| ―― |
それではさっそく……。 |
| 安田: |
ところでインタビュアーさん、『ブラインド・ミトス』ってどういう意味か知ってます? |
| ―― |
えっ!? えーとたしか漏れ聞こえてきた過去の打ち合わせでは、もうもくのしんわ……、あれ? しんか? とか、何かそういうものだという話をされていた記憶がうっすらと……。とりあえず、よくわかんないけどタイトルかっこいいな、と思っていました。 |
| 安田: |
そう、タイトルは『盲目の神話』、かっこいいと思ってつけました!(胸をはってドヤァ) |
| 安田&――: |
……(両者見つめあって数秒の沈黙)。 |
| ―― |
え、ええええー(驚愕)!? |
| 安田: |
まあ、それは半分冗談で(笑)。
ちゃんとタイトルに意味はあるんだけど、概念が複雑だと思われてしまうかな、とこれまではイベントなどでもあまり詳しく話していませんでした。
『ブラインド・ミトス』の『ブラインド』は、盲目的進化のことなんですよ。
進化論のひとつに突然変異というのがあって、ランダムで無目的な進化の中で稀にすごい超能力的な進化をとげるものがあるのが進化のすごいところなんだけど。 |
| ―― |
は、はい……(ふぉぉ、なんか難しそうな話きたぞ……) |
| 安田: |
無目的、盲目的というのはそこからなんだけど、有名な進化論者の一人、リチャード・ドーキンスの著作に『盲目の時計職人』、原題『The Blind Watchmaker』というのがあるんですよ。このタイトル、かっこいいでしょう。ウォッチメイカーは時計職人だけど、直訳なら監視創造者=神でもある。ほら「盲目の神」って「盲目の神話」に近づいたでしょ。 |
| ―― |
はい! |
| 安田: |
進化というのは時計職人が盲目的に作っているようなもので、何がどうなるかわからないけど、突然すごいものができたりすることもあるという、その『ブラインド』なんです。
『ブラインド・ミトス』は、進化が突発的な変異を遂げていく過程でありとあらゆるいろんな世界ができていく、そしてそこにおける様々な怪奇な現象や神話的なすごい出来事や、それが起こる世界を描くゲームなんですよ。 |
| ―― |
な、なるほど……。 |
| 安田: |
もうひとつ。
神秘論者が唱えた『アカシックレコード(Akashic Records)』という、世界はできた時から終わりまで、ずーっと未来永劫にわたって各年代に起こることがすべて決まっていて、それが全部記録されている書物がある、という説があってね。
最初にそれを唱えたのがマダム・ブラヴァツキーていう、インドを旅した有名なオカルティストのおばさんで、それをルドルフ・シュタイナーというドイツのオカルト哲学者が『アカシックレコード』とはこういうものだ、と『アカシア年代記より』っていう本を書いたんですよ。 |
| ―― |
え、本当に書いちゃったんですか? |
| 安田: |
そう。伝説に語られるレムリア大陸やムー大陸、アトランティスが……、ってほんまに書いてるんよ、哲学者が。
自分たちがいるのは何番目の世界で土星期がどうとかなんとか……、それが『アカシックレコード』で、地球の連綿たる歴史が延々と記録されている。
だから進化によって無数に分かれた世界にもそれぞれの記録があり、宇宙のどこかにそれが全部収められている図書館みたいなものがあって、オカルト書や禁書といったものによってそこへもぐりこむ存在がいて、そこから知識を引き出したらえらいことが起こるんじゃないか、というのが基本設定なんだ。 |
| ―― |
そこで、この作品の核ともいえる「禁書」が出てくるわけですね! |
| 安田: |
そこから来たものを禁書としているものもあれば、そこへ潜り込むための禁書もあったり、そういう禁書にまつわる事件を捜査して、それを抑え、封じるための機構、それが聖ビブリオで、そこに所属するメンバーがこのゲームのキャラクターであるTBファイラー、ということなんですよ。
まあ、そんな背景とか概念はあるけど、実際のゲームは禁書が原因の変な事件を解決する、ということになります。 |
| ―― |
壮大な説明ありがとうございました。ちなみに、先ほど話題に上った『アカシア年代記より』というのは、日本語で出ているんですか? |
| 安田: |
国書刊行会から、世界幻想文学大系の……何期だったかな? 忘れたけど出てるよ。
アイデアのひとつとして取り入れただけでゲームとは関係ないけど、興味がある人は読んでみるのもいいんじゃないかな。 |
