同級生とカレーを食べに行くことになったのだけれど、まさかフォークのことで言い合うことになるとは思いもしなかった。常識的に考えればカレーはスプーンで食べるのが普通なのかもしれない。でもね、ドロドロのカレーとロースカツにさ。キャベツもどっさりとあってね。ご飯やキャベツ、ロースカツもフォークで食べる一石二鳥なやり方に自分は何の違和感もなかったんだ。これからあったことをありのままに話したいと思います。
数分前。
「今日は1番大好きなカレー屋連れてきますね。あのドロドロ感がいいんですよ。おすすめはロースカツカレーですかね」
と自分は嬉しそうに語りながら同級生とゴーゴーカレーに向かっていた。同級生は、
「ゴーゴーカレー聞いたことあるけど食べたことない」
と言った。自分は内心、ゴーゴーカレーを食べたら熱狂的なゴーゴーファンなるんじゃないかとほくそ笑んでいた。渋谷にあるゴーゴーカレーに到着し、自分がおすすめしたロースカツカレーを2人は注文した。
しばらくして店員がロースカツカレーを運んできた。お腹が空いていたのでフォークを手に取り、自分はむしゃぶりつく。この時ばかりは肉食獣と化したのだ。しかし同級生はフォークを見るなり
「フォークありえなくない?」
と言い始めた。おいおい何を言いだすんだ君はと同級生を見ると、冗談ではなく本気の顔で言っていたのだ。
「いやいや、カレーはドロドロだからフォークで大丈夫ですよ」
とフォローを入れたのだけれど同級生は何度も
「フォークありえなくない?」
と言ってくる。そのたんびに自分はルーがドロドロだからフォークで大丈夫と返す。けれども同級生には自分が言っていることが響かないらしく、今度は
「フォークだと食べにくい!」
と言葉を変えて完全に意思表示してきた。
君はこじらせ男子か!
食べる時ぐらい気持ちよく食べたかったのだけれど、同級生は「ありえなくね?」とキャンキャン騒ぐのだった。自分はたしなめつつも胃袋にカレーをつめこむ。もうね、どんだけフォークでカレー食べるの嫌なのかよとびっくりしたんだ。
自分はゴーゴーカレーをフォークで食べるのに何の違和感もなかった。ドロドロのカレーはフォークで対応できるし、キャベツもフォークで食べる。むしろスプーンでキャベツを食べるのこそありえないでしょと言いたい。ロースカツなんてフォークで刺し放題だよ。
何だかんだ言いながらも同級生はフォークでロースカツを食べきった。自分も食べ終わり満腹になったのだけれど心は消化不良を起こしていた。何なんだろう、この違和感。2人はお店を出て夜道を歩く。無言の同級生に自分は話しかけた。
「いや~、ゴーゴーカレー美味しかったですね。どうでした?」
同級生はぼそりと
「フォークでカレーはありえなくない?」
とまた言うのだった。どっかの国ではカレーを手で食べるしさ。ゴーゴーカレーのようにフォークで食べるシステムのところもまだまだ日本にはあるでしょう。
郷に入れば郷に従えじゃないけどさ。カレーをフォークで食べてもいいじゃない、と思う。夜空を見上げると満月が光り輝いている。思わず、ワオーンと叫びたくなった。
後日、学校の教室で同級生が何かを食べている。同級生が何を食べているのか近づいて確認すると、おにぎりを箸で食べていた。自分はすかさず「おにぎり箸で食べるのありえなくね?」とつぶやいた。