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トルコ軍がロシア機を撃墜した。
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馬鹿なことをやっているなあ……と思う人が多いはずだ。テロ事件のあとで、IS 攻撃で結束するべきときに、内輪もめをしているべきではないぞ、と。
しかしそれは勘違いだ。これは内輪もめなんかではない。むしろ、同床異夢というべきだ。
そもそも、ロシアは IS 攻撃の意図など、初めからない。ロシアの旅客機を撃墜されたので、その仕返しに IS を攻撃することは少しはあるようだが、国家の本来の目的は IS 攻撃ではない。つまり、シリアの東部で IS を攻撃することは、もともと目的となっていない。
では何が目的かというと、シリアの西部で反アサド派(反政府勢力)を攻撃することが目的だ。今回も、その作戦行動中の出来事だった。
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ではなぜ反アサド派(反政府勢力)を攻撃することが目的なのか? もちろん、アサド政権を支持するためだ。ではなぜ、アサド政権を支持するのか? ここを、たいていの人は見失っている。ただし、一部の人(事情通)は理解している。こうだ。
「海への出口を持たないロシアは、シリア西部(タルトゥース)に海軍基地を借りている。アサド政権は、ロシアに海軍基地を提供している。だから、この基地の権益を守るために、ロシアは反アサド派(反政府勢力)を攻撃する」
要するに、ロシアはタルトゥースの海軍基地を絶対に失うことができない。これは軍事的に譲歩の余地のない立場だ。それゆえ、アサドがいかに人非人の独裁者であるとしても、ロシアは自国の軍事的権益を守るために、その権益を与えるアサドを支持するしかないのだ。逆に言えば、その権益を脅かす反アサド派(反政府勢力)を攻撃するしかないのだ。
このことを、西側の国々は理解できていない。だから、「ロシアははアサドを政権を支持するな」という自分勝手な要求ばかりをしている。相手の気持ちがわからない馬鹿の見本か。
西側がこのような失敗をするのは、シリアに限らない。ウクライナでもそうだった。
ウクライナは、ロシアにとって、工業的な心臓部だ。旧ソ連時代には、ウクライナは、ソ連圏内で先端工業を受け持っていた。最先端の電子工業や軍事技術などは、モスクワやサンクトペテルブルクでなく、ウクライナが担っていた。特に、ウクライナ東部が。
とすれば、ロシアがウクライナを失うということは、自国の最先端の電子工業や軍事技術などを失うということだ。だからこそ、ウクライナが西側に飲み込まれることを、絶対的に拒否する必要があった。
( ※ 比喩的に言えば、日本の三菱重工が韓国や中国に奪われるようなものだ。あるいは、F35 をつくるロッキードがロシアか中国に買収されるようなものだ。そんなことは、軍事的に絶対に許容できまい。)
というわけで、ウクライナが西側勢力の非合法クーデターで政権転覆させられ、工業地帯を奪われそうになったとき、ロシアとしては軍事的にウクライナを奪還するしかなかった。こうして、ウクライナで内戦が起こった。……これは結局、「ロシアが絶対に失えないもの」を、西側が強引に奪おうとしたことによる内戦だ。無知がもたらした内戦だ、とも言える。
シリアのアサド政権も同様だ。ロシアはシリアにある軍事基地を絶対に失えない。だから、その権益を脅かす反アサド派(反政府勢力)を攻撃するしかない。
そして、ここまで理解すれば、西側がなすべきこともわかる。それは、ロシアを非難することではなくて、ロシアの権益について「現状維持」を打ち出すことだ。つまり、こうだ。
「アサド政権が倒れたあとでも、ロシアには現在の軍事基地を利用する権益を保証する。その権益を、反アサド派(反政府勢力)および米国などが、そろって保証する」
こうすれば、ロシアはもはやアサド政権を支持する理由がなくなる。かくて、アサド政権を打倒することができる。そのあとは、新生シリア政府(現在の反アサド派が主導する政府)が、新生シリア軍を構築して、IS を攻撃することができるようになる。現在のシリア政府軍と、反政府軍が、一致結束して、IS を攻撃できるようになる。かくて、IS を打倒して、テロ組織を壊滅し、「IS 打倒」と「シリア難民発生」という二つを、同時に達成できるようになる。
これが、西側諸国がなすべきことだ。
物事の根源を理解すれば、最高の結果を最小のコストでなすことができる。
ひるがえって、IS 攻撃で内輪もめをするとか、シリア難民を欧州に引き受けるとかは、コストばかりがやたらとかかる割には、効果はとても小さい。
現状は、物事の根源を理解しないがゆえに、とんでもなく間違った道を進んでいる、と言える。
あと、少なくとも、現在の反政府勢力は強力です。
これこれ。
こういう内容を、待ちわびてるんですよ。
やればできるじゃないの。
さすが、自称、東大出身。