アガサ・クリスティー トミーとタペンス(4)「NかMか(1)」 2015.11.22


(時計の秒針の音)
(ギルバート・ワージング)ハァ…ハッ…アッ。
(時計の時報)ハァ…。
アァ…。
・アッアアッ。
はい。
ギルバートです。

(男)やつらが来る。
行け。
(電話が切れる音)
(不通音)ハハハッ…ハハハッ…。
(受話器を置く音)ハハハッ…。
フフフフッ。
ハーッ…。
ハーッ…フーン。
(扉の開閉音)
(ギルバート)アッ…ハッ。
(錠をおろす音)ハァ…。
ウッ…ウッ。

(警備員)お疲れさまでした。
(車の走る音)
(車の走る音)
(車のエンジン音)ハッ…。
ウッ…。

(タペンス・ベレスフォード)ワクワクしちゃう!ロンドンの町で夜遊びなんて久しぶりよ。
(トミー・ベレスフォード)おい。
遊びに行くんじゃないぞタペンス。
カーターおじさんに事業計画を話すんだ。
真剣だってとこを見せないと。
「ベレスフォード・ヘア」のでしょ。
名刺なんかいつ刷ったの?先週だ。
何枚?1,000枚。
1,000枚!なあ少しは応援してくれ。
タペンス。
絶対もうかるから。
ええ応援してるわよ。
もううんざりって言い方だな。
図星?違う。
そんな事ない。
確かにあのカツラの仕入れ額はうちにとっては法外だったけど。
ホントよ。
ミツバチの時にも痛い目に遭ったしね。
蜂が群れごといなくなるなんて信じられん。
自分が飼ってた蜂に逃げられるなんて情けない。
僕だけじゃない。
世界中の養蜂家が体験してる怪現象なんだ。
分かったわ。
オッケーやりましょ。
投資したくなるような事業計画を突きつけてカーターをギャフンと言わせる。
よし!その意気だ。
それとせっかくの機会だし。
(車掌)どうも。
オペラも楽しんじゃいましょうよ。
(バス運転手)つかまってください。
おじさん。
(アンソニー・カーター)ああ。
らしくない店ですね。
そうかい?いやここの海鮮料理はなかなかいけるんだ。
息子のジョージは元気にしてるか?ええ!ボーイスカウトで高原に行ってヤギとケンカしたんですって。
ほら。
ウフフッ。
タペンス。
ブランデーを2つ頼めるか?君も好きなのを飲みなさい。
ええそれじゃ。
あのおじさん養蜂はあんまりうまくいきませんでしたけど今度の計画は絶対に…。
いいから黙って聞くんだ。
わが国は今深刻な危機にある。
ギルバート・ワージングというイギリス人の科学者がノーフォークのクロマー基地を出たあと消息を絶った。
内務省の極秘プロジェクトに関わってたんだ。
今夜ハリソンという諜報員がオペラ劇場で同じ桟敷席に座る。
彼から伝言を聞いて一言一句正確に知らせろ。
どうして僕が?情報漏洩が発覚した。
だからお前をここに呼び出した。
内部の人間には頼めん。
私の行く所はすぐソ連にバレる。
お前なら目を引かない。
ノーマークだ。
これは最高幹部からの指令だぞ。
絶対誰にも秘密を漏らしちゃいかん。
タペンスにもだ。
でも悟られます。
じゃうまくごまかせ。
(店内に流れる音楽)あらカーターは?ハァ…ん…。
アッアァ…。
トミー。

(テーマ音楽)ありがとう。
(アナウンス)「ご来場の皆さまお席にお着き下さい。
開演時間まで…」。
まだ飲む気?もちろん。
せっかくだから。
つきあう?いい。
オペラを楽しめなくなる。
ジョージのクリスマスのお芝居の時みたいに。
フーン…。
みんな華やかですてきね。
行くよ。
座席を探そう。
(男)予約はしてある。
すてき!すらりとして。
(受付係)じゃこちらはお預かり…。
どこかにあるはずだ。
この封筒は?すみません。
手違いがあったようで。