| ―― |
そんな壮大な背景のある『ブラインド・ミトス』は、世界各国で人気急上昇の協力型ストーリーゲームですね。
SNEでもこれまでに『ゴーストハンター13』シリーズという協力型ストーリーゲームが好評発売中ですが、今回は世界観からシステムに至るまですべてが新しい作品です。そんなわけで、インタビューの定番、開発の経緯など……。 |
| 安田: |
これまでの発展経緯はすごく長いんだけど、聞きたい? |
| ―― |
お、お話しいたけるならぜひ。 |
| 安田: |
そもそもの始まりは、僕が神戸芸術工科大学で教えている『世界観構想論』の世界観を作るという課題。
その中で、特に面白いものを実際に作品にできないかなと考えていて、2011年に『ルッテノーブル』という作品を取り上げたんだ。これは最初、近未来のスチームパンク的な世界で人形に人格をもたせて闘技場で戦わせるという作品だった。 |
| ―― |
あ、うっすらとその設定の記憶が……。 |
| 安田: |
でも発展させていく過程で、各所からの意見を取り入れすぎてぐちゃぐちゃになってしまい仕切り直すことになった。これが2012年中頃。
今度はミステリーの要素を入れた『ビブリオ探偵もの』で、世界に満ちる謎が本と関係していて、それを解き明かしていく探偵になろう、みたいなものになったけど、結局それもうまくいかなかった。
ただ『ブラインド・ミトス』の特徴のひとつであるお手振りカードの判定システムは、この頃に誕生しました。 |
| ―― |
作成したのは、河端さんですよね。 |
| 安田: |
そう。新しい判定方法を模索している時に、河端ジュン一くんが作ってくれました。
当初は出版社で出してもらう方向で進めていたんだけど、ボードゲームの形で出してもらうのは難しいという結論が出たのが2013年の夏。
2013年夏といえば、SNE/cosaicで『ゴーストハンター13』を出す体制に入っていたから、こうなったら自分たちで出そう! となり、新しい形で再スタートすることになりました。 |
| ―― |
ふむふむ。 |
| 安田: |
その時に『ブラインド・ミトス』の奥付に名前が掲載されている学生の一人、朴帝相くんから『アカシックレコード』をもじった『アカシックコード』という設定が提案されたんだ。
『アカシックコード』から禁書という形で知識を手に入れて悪事を働く者を阻止し、取り締まる図書館員たちのゲームにしたらどうか、とね。 |
| ―― |
ここでようやく、ほぼ現在の『ブラインド・ミトス』ですね。 |
| 安田: |
そこで世界観は学生さんたちが、ゲームシステムは僕が新しいのを作って、学生さんたちにはシナリオ作成やテストプレイに参加してもらう、という体制で2013年秋に本格的に『ブラインド・ミトス』として動き出したんだ。
ちょうど『ゴーストハンター13』が出る頃に新たにスタートしたわけだから、そこから発売までまるまる2年。長い道のりでした。 |
| ―― |
でも、そこからはすごい勢いでどんどん新しいものに発展していきましたよね。 |
| 安田: |
その頃ちょうど新しいストーリーゲームの流れが見えてきたし、『ゴーストハンター13』も順調だったので、僕も自信をもって作っていくことができたんだと思う。 |
| ―― |
『ゴーストハンター13』インタビューの時にも、ストーリーゲームの新しい形についての話題がありましたよね。 |
| 安田: |
現在『Role&Roll』で連載中の「RPG新転回」にも書いたけど、2012年初頭に連載していた「安田均のゲーム航海日誌」を振り返って自分でもびっくりしたのが、前半に『ブラインド・ミトス』のことが書かれていた。
もうあの時には原型となる考え方ができていたので、それをひたすら磨いていって、それがようやく今、形になったということです。 |
| ―― |
そんな経緯を経て誕生した『ブラインド・ミトス』には、多種多様なシステムや要素が詰まっていますよね。 |
| 安田: |
まず禁書の影響で汚染が広がっていくのを阻止しながら、シナリオごとのストーリーを解くための手がかりを集めるんだけど、汚染が広がったら終わり。
途中でキャラクターが3人行動不能になっても終わり。
しかも制限ターンがあって、4人ならだいたい7ターン・28手番の中で事件を解決しないといけない。
この3つを気にしながらゲームのクリアを目指すので、それぞれの
相互関係
がなかなか激しい。 |
| ―― |
