ヒップホップ、R&B、B-BOY……1990年代のストリートカルチャーを牽引した伝説的コミック『TOKYO TRIBE2』(井上三太)を原作に、近未来のトーキョーに群雄割拠する“トライブ(族)”たちの壮絶なバトルを描く異色の[バトル・ラップ・ミュージカル]映画『TOKYO TRIBE』。前代未聞のYouTubeによる公開オーディションや、現役ラッパーの参加、トロント国際映画祭への正式出品決定
悩みとか思い出とか忘れさせられるくらいの
── 徹底的に笑わせてもらいました。観ている時間の2/3くらいは笑いっぱなし。
園 いいじゃない、アメリカン・スタイルで。
── こうなんか、ハンパなくバカバカしい、って言ったら失礼ですけど……
園 いや、それなんですよ、僕はそういうのがやりたいんです。日本にはバカバカしい映画が足りない。悪い意味でバカバカしい映画はいっぱいあるんだけど、建設的にバカバカしい映画が全然ないから。アメリカとか、そういう映画って本当楽しいしね。
── 園子温監督の新作、『TOKYO TRIBE』の実写映画化、どちらもかなりインパクトのあるニュースなんですけど、それが合わさった時……「園子温監督が『TOKYO TRIBE』を撮る」って聞いた時は、「えっ?!」「相性はどうかな?」というのが最初の正直な印象で……。
園 いや、僕もこの企画をはじめに聞いた時、自分にはヒップホップ文化もストリートカルチャーもわからないし「どうだろう……?」って思ったんです。だけど、ある人が東京中のイカシたラッパーたちを集めて会わせてくれたんですよ。そしたら奴らは、新宿、練馬、渋谷とか、自分の生まれた場所を守るとか、実際そういうことをやってたんですね。「あぁ、マンガの通りなんだ」って思って……いや、あんな熾烈な喧嘩はしていないけど。で、いろいろ話を聞かせてもらってるうちに「こいつら本人が出ちゃえばいいんだ!」って。で、「みんなラッパーなんだし、ラップやればいい」、「だったら、ラップでミュージカルやっちゃえばいいじゃん!」……そういう三段階ですね。
── 園子温監督と言えば、社会的な事件を題材にした『冷たい熱帯魚』『恋の罪』『愛のむきだし』などのディープな印象が強いんですが、『地獄でなぜ悪い』以降、エンターテイメント作品が続いていますよね?それには何か意図があるんでしょうか?
園 ああ。それは3.11がきっかけなんです。──『ヒミズ』を作ろうとしていた時にあの地震があって、急遽、被災地で撮らせてもらって、それでも足りないって、原発を扱った『希望の国』を撮った。
──その『希望の国』の上映会でね、被災地の方が「すごくよかったよ」「こういう映画作ってくれてありがとう」って言ってくれるんですけど、でも、その顔は泣いてたし、暗い顔だった。
それが結構こたえたんです。それで「あの人たちの笑顔が見られるような映画を作ろう」「やっぱもっと笑えるエンタメなやつを、ガーンっと行こう」と。
── そういう経緯が。
園 やるんだったら