(案内係)お連れ様はバーにおいでです。
(ボブ・ハリソン)いやこりゃいい!フン。
王族になった気分だ!フン。
(アナウンス)「ご来場のお客様。
開演のお時間まで…」。
同じ席らしいな。
タペンス・ベレスフォードです。
あっトミーです。
よろしく頼むよ。
ボブ・ハリソンだ。
家内はあれだ。
ああそれじゃタペンス話しておいで。
えっ?でも…。
ハリソンさん?ああこういうバカげた見せ物は苦手でな。
今日は息子が券を取って招待してくれたんだがわしはドッグレースのほうがいい。
フン。
オペラなんてくだらない。
フフッ。
(ハリソン夫人)夫は海軍なの。
お宅のご主人は?ウッ…ウン。
カツラの販売を。
すてきですわね。
私はこういう派手なのはあまり好きじゃないわね。
アァ…。
(ハリソン)それで甲板に出て確認したんだがホオジロザメだ。
間違いなくな。
近づいてみたら3匹が船の周りをグルグル回ってる。
すると若い水兵のボリスってロシア人が来て…。
ロシア人のボリス?こりゃすごい映画が撮れるぞ。
書き留めとけ。
ええそうですね。
待って。
どうぞ。
わしの名前も出してくれ。
(笑い声)
(アナウンス)「ご来場の皆さまお席にお着き…」。
おっと時間だ。
さあ行くぞ。
(アナウンス)「お席にお着きになってお待ちください」。
じゃあまた会おう。
(アナウンス)「あと1分で開演となります」。

(受付係)おお!すみません。
(男)何をしてる?
(受付係)お客様!傘をお忘れです!
(拍手)
(オペラの演奏)エーッアァ…。
アァ…すいません。
んん。
ボリスが言ったのは「サメを制御しろ」でしたっけ?何でしたっけ?アァ…。
ああ!ほらこぼしちまったじゃないか!ボブ!せっかくの酒がもったいない!おお。
お〜。
大丈夫ですか?
(ハリソン夫人)ボブ。
様子が変だ。
しっかり。
ああアーッ。
どうしたんです?ハリソンさん!おお!大丈夫ですか?しっかり。
(ハリソン夫人)ボブ!ああきつそうだ。
緩めてあげて。
何とか言ってボブ。
ああ。
医者だ。
タペンス!分かった。
(ハリソン夫人)お願い。
息をしてボブ。
「心臓発作だった」って書いてある!「主人がピンピンしていたのに」。
ピンピンしてたんですって!・
(呼び出し音)・
(女性職員)3階ですが。
(小声で)ええ。
カーター少佐に回してもらえます?・
(女性職員)もしもし?
(小声で)ゆうべもかけたんですよ。

(女性職員)3階ですが。
(小声で)ウン。
だからカーター少佐をお願いします。

(女性職員)お電話が遠いのでかけ直してください。
(電話が切れる音)
(不通音)
(ダイヤルを回す音)ウン!ひどいわね。
トミー!このシャツ駄目よ!・
(呼び出し音)・
(女性職員)3階ですが。
(小声で)切らないで。
・トミー。
(小声で)カーター少佐をお願いします。
ベレスフォードです。