さらに手がかりを集めるのに周辺探索をして手がかりチットをめくったり、獲得した禁書ビットで禁書パズルをして能力カードをもらったり、能力カードをもらったら堕落判定をしたり……と、このゲーム、やることがたくさんありすぎて、プレイヤーがすごく忙しい! |
| 安田: |
やることが多いうえにそれぞれで新しいことをやっているので、慣れるまでは少し大変かもしれません。でも、どれも簡単なことばかりだし、制限ターンがあって手番の数は決まっているからね。
最初はルールや手順の説明なんかもあって時間がかかるけど、慣れれば箱に書かれたプレイ時間内に収まるかな。 |
| ―― |
一度覚えてしまったら、あとはさっくさくいけますよね。 |
| 安田: |
システムのことは他にも、部分的にカバーしようと後から付け加えてうまくいったものがいくつかあって。
例えば判定カードの成功数が1だった時にもらえるスーパートークン。
判定カードは、繋がる数の基本は3弱くらいで指数曲線がきれいに出てロングテールができないように調整はしてあるんだけど、1回目で切れる確率は20数%あって、実際にやると偏ることもよくある。 |
| ―― |
何故かやたらスーパートークンを貯める人、いますね。 |
| 安田: |
繋がらない人は悲しそうな顔してるし、結局引きのゲームやないか! とならないようにこのトークンを作ったんだけど、これを「自分には使えない」にすると実に協力ゲームとしてうまくいくことがわかってね。実はこれ、SW2.0のピンゾロ(経験点が50点もらえる)からの発想なんだよ。 |
| ―― |
そうだったんですね! でもこのトークンのおかげでしょんぼり感が軽減されますし、ここぞと言う時すごく強力な助っ人になりますよね。 |
| 安田: |
それから、能力カードを獲得する時にやる堕落判定。
ドイツゲームでは少ない資源をちびちび運用するのが基本なんだけど、じゃあ余剰に出たらどうなるのか。
判定に成功した数だけ禁書ビットを引く当初のシステムだと、場合によっては一度に禁書ビットを十何枚も獲得することがあった。さすがにそれは多すぎるということで成功数と達成値を分けて獲得枚数を8までに限定したけど、それでも禁書ビットをたくさん引く人はいる。
それだけだとやっぱり引きのいい人が3レベルのカードをいっぱい持つのか、持てる者だけが楽しむのかってなるから、能力カードを獲得する際には、完成させたパズルに対応する難易度で堕落判定を行い、2回連続で失敗したら即退場、にしたんだ。 |
| ―― |
堕落判定が導入されて、一気に緊張感が増しましたよね。 |
| 安田: |
逆に引きすぎた時は3枚で任意の1枚に交換できるし、リザーブを3枚持つことでコントロールできるようにしてあるから、堕落トークンを持っている時は低い難易度で判定ができるようにパズルを調整できる。だから、退場するのはたいてい欲張りなやつです(笑)。 |
| ―― |
まあ、1レベルだから大丈夫だと高を括ってたらうっかり失敗する持たざる者もいますけどね(笑)。
個人的に大好きなイベントカードも、比較的あとのほうで追加された要素ですよね。手番の人ではなく、手番の次の人が引いて内容をこっそり見て、カードに書かれた条件を満たしたら即割り込みでイベントが発生する、という。 |
| 安田: |
イベントカード自体は昔からいろんなゲームに採用されているシステムなんだけど、最近のストーリーゲームで特によいものでは『冬の真っ只中で(Dead of Winter)』に使われていて、似ているといえば似ていますが我々はこれを選択肢型にしました。
手番の途中に「ちょっと待ったー!」って言われるとみんなドキッとするし、油断していたら手番プレイヤーじゃなく自分のキャラが指名されていきなり選択肢を選ばないといけなくなったり。そういう緊張感を狙ったんだ。 |
| ―― |
しかもここぞという時にすごいタイムリーにイベントが発生するんですよね。 |
| 安田: |
まるでサイコロのピンゾロとか6ゾロみたいだよね。
で、このイベントカードの問題として1回やったら内容を覚えるっていうけど、同じ選択肢で違う結果もあるし、80枚全部を一度に使うわけじゃないのでしばらくは楽しんでもらえるんじゃないかな。 |
| ―― |
同じ選択肢で結果が違うのがある、というのも悩ましいものですよね。今回はどっちや……? って。 |
| 安田: |
宅庵が原稿締め切りを破ったらどうなるのか、古代がオーパーツを起動させたらどうなるのか?
