事によって十分な血液を体に送る事ができる訳です。
これですからこの弁が空気がこうなった時には閉まって逆流しないようになってる訳なんですね。
はい。
こういう非常に精密なものですがどうなんでしょうか。
この補助人工心臓をですね必要としている方というのはどれぐらいいらっしゃるんでしょうか?現在日本で心臓移植を希望して登録している方は400人以上おられます。
その中でお子さんで心臓移植を希望しているのが30〜40人前後です。
現在日本では年間に大人の心臓移植が約35人。
子どもの場合は3人から5人程度しか行われておりません。
そうすると希望者の1割ぐらいという事。
随分少ないですね。
やはり欧米ではもっと多くの心臓移植が行われてる訳なんですが日本では特に子どもの場合には臓器を提供するドナーの方が少ないために移植を待つ期間が長くなってしまうんですね。
しかも心臓移植を待つような方は非常に心臓の状態が悪いので自分の心臓だけで長い期間を待つというのは極めて大変になります。
特にお子さんの場合には一度心臓が悪くなってくると大人に比べて急激に悪くなる事が多い。
ですので今回のように小児用の補助人工心臓が日本で使えるようになったというのは多くのお子さんを救うという意味で非常に意義がある事になったんです。
どれくらいの期間これはつけておく事ができるんですか?特に上限というのは決まってないんですが私たちの実績だと2年以上つけてるお子さんがいらっしゃいます。
なるほど。
どうなんでしょうその補助人工心臓をつけると体調ですねそれはどうなんですか?よくなったりするんでしょうか?よくなるんですね。
まず重い心不全で心臓の状態が悪くなりますと動けなくなってベッド上の生活になります。
しかも食事がとれなくなって栄養が悪くなります。
そうすると体力衰えますよね。
かつそれだけではなくて心臓以外の臓器も悪くなるという事がある訳です。
ところが補助人工心臓をつけますと循環がよくなると。
動ける訳ですからいわば普通の生活に近い状態になりますし食事もとって栄養も十分につくという事でありますから普通のお子さんと同じように歩いてしゃべって勉強ができるという事であります。
ほとんど普通のお子さんと同じような生活ができる訳です。
非常に…元気に移植を待つ事ができるようになると。
そういう事になってる訳ですね。
そうですねそのとおりです。
体調はよくなる…その心臓自体はどうなんでしょうか?この補助人工心臓を使う事によってやはり心臓自身への負担も減ってきます。
この補助人工心臓を使うと同時に心不全のお薬も同時に使うのでこの薬によって心臓の状態を安定させてよくする効果もあるんですね。
はい。
そうしますとこういった治療を受けるお子さんの中に自分の心臓の機能がよくなってこの装置を取り外して退院できちゃうと。
心臓移植は必要ないといったような事もあります。
なるほど。
一方でどうなんでしょうか。
この補助人工心臓をつけて何か注意点はあるんでしょうか?今ここにお示ししたとおりまず人工心臓は体にとって異物ですから血栓ができやすいので血液が固まらないように薬で調整はします。
例えば薬の種類ですとどういうものになってきますか?ワルファリンあるいはヘパリンアスピリンと呼ばれるものですが薬が効き過ぎると出血しやすくなる。
一方で出血しやすくなると。
そうすると非常に危険ですから効き過ぎたような場合は中和するお薬を使ってさらさら具合を調整するという事も必要になります。
また先ほどお示ししたとおりこの補助人工心臓は体から2本の管が出てますからその管をきちっと消毒をしないと感染症を起こしやすいという問題がある訳です。
感染症に対しては消毒すると書いてありますけど対策としては…。
消毒をして清潔に保つという事が必要になりますしまたお子さんの場合にはよく動きますからやはり動き過ぎるとこのポンプの部分が揺れてしまってまた感染を起こしやすくなったりポンプが引っ掛かって外れないようにポシェットやポーチなどを使って固定するという事も必要になる場合があります。
お子さんならではの問題もあるという事ですね。
術後はどうなんでしょうか。
気を付けたりする事ってあるんですか?先ほど感染症の問題もありましたけれども。
術後については先ほどお話しした3つの合併症を注意してありますけれども今回消毒もしっかりして合併症も少なくて臨床試験でも同じように合併症が少なかったので今回日本でもこの装置が早く承認されたという事にもつながった訳です。
承認されたというのはそういう理由があった訳ですね。
どうなんでしょうか親御さんたちもね非常にやっぱりお知りになりたいと思うんですけどもどこでこの治療を受けられるかという事なんですが。
現在この補助人工心臓をお子さんに使える病院は…小児用の補助人工心臓というのは今年の6月に承認されたばかりですのでまだ体制整備が整っていない病院が多いために少し時間がかかっています。
ただ大人の補助人工心臓の治療を行ってる病院は既に多数ありますのでこれから小児用にも対応できるような医療機関をいわゆる体制を整えて選定をしてるところになります。
現在3か所ですが今後近日中にこの3か所以外の病院でも治療ができるようになるという事が考えられます。
8月に保険適用になったという事ですが費用気になりますけどどれぐらいかかるんですか?医療費はほとんど健康保険の適用になりますので高額な自己負担がかかる事はほとんどありません。
ただ細かい事については医療機関にご相談頂くのがよいです。
日本のその心不全の重症のお子さんの治療って本当これで大きく大きく前進するんですね。
はいそのとおりです。
今後は重い心不全のお子さんが心臓移植までの時間をこの装置によって有意義に過ごす事ができます。
先ほど申し上げたとおり中には補助人工心臓をつけてる間に心臓の機能が回復して装置を取り外して退院する事ができるようなお子さんも出てくる訳です。
つまり補助人工心臓によってお子さんの大事な成長期を元気に過ごすという事ですから我々も希望を持って今後治療に当たっていきたいと思っております。
今日は小野稔さんと共にお伝えしました。
どうもありがとうございました。
ありがとうございました。
2015/11/23(月) 20:30〜20:45
NHKEテレ1大阪
きょうの健康 メディカルジャーナル「補助人工心臓 最前線」[解][字]
今年6月、日本で初めて小児用の補助人工心臓が承認され8月には保険適用になり、重い心不全の子どもが心臓移植を待つ間、補助人工心臓をつけて過ごせるようになった。
詳細情報
番組内容
今年6月、日本で初めて小児用の補助人工心臓が承認され、8月には保険適用になった。重い心不全の子どもが心臓移植を待つまでの間、病院の中で、この補助人工心臓をつけて、普通の子どもと同じように元気に過ごすことが可能になったのだ。すでにこの補助人工心臓をつけて、心臓移植を受けた子どももいる。補助人工心臓とはいったいどういうものなのか、心臓外科の専門家に詳しく聞く。
出演者
【講師】東京大学大学院教授…小野稔,【キャスター】桜井洋子
ジャンル :
情報/ワイドショー – 健康・医療
福祉 – 高齢者
趣味/教育 – 生涯教育・資格
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
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