(女性職員)カーターからの伝言です。
「クリケットは雨で中止。
待て」。
(小声で)クリケットは中止…。
ウッ…ウン!
(ドアを開ける音)
(受話器を置く音)正直に話しなさい!トミー今すぐよ!「水兵のボリスはサメと格闘した」。
「ボリス」はソ連のことね。
それから「水兵」はきっと海軍か潜水艦。
解読がうまい。
今更褒めても遅い。
ウン…。
じゃあ「サメ」は何かしら?アメリカ?攻撃してくるの?あいにく全部言い終わる前に心臓発作で倒れた。
ウーン…心臓発作じゃなかったとしたら?ハリソンがこぼしたお酒が染みになって残ってるわ。
どういうこと?毒入りかも。
じゃまさか…。
殺された?すぐ確かめなきゃ。
いやちょっと待て。
おじさんは連絡するまで待機してろって伝えてきた。
ハッキリね。
もうじれったいわね!少しぐらい調べてもいいでしょ。
連絡が来るまでに全部準備しておきたいのよ。
手がかりはシャツの染みだけか。
気になることが…。
男が見てたの。
桟敷席のほうを。
どんな男か覚えてるのかい?背が高くて黒髪でとってもハンサム。
(ため息)今でも目に浮かぶわ。
間違ってる。
(アルバート・ペンバートン)ベンジャミン君はこの学校で楽しくやっていけますよ。
よろしく。
(ベンジャミンの母)さよならでは。
(ベンジャミンの父)どうも。
ハハハッ。
ジョージをこの学校へ?まずいか?この染みを分析してほしいの。
唯一の手がかりよ。
公開日で忙しいんだ。
でも簡単でしょ。
例の何とかキットを使えば。
前回の件で休んだから校長ににらまれてるんだよ。
やっぱり帰ろう。
この件は極秘なんだし。
ほう!極秘ね。
アッウッ…。
劇場でスパイが死んだの。
科学者も消えた。
まさにミステリーよ。
(せきばらい)
(バーバラ)食堂から何か持ってきましょうか?ああ頼むバーバラ。
ケンプ先生。
じゃあマフィンを。
ウン。
よろしく。
ケンプ先生。
ウフッ。
化学部の人?演劇学部だよ。
ウフッフッ。
カセイソーダ取ってくれる?アァ…。
彼女を早く誘うのよ。
頑張ってアルバート。
塩酸取って。
ああ僕なら焦らないね。
じっくり攻めれば落ちる。
僕を見ろ。
アッ…。
私みたいに我慢強い人ばかりじゃないわ。
ウン…。
青酸カリだ。
毒ね。
殺されたのよ。
やっぱり!どういう事件か説明してくれる?僕はまだカーターのチームの一員だぞ。
できない。
悪いけど。
そうか。
じゃあ僕はただ染みの分析に使われただけね。
パートタイム仕事か。
それだけじゃない。
聞きたい事がある。
ギルバート・ワージングって科学者知ってるか?ギルバートか?ケンブリッジの学友だ。
専門は原子力だよ。
原子力?まさか原爆?マンハッタン計画に参加してた。
ハーッハァ…。
ハァ…。
何をする気だい?僕たちが来る場所じゃないだろ。
ハリソンの奥さんと話すの。
(せきばらい)お悔やみ申し上げます。
アァ…。
ウン…。
ありがとう。
ご主人から私たちにメッセージがありますね?何ですって?お仕事のことで。
(ハリソンの息子)この人たちは?オペラの劇場で隣に座った人たちよ。
ご主人はある水兵の話をなさったんです。
ボリスって名前の。
海で死んだ人だ。
それがどうしたんです?
(ハリソン夫人)一体何の話?ボブは本当に海軍だったんだ。
それじゃなぜあの席にいたの?・
(すすり泣き)・
(ハリソンの息子)心配しなくていい。
ちょっと待って。
あの…奥様は桟敷席がお好きじゃないのにどうしてチケットを買われたんですか?息子が買ってくれたのよ。
桟敷は買ってない。
最上階がやっとだ。
ハハハッ。
申し訳ない。
失礼。
席を間違えたんだ。
ハァ…ハリソンがもう1人いた。
きっとあのハンサムな人が本物よ。
別人が殺された。
ハッ…。
ベレスフォード警部です。
こちらの関係者が賄賂を受け取って座席を桟敷席に格上げした疑いがあります。
賄賂?いえあれは手違いだったんです。
チケットを間違えて…。
ああ!それじゃ予約していた桟敷席に座れなかったハリソンさんの身元を確認させてください。
アァ…身元は分かりませんが傘を忘れていかれたのでお預かりしてます。
こちらです。
ん〜ん。
その人の特徴を覚えてますか?背が高くて黒髪でまるで俳優の…。
ケイリー・グラント。
そう!目は茶色。
頬骨が高く…。
鋭くて優しい目。
そう。
ああ。
ええ。
ご協力どうも。
参考になりましたよ。
行くぞタペンス。
ウン。
(ニュース映画)「スモッグのせいでノドが詰まり涙が出ます。
大胆不敵なカメラマンが町を覆ったスモッグの中車を走らせました。
ロンドンの交通は完全にマヒしており車は…」。