そんな感じで面白いシステムてんこ盛りのゲームなので、慣れたらたまりません。
その分、戦闘は簡単にしました。『ゴーストハンター13』の時もそうですが、逃げやすくしてるのでやばいと思ったら逃げられます。そうしないと突然10点のダメージが出ることもあって、強烈なやつを2撃くらったらだいたい行動不能になる。 |
| ―― |
ダメージ軽減できるのが能力カード2レベルの「防御力強化」(ダメージを1点軽減できる)くらいしかないですしね。まあでも、偏るのもまた楽しいものです。 |
| 安田: |
遊ぶ度にいろんな楽しみが見えてくるので、ぜひ何回も遊んでみてください。近々シナリオのサポートやイベントカードの読み替えテキストなど、ホームページでいろいろやっていけたらなと思っています。また、遊び方の動画も準備中なので、ぜひ注目していただければと思います。 |
| ―― |
そんな盛りだくさんの『ブラインド・ミトス』はコンポーネントもてんこ盛りなのですが、まず田口順子さんのこの箱イラストを見てほしい! 美しいですよね(うっとり)。 |

|
| 安田: |
今年のJGCで田口さんに製品をお渡ししたら感激されてましたね。「本当に出た」って。何せ田口さんに箱絵の依頼をして打ち合せをしたのが一年半前、去年のJGCで原型を遊んでもらって、ようやく今年発売だからね。 |
| ―― |
制作から発売まで、かなり時間がありましたのもね。田口さんからしたら「このゲーム本当に出るの?」って不安に思われたことでしょう。 |
| 安田: |
想像以上に素晴らしいイラストだったので、今回の箱デザインはイラストを邪魔しないようにタイトルは小さめに入っています。イラストの方が目立つという、PRの時代にあるべからざる作品になりました。 |
| ―― |
素敵です。わたしだったら箱絵だけでこのゲームほしくなっちゃいます。
さてさて、そんな素敵箱をあけまして中身をご開帳しますれば、次に目をひくのが埋め込み式の地形タイルではないでしょうか。 |
| 安田: |
これは周辺探索の手がかりを得るために作って、思いついたのは僕なんだけどそれを実際に形にしてくれたのはこあらだまりさんです。
モックを見てびっくりしました。僕がやってほしかったものを本当に作ってきた! ってね。
同時に、実際製品にできるのかな、ものすごいコストかかったらどうしよう……って冷や汗ものでもあったけど(苦笑)。 |
| ―― |
このボードはわたしも初めて見た時震えました。 |
| 安田: |
綺麗な盤面で、鉄道もあるし地域の色分けもあるし、実際に街の上で捜査をしているという雰囲気がすごく出たと思う。何より、タイル7枚の配置を変えることで街の形が自由に変わる。地形が変化するというのはボードゲームならではの魅力だよね。
しかも裏返したら素になるから、裏面も使ってバリエーションを増やすこともできるし……、僕が最初から狙っていた秘策もある。 |
| ―― |
秘策!? |
| 安田: |
実は禁書ビットは、この地形タイルのへクスと同じサイズで、ビットに描かれた線は、線路の角度とまったく同じなんだよ。 |
| ―― |
(見くらべて置いてみて)あ、ほんとだ! |
| 安田: |
だからボード間を禁書ビットで埋めたり、繋がっていない線路の上に置いたり、そういうのが自由自在にできるんだよ。素の裏面を使ってビットで自由に線路を引いたり、道に見立てて地下ダンジョンにしたりもできる。
地形タイル上でダンジョンマップという名の禁書パズルもできる……、面白いアイデアがいっぱい浮かぶよね。 |
| ―― |
どれも楽しそうです! |
| 安田: |
それだけじゃなくてね、このシステムだけでもいろんなシナリオを遊んでいけるけど、ちょっと工夫するだけで別の形の面白いゲームに転化することもできるんだよ。
例えば『スコットランドヤード』という怪盗と捜査官が追いかけっこをするゲームがあるけど、あれをこの地形タイルでできるんじゃないかな、と。鉄道あるし手がかりチット裏返ってるし。 |
| ―― |
おおお、なるほど! |
| 安田: |