(店主)いい傘だ。
ええだから持ち主に返したくて。
ああ番号がある。
お任せを。
電話します。
ああできたら僕がかけたいな。
直接返したいんだ。
お客様の個人情報は明かせませんので。
でも届けた人に会いたがるでしょ?それはご本人次第でしょう。
離してください!お〜!
(傘が落ちる音)これは申し訳ない。
じゃ伝えてください。
「カーターの友だちが返しに来た」とね。
名前をお忘れなく。
カーターです。
お包みしますか?
(客)頼むよ。
どうするつもりなの?し〜っ!僕を信じて。
見てろ。
本人が現れるのを待つんだ。
ああ!ハリソン様で?こちらは傘屋ですが傘をお預かりしております。
フーン…。
(ドアベルの音)あの男?違う!背が高くて黒髪。
ああ分かった分かった。
ハリソンもやるねぇ。
代理をよこした。
(ドアベルの音)待ってくれ!カーターの知り合いだ。
(ウィルフレッド)カーターさんはどこに?ああ彼は僕のおじだが忙しい。
ハリソンさんとはどういうご関係?彼は…先生です。
ん…音楽の?文芸サロンで知り合いました。
伝言があるはずなんだ。
おじ宛に。
オペラ劇場に行ったけどハリソンさんに会えなかったの。
居場所を教えて。
駄目だ。
力になるわ。
結構。
彼には僕がついてる。
「ベレスフォード・ヘア」?じゃあ連絡を待ってる。
ハァ…スモッグに負けるなタペンス。
さっきの彼がまっすぐハリソンの家へ?2人は友だち以上の関係だ。
ホント?カーターは知ってるの?ハリソンはバレないよう二重生活を送ってるんだ。
泣いた女性が多そうね。
もしや君も?
(子供)ママママ!
(母親)坊や!どこなの?
(母親)ここよ。
離れないで。
(子供)よかった!手を握ってて。
こっちよ。
おっ!
(男)失礼。
(女性のせきこみ)アッ!
(男)危ないよ。
すみません。

(男)ほらこっちだぞ。
タペンス?・トミー?タペンス?・トミー?タペンス!・トミー?タペンス。
タペンス!
(金髪の女)どうしました?奥さん。
ああ夫とはぐれて…。
どこに…。
ウォータールーに戻ってみるわ。
ウォータールーはあちらですよ。
ホント?セブン・ダイヤルズの方角よ。
いいえあちらです。
間違いなく。
さあ行って。
まっすぐ。
アッ…。
トンネルの端まで行ってください。
ウフッウン。
そう。
右がウォータールーです。
あなた持ち場はどこ?向こうは間違いなくセブン・ダイヤルズよ。
(銃声)
(悲鳴)ハッアッ…フッウッ。
ウッ…。
フー。
アッハァ…。
ハッアアッ。
ハッ。
ウンアッ…。
フーンウッ!
(銃声)
(ドアを開ける音)タペンス?ハァ…。
タペンス…。
アッ…。
ウッ…。
(泣き声)震えてる。
あちこち捜したぞ。
何があった?アッ…。
(泣き声)んん…。
ウン。
(あくび)ウン。
今何時?10時。
10時!うん疲れてたんだろ。
栄養もとらないと。
トミーうれしいわ。
マーマレード!ウフッ。
ウン…。
あなたも食べる?6時に起きたから。
ウン。
モーガンさんちのオンドリ?うるさいものね。
いや眠れなかった。
寝る前のビスケットが効くわ。
ハリソンからは?じゃあアルバートに意見を聞いてみましょ。
いや捜査はここまでだ。
ジョージからまた絵ハガキが来た。
そう。
どうかした?何でもないよ。
ただこんな返事は書きたくない。
お母さんが撃たれたなんて…。
危険すぎるよタペンス。
でも…2人一緒なら…。
2人にとってだ。
もう終わりにしよう。
在庫調べた?ああ黒髪をもっと注文しとかないと。
ドリス・デイ。
グレース・ケリー。
ダイアナ・ドース。
金髪ももっと注文しとこうかな。
ああ…。
請求書請求書請求書請求書…。
おお!「ベレスフォード・ヘア」宛だ。
アァ…。
きっと彼からよ。
ハリソンだわ。
アァ…。
でも急がないと…。

(ため息)行くぞ。
アァ…。
任せる。
201番地なんてない。
おかしいな。
トミー。
ああ。
彼よ。
確かに。
ええ。

(車の走る音)
(ハリソンの叫び声)ああ!ああ!そんな!何てこと!ひどい!
(ハリソン)アァ…カーター…カーターに伝えろ。
あの宿にスパイがいる。
ギルバートを拉致した。
それは…エン…。
「N」って言ったの?「M」だろ。
「N」って言ったの?それとも「M」?ハァ…。
ウウン…。
ハハッ…ハハハッ…。
死んだ。
アァ…ハァ…。
私たちのせいかしら?ハリソンが殺されたのが…。
アァ…そうじゃないよ。
(呼び鈴の音)
(2人)アッ!・
(犬の吠え声)アァ…。
(呼び鈴の音)・
(犬の吠え声)ハッ…。
アッ…。
(ノック)
(呼び鈴の音)おじさんだ。
私たちをどうする気?僕だけだ。
えっ?責任を負うべきなのは僕だ。
2階へ行って。
(呼び鈴の音)
(ノック)・トミー開けろ!トミー!どこにいたんです?情報漏洩の件を調べてた。
かかりきりだよ。
(ドアを閉める音)何て言ってた?誰が?しっかりしろ。
ハリソンだ。
ああ。
ギルバートは拉致された。
宿にスパイがいると。
そのスパイの名は?僕の耳には「M」と。
M。
Mなんていたかな?知らんな。
Mなんてやつは。
・たまにコードネームが変わることもあるが…。
(階段のきしむ音)・確かにMか?
(階段のきしむ音)Nかも。
N?何か意味が?ドアを閉めろ。
アアアアッアッ。
(ドアを閉める音)タペンスには黙っていてくれ。
この件に関わるのはお前だけだ。
約束できるな?はいおじさん。
アッハァ…。
・聞くからには覚悟しなきゃならんぞ。
・最高機密だからな。
じゃNとは?ソ連のスパイだ。
何年も尻尾をつかめない。
・かつてイギリスにはソ連に共感して共産主義に転向した裏切り者が・大勢いた。
「第五列」とは何か知ってるか?トミー。
聞いたことは。
内部の敵だ。
Nはイギリス政府内にコネを持っている。
それも陸軍でうちの部署の可能性が高い。
誰かがNにギルバートのプロジェクトを漏らした。
じゃロシア人がギルバートを?うん。
プロジェクトとは?原子爆弾だ。
ああ新型の試作品だ。
(窓をたたく音)・
(男)おはようございます!・窓全部拭いていいですね?別の部屋で話そう。
アッアアアアッ…アッ…。
(犬の吠え声)
(ドアを閉める音)やつらの目的は?技術の向上だろう。
まずは試作品を国外に持ち出すはずだ。
・内務大臣はひそかにギルバートを雇った。
クリケットが始まる。
ギルバートの行方を捜せと大臣に言われたが漏洩の心配があったから小規模にやりたくてな。
それでハリソンを?
(ラジオのスイッチを入れる音)そのとおり。
ギルバートが滞在してたクロマーの宿を探らせた。
宿にいるスパイが…N。
科学者と爆弾を手にしたのになぜまだそこに?恐らくその宿に重要なものが残されてるんだろう。
クロマーの「気楽荘」って…。
宿泊客たちの素性を調べるにも慎重を要したから遅くなった。
明日アルバートが同行して説明する。
で僕は何を?Nを突き止めてほしい。
それからギルバートを捜せ。
爆弾もな。
タペンスに話すなよ。
はいおじさん。
分かりました。
何て言われたの?えっ?ありがとうってさ。
ありがとう?捜しただろうハリソンを。
僕が報告したらお礼を言われて…。
それだけだ。
ハリソンが殺されたことは?ハァ…覚悟はしてたろう。
じゃあそれだけ?いい知らせもある。
スコットランドでカツラ業界の会議が開かれるって話したろ?チャンスが来たぞ。
あした9時の列車で行くんだ。
バカと結婚したの?何だって?「トーマス・ベレスフォードはこのマヌケをめとるか?」って司祭が言った?何を言ってる?任務を与えられたのね?そんなんじゃない!じゃあ誓える?ん…。
あ〜あ。
誓う。
そう。
ならいい。
アァ…。
頼むよタペンス。
1週間だけだ。
多分。
温かくしなくちゃね。
スコットランドは寒いから。
いや本当は連れていきたいんだ。
でもきっとカツラ会議は女性向きじゃないよ。
分かってるわ。
死ぬほど退屈でしょうね。
絶対そうだ。
そうよ。
きっと最悪だわ。
実は私も遠出をしたかったの。
ああ!ホント?ジュリーおばさんとこ。
クリスマス用のおいしいチャットニー作るのを手伝うの。
チャットニー嫌いだろ。
おばさんのことは好き。
ウソだ。
とにかく…失礼。
すぐに出れば明るいうちに着くわ。
アァ…。
ショートブレッド買ってきてね。
えっ?なんで?スコットランドでしょ。
名物よ。
ああ。
それじゃあお土産買ってくる。
ウン。
列車に乗り遅れないで。

(汽笛)
(笛)
(汽笛)
(汽笛)
(アルバート)もう一度復習だ。
シーラ・プレナ。
気楽荘の女主人でアイルランド人。
何地方?コネマラ。
次。
カール・デニム。
実家はパブ。
数年前からここに住んでて気楽荘には2か月いる。
次。
カーン少佐はイタリア解放に貢献した。
メダルは?ヴィクトリア十字章。
違う!ミリタリークロスだ。
しっかりしてくれ!しくじれば命に関わる。
ハリソンの二の舞だぞ。
Nは軍人かもしれないし事務員とか尼僧かも。
誰も信じるな。
だがみんなを信用させろ。
気楽荘までやってくれ。
(アルバート)次。
スプロット夫人。
既婚者だが一人旅中。
ビーチの散歩が好き。
愛用の香水はミス・ディオール。
(アルバート)よく覚えたな。
ああ。
名前が変わってるから。
(アルバート)まあね。
次。
ミントン夫妻は夫婦そろって心理学者だ。
僕にはチンプンカンプンだけど「自我と自己」って本は読んだ。
(アルバート)最後は?ヴェロニカ・アバーノヴィッツ。
ポーランド人のメイド。
そして君の名前と特徴は?ジョージ・メドウズ。
うん。
独身で本の虫の野鳥観察家。
専門の野鳥は?ムシクイ類。
よろしい。
ジョージ・メドウズ野鳥観察家。
野鳥観察に来た。
忘れるな。
誰がNか分からない。
カール・デニムカーン少佐シーラ・プレナミントン夫妻スプロット夫人ヴェロニカ。
全員疑え。

(アルバート)魅力的にでも目立たずに。
社交的にでも印象は薄く。
幸運を祈ってる。
(シーラ・プレナ)満室よ。
予約したメドウズだ。
そう。
じゃあ突っ立ってないで入んなさい。
ああ。
靴の泥落とせって教わらなかった?朝食は7時から8時まで。
時間厳守よ。
夕食は6時。
昼はご自分でどうぞ。
退役軍人のパーティーに参加しに?ええそうなんです。
タクシーは予約してあるわ。
ひょっとして西海岸の出身かな?コネマラとか?ハァ…2度とその地名出さないで。
ヒツジと岩しかないとこよ。
部屋は階段上がりきったとこ。
ああ立派な宿だ。
上等なお客さんが来るんでしょ?まさか批評書くつもり?いえそんなんじゃ…。
ならいい。
ハァ…。
ハァ…。
アアアッ…。
どうも失礼しました。
間違えた。
(ミントン夫人)どなた?ジョージ・メドウズです。
(ミントン)はじめまして。
私はミントン。
それと家内。
「幸せな人生にも少しの闇はつきものだ」。
フフッ。
今の世で意味を探求するならユングは必須だ。
僕はむしろフロイト派だな。
読みました?私たちはユングに忠実ですの。
アァ…。
お仕事は?2人とも心理学者よ姿勢で分かる。
軍人だね。
実は戦地に赴きました。
いろいろあっただろう。
手の握り方で分かる。
アッ…え〜部屋を探すんで失礼します。

(ため息)フン。
フーン…。

(ヴェロニカ)はいブレンケンソップさん。
以後気をつけます。
・ご指摘ありがとうございます。

(せきばらい)メドウズさんですわね?タペ…。
メドウズさんよ。
そうでしょ?アッ…ええそのとおりです。
であなたは?ブレンケンソップ夫人。
ああ。
お茶お飲みになる?もらおう。
(ドアを閉める音)どうやってここを?壁に耳ありよ。
忘れたの?じゃジュリーおばさんは今年も1人でチャットニーを作るんだな。
カツラ会議は随分早く終わったみたいね。
ハッ…ブレンケンソップさんのご主人は?恐ろしい病気でじわじわと死んだの。
奥様は?独身です。
フン。
発想が貧困。
(ドアの開閉音)Nの目星はついた?みんなお茶に下りてくるわ。
自分で推理して。
(カール・デニム)ブレンケンソップさん。
もう僕の代わりを見つけちゃったんですか?デニムさんったら年上の女をからかわないで。
アン…もう!
(2人の笑い声)こちらはメドウズさん。
きっと話が合うわ。
独身同士で。
ハンター?野鳥好きだ。
(スプロット夫人)聞きなれない男性の声がすると思った。
こんにちは。
どうも。
ウフフフッ。
ウーン。
アッフフフフッ。
ぜひお近づきになりたいですな。
(カール)ああヘイドックさん!カーン少佐!お元気ですか?さてさてポーカーやるのにちょうどいい人数が集まったな。
ギャンブルは悪徳だ。
私は大好き。
ほう?ハハハッ。
(せきばらい)
(ヘイドック海軍中佐)ファイブスタッドでやろう。
ツキが変わってほしいね。
どうだい?カーン。
ヘイドックだ。
ヘイドック中佐だ。
あっメドウズです。
よろしく。
やるかい?ああいやいや。
カードはあんまり。
ああいいじゃないか。
やろうぜ。
(スプロット夫人)さあ隣に座って。
かみつかないから。

(カーン少佐)ごゆっくりヘイドックさん。
中佐はこの宿に宿泊なさってるんですか?いやプルシア・コーヴに自宅が…。
ウン…いい所ですか?フォールド。
ここへはカードしに来てるの。
ああ。
(カーン)スプロットさん?あなたの番ですよ。
カーン少佐はどこの前線に?メドウズさん普通ポーカーの最中はおしゃべり禁止だ。
ああ。
それは失礼。
知らなくて。
(カーン)スプロットさん?フォールド。
デニムさん?ツイてたんだ。
(ヘイドック)待て。
メドウズがまだだ。
アァ…よく知らないんで。
エースは一番強いのか弱いのか。
(スプロット夫人)ウフッ。
エースは最強だ。
知らないのはバカだけ。
フフフフッ。
ウソつきもだ。
えっ?ウソはついてない。
ただ…ツイてた。
大いにな。
あんたここへは何をしに来たんだい?メドウズさん。
野鳥観察に。
(ヘイドック)本当かい?専門は何だね?カラフトムシクイです。
カラフトムシクイだと?イングランドで?この時期にかい?えっ?ここは渡りの通り道なんです。
アァ…。
あの絵をご覧なさい。
あれはカラフトムシクイの典型的なつがいだ。
(シーラ)メボソムシクイよ。
我が家に伝わる家宝なの。
子供でも違いが分かる。
アァ…まあそういう子もいるかも…。
印象派は微妙ですものね。
違う?
(カール)さあね。
でもやっぱりウソをつかれたのかもな。
まあこちらの紳士に。
ええ。
あなたが小説を考えてる隙に。
ウン。
作家?推理小説。
ああそうだろうね。
(ヴェロニカ)急ぎのお手紙が来ました。
カーン少佐。
(カーン)ああありがとう。
失礼。
まだお茶が残ってますよ。
そうね。
ありがとう。
私も昔はよく野鳥観察をやってた。
ハッ…。
あしたどうだね?ん?ええぜひ。
フフッ。
フン…。
ソ連の消印が押してあった。
カーンがNか?一番怪しいわね。
待てよ。
先入観にとらわれるのはよくない。
じゃあ誰だと思う?カール・デニムだな。
彼は好き。
やっぱりな。
スプロット夫人は?何がだ?アッハッ。
タペンス笑い事じゃない。
Nは原子爆弾を持ってるんだぞ。
もちろんそんな事分かってるわよ。
カーン少佐が明らかに一番怪しい。
でも証拠がない。
アッ…部屋に忍び込んでさっきの手紙を調べてみる。
もし本人が来たら?古い手を使うわよ。
誘惑か!?ハッ…。

(ノック)フーン…。
盗み聞きが趣味?ああいえ。
ただプレナさんがこの辺にいるかと。
下にいるわ。
ああそう。
多分。
ウン。
でも今夜のために美容室に行ったかも。
ああ!それはいい。
ええ。
退役軍人のパーティーですね。
行くんですか?ええ何があっても。
でもパートナーがいないの。
アハハッ。
緊張させちゃったかしら?いえいえいえ。
とんでもない。
ただ…ウウン。
お茶でも飲んで一息入れましょう。
「ベレスフォード・ヘア」?これ何なの?「最高級人工毛髪の供給業社」。
つまり「カツラ」でしょ?フフン。
いやもっと控えめで上品で選ばれた顧客向けです。
なぜあなたがこれを?僕も使ってる。
ホント?品質は間違いなさそうね。
ちっとも気付かなかった。
アッアアッ。
業界1位です。
これもらっていい?イメージを変えたいわ。
あなたはどうしてこの東海岸に?移住するの。
ちょっと事情があってね。
再出発したくて。
きれいなとこですしね。
きれいなとこにきれいなスプロットさん。
ウフッ。
とても魅力を感じてるわ。
今んとこ。
アッ…ああそろそろ行かないと。
パーティーの準備を。
ええ。
2人ともね。
アッ…。
アッハハッ…。
ハァ…ハァ…ハハッ。
ハッ…ハァ…。
ハハッ…フーッ。
(ドアのきしむ音)ハハッ…ハッ…。
そこから出てくるんだ。
ハッ…ハハッハァ…。
何者だ?ブレンケンソップよ。
もう一度言え。
だからブレンケンソップです。
どうして私の部屋にブレンケンソップさんがいる?2人きりで話したかったの。
何をだ?メドウズさんはイカサマをしてたと思う。
味方をしてくれるとはうれしいね。
フン。
ただ問題は…。
ハッ…。
そのウソのために死ねるか?ハッ…。
もし正直に言わないんなら…。
(おびえた声)そのかわいらしいおつむを吹き飛ばすぞ。
(おびえた声)お願いがあるの。
誰かそばにいて守ってほしいの。
いい気にならないでトミー。
何かたくらんでるのよ。
(カーン)私は裏切られ破滅した。
その復讐をする。

(銃声)
(2人)ハッ!ここで何してる?答えてくれ。
Nから要求があった。
(アルバート)「10万ポンドと収監中のソ連の政治犯30人を渡さなければ爆弾を爆発させる」。
(カーン)Nの正体が書いてある。
タペンス手がかりだ。
手紙が燃やされてた。
Nに気付かれたらおしまいだ。
(カール)ウン!ああ!ハァ…トミー。
2015/11/22(日) 23:00〜23:55
NHK総合1・神戸
アガサ・クリスティー トミーとタペンス(4)「NかMか(1)」[二][字]

アガサ・クリスティー原作のおしどり夫婦が活躍する探偵ドラマ。日本初放送!トミーは軍情報部幹部のおじから極秘任務を命じられる。

詳細情報
番組内容
イギリス国内で極秘プロジェクトに関わっていた科学者と核兵器の行方が分からなくなった。トミーは軍情報部幹部のおじから、オペラ劇場で、ある人物から伝言をうけとるよう命じられる。タペンスにも話せない極秘任務だ。トミーは劇場で目的の人物と思われる男に接触するが、直後に男は死んでしまう。
出演者
【出演】デビッド・ウォリアムズ…大塚明夫,ジェシカ・レイン…世戸さおり,ジェームズ・フリート…浦山迅,マシュー・スティア…佐久田脩,クリスティーナ・コール…藤本喜久子,エド・スピラーズ…小林親弘ほか
原作・脚本
【原作】アガサ・クリスティー,【脚本】クレア・ウィルソン
監督・演出
【演出】エドワード・ホール
制作
〜イギリス Endor Productions/Agatha Christie Productions制作〜

ジャンル :
ドラマ – 海外ドラマ

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
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英語
サンプリングレート : 48kHz

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