他にどんなことができるのかを今考えているので、そのうちホームページでシナリオの変形として載せたり、サプリメントの形で出せたらいいなと思っています。期待していてください。 |
| ―― |
すごい! どんどん遊び方が広がりますね! ユーザーの皆さんにも、地形タイルや禁書ビットの活用法をぜひ考えていただけたら嬉しいですね。 |
| 安田: |
……それにしても、『ゴーストハンター13』の時から中身が詰まりすぎて重たいとか、ダイスタワー付きとか、今回みたいな埋め込み式タイルとか、コンポーネントに力入れたゲーム多いよね、うちのゲーム(しみじみ)。 |
| ―― |
総じて皆さん、箱持って「重た!」っておっしゃるんですけど、ユーザーにとってそれは幸せの重みだなって思います。だって言ってる時の顔見ると皆さんめっちゃいい笑顔だったりしますし。 |
| 安田: |
コンポーネントはボードゲームの重要な部分だし、しっかり作ってあるからこその重みでもあるからね。
あ、そうそう『ブラインド・ミトス』では、手がかりチットだけは、ボードから切り離す時にチットの表面が破れないように気を付けてください。
綺麗に抜けない場合は、いっそカッターとかで切り抜くとかした方がいいかもしれない。
あと、判定カードは横にたくさん並べるから小さくしたけど、よく使うのでこれはスリーブがあったほうがいいかもね。 |
| ―― |
このサイズのスリーブって市販されてるんでしたっけ? |
| 安田: |
あるよ。ユーロサイズだったかな。ゲームショップ等で探してみてください。
別に、判定カードが擦り切れたらもうひと箱買っていただいて、地形タイル14枚というすごい大都市を遊んでもらうというのもありだけどね(笑)。 |
| ―― |
なんという壮大な! |
| 安田: |
昔おったんや、『マジックレルム(Magic Realm)』ていうゲームを2つ買って何しよるんやろうと思ったら、タイル全部並べて広大なファンタジー世界を作ってたという人が。そんな遊び方もあるので、これからもぜひいろいろ試してみてください。 |
|
→ おまけのこぼれ話
「今日のTBファイラーたち」 |

|
| 安田: |
『ブラインド・ミトス』のことはこのあたりにしてもうひとつ、同じ日に発売の作品について話しましょう。いっぱいしゃべったからこちらは簡単にいこうか。 |
| ―― |
はい、ドイツの巨匠ライナー・クニツィーアの最新カードゲーム『イカロス』ですね! |
| 安田: |
海外でも今年の8月に出たばっかりの最新作です。その日本語版を海外と間をおかずSNE/cosaicから出すことができました! がんばりました!! |
| ―― |
わー、ぱちぱちぱちー! |
| 安田: |
『イカロス』は、有名なダイスゲーム『ブラフ』をダイスを使わずカードで簡単に、場所も取らず、音もせず遊べるようにした作品。『ブラフ』はすごく面白いゲームだけど、サイコロを振る音が一番の困りものだったからね。 |
| ―― |
あー……。 |
| 安田: |
サイコロだけじゃなくて遊んでるとみんな騒ぐから、周りから「ちょっとうるさいから静かにしてくれ」って必ず怒られる。ただ『イカロス』も、遊んでる時はやっぱり大騒ぎになるから結局一緒やっていう意見もあるけど(笑)。 |
| ―― |
たしかに(笑)。夏のSNE祭りでもJGC2015でも大盛況でしたね。 |
| 安田: |
そしてまたこのシステムに、『イカロス』というイメージがものすごくぴったり嵌っているよね。
イカロスは高く高く舞い上がって、高く昇りすぎたために蝋で固めた翼が溶けて墜落してしまう、という。
全員の手札のうち、スタートプレイヤーが指定した色のカードに書かれた数字の合計がいくつあるかをあてるゲームだけど、誰かが調子に乗って競り上げていったら、悪いやつが「へっへっへ、チャレンジ!」って言って落とすでしょう。……というか、仕方なく上げるんだけどねぇ。 |
| ―― |
しかも、カードを交換してからあげていくのがまた……。 |
| 安田: |
そう、ほんとに悪いやつは今競っている色のカードをわざわざ交換してから上げるからね。1を捨てて0を引いて来ても、まるで高い数字札を引いたと言わんばかりにニヤニヤしながら競り上げていく。
何せ0と7の間には差が7もあるから平均値が15くらいだとしても、一気に22くらいまで上がってしまうこともざらにある。かといって上限は7人プレイで34だから、35以上は絶対嘘になる。
そういう計算はもちろんクニツィーアの作品なのできちっとされていて、その範囲内でどれだけあるかを予測する、その怖さと、面白さがたまらないゲームですね。 |
| ―― |
クニツィーア作品らしい、読みあいやジレンマが面白いゲームですね。 |
| 安田: |
ゲームのルール説明は最初ちょっと難しいかもしれないけど、遊べば直感的にすぐわかって楽しんでもらえること間違いなしです。 |
| ―― |
JGCでも皆さん「すごく面白かった! いつ発売ですか!?」と熱心に聞いてくださって……。 |
| 安田: |
10月10日発売です。JGCの時点では9月下旬~10月くらい、とアナウンスしていましたが、シルバーウィークのせいでどうしても9月発売が間に合いませんでした。申し訳ありません! |
| ―― |
ちなみに、夏のSNE祭りでお客さまから「以前、クニツィーアのよく似たカードゲームを遊んだことがある」というご意見をいただきまして。 |
| 安田: |
KOSMOS社から出ていた『詐欺師(Hochstapler)』というゲームじゃないかな。
『イカロス』とは、カードもシステムもよく似ているけど、全く違うゲームと言っていいと思う。
どこが違うかというと、競り上げていく時に『イカロス』はひとつの色を指定したら、競りが終わるまでその色だけで競りを行うけど、『詐欺師』はどの色(『詐欺師』ではカードの種類)に変えてもよかったんだ。 |
| ―― |
そこが違うと、どれくらい違うゲームになるんでしょうか? |
| 安田: |
『ブラフ』というサイコロゲームを考えたらわかるんだけど、『ブラフ』は競るサイコロの目を1~6まで変えることができるでしょう。
目の変更を色、サイコロの振り直しをカード交換で表現していて、カード交換に関してはうまく対応しているけど、数字には順列があっても色には順列がないから、そこをころころ変えると判断の基準が弱くなってしまうという問題が発生するんだ。
『イカロス』はひとつの色に絞り込むことで、「宣言以上の数字があるかないか、どっちやねん!?」っていう緊張感がすごく高まってめちゃくちゃ面白くなった。やってもらったらわかると思うので、まだの方はぜひ遊んでください。 |
| ―― |
海外でもこの夏発売されたばかりの『イカロス』ですが、ヴィクトリーポイントゲームズ社のアメリカ版には何やら特殊カードやゲームボードなど、いろいろついているという噂が……。 |
| 安田: |
……その話、するの(笑)? |
| ―― |
え、ダメでしたか? |
| 安田: |
いや、いいよ。
クニツィーアのゲームは、世界各地でさまざまなゲーム会社から発売されているよね。
実は、今回『イカロス』を出したヴィクトリーポイントゲームズや、『バトルライン(Battle Line)』『アイヴァンホー(Ivannhoe)』を出したGMTゲームズ社みたいなアメリカのウォーゲームメインの会社が出すと、ゲームが複雑化する傾向にあるみたいでね。 |
| ―― |
ほうほう。 |
| 安田: |
僕はクニツィーアのゲームはあんまり複雑化は似合ってないんじゃないかと考えている。さっき例に出したGMTの2作品も、僕は一番最初に出たのが好きだし、僕らが見た範囲では原版の方が簡単明瞭、実にわかりやすく短時間で面白いと思うんだ。 |
| ―― |
シンプルだからこそ、システムの面白さが引き立つ、という感じでしょうか? |
| 安田: |
『イカロス』の日本語版を作るにあたって、クニツィーアからもらったデータがカードとルールだけのシンプルなものだったから、アメリカ版のコンポーネントの詳細情報を見て、最初は僕らもびっくりした。
それでクニツィーアに「アメリカ版こんなんなってるけど、どうしたらいいの?」って聞いてみたんだけど、返事には「君らがびっくりするのはもっともだ。僕はシンプルイズベストだと思ってるので、元のまま出してもらうのが一番嬉しい」と書かれていた。なので、元のままの一番シンプルな『イカロス』を出すことになりました。ぜひ、まずこれで遊んでください。 |
| ―― |
デザイナーご本人も、シンプルイズベスト派なんですね。 |
| 安田: |
もちろん、違ったバージョンを遊んでみたい、特殊カードを入れるとどうなのるかなって気になる方は、アメリカ版と遊び比べてみるのも面白いと思う。
日本語版には、変形の例として「イカロスの墜落」という逆バージョン(数字を小さくしていく競り)というのを掲載しています。クニツィーアに聞いたら、「それくらいの変形はいいよ」って承諾してくれたので。 |
| ―― |
シンプルだからこそ、そのイメージを大切に、ということで箱絵は透明感のある青が美しい相沢美良さんに描いていただきましたね。 |
| 安田: |
相沢さんのイラストはモンコレの頃から青のイメージが本当に美しくてぴったりだと思っていたんだ。東京にごあいさつに行った時にはもうカラーラフをあげてくださっていたり、カードに使われている翼のモチーフなんかもノリノリで描いていただけました。
そこも合わせて堪能していただけたら嬉しいですね。 |
| ―― |
SNE/cosaicから発売したクニツィーア作品は、『ポイズン』『コルセア』、今回の『イカロス』で3作目なわけですが……。 |
| 安田: |
全部タイトル4文字で、おかげさまでどれも好調ですが、なんと第4弾は……! |
| ―― |
4弾は!? |
| 安田: |
ついに4文字を超えてしまった(笑)!
『ロストシティ』という、2人用ゲームの名作を出しますので、期待していてください。
17年ほど前に出て、日本でも有名だし好きな方もいらっしゃると思いますが、今回はKOSMOS社のインターナショナル版をそのままの形で日本語版にします。 |
| ―― |
ものすごく面白いゲームだという噂を聞いているのですが、機会を逃してわたしまだ遊べていなくて。 |
| 安田: |
本当に素晴らしいゲームなんですよ。遊べばきっとこのゲームのすごさがわかる!
訳者あとがきのところにも書いたんだけど、アプリが出ていて、AIが強くて面白いのでぜひそちらも遊んでみてください。
もし遊び方がわからなければ、アプリで遊び方を確認するのもいいでしょうし、アプリで何遍も繰り返し練習してから対人で遊ぶもよし、実際にゲーム版を遊びながらすごいと実感してもらうもよし。 |
| ―― |
じゃあ、発売まではアプリで予習しておきます! |
| 安田: |
2人用のクニツィーアゲームで僕が特別好きなのが、横に広がる『バトルライン』、そして縦に突っ込む『ロストシティ』。この2作が最高だと思っている。そんな『ロストシティ』を、今年11月頃に発売予定です。どうぞご期待ください。 |
| ―― |
楽しみです。さて、クニツィーア作品は膨大な数がありますが、SNE/cosaicでは今後、他の作品は出す予定があるのでしょうか? |
| 安田: |
よくぞ聞いてくれたね! 『ロストシティ』にも書いたんだけど、僕たちは彼の名作をいろいろ紹介したいと思っていて、すでにいくつか予定を組んでいるんだ。
第5弾は来年3月予定の『アタッケ(Attacke)』。別名……こちらはかなり様変わりしているから同じゲームとは言えないかもしれないけど『アイヴァンホー』。『ジェムディーラー(Gem Dealer)』という名前でもリメイクされていますが、それらの原版を。末弥純さんの箱イラストで出します。 |
| ―― |
す、末弥さん!! これまた豪華な箱絵になりそうな予感……(わくわく)。 |
| 安田: |
馬上槍試合のカードゲームなので、末弥さんのイラストがぴったりだと思ってお願いしました。
そして5月には『モダンアート(Modern Art)』『ラー(Ra)』と並ぶクニツィーア三大競りゲームのひとつ、世界的定番の1つである『メディチ(Medici)』を出します。こちらも末弥さんに箱絵をお願いしています。
他にも『ロイヤルターフ』『キング&クラウン(タイムズスクェアの原型)』とまだまだいっぱいあるんだけど、ひとまず来年前半はこの2作が出ますので、楽しみにしていてください。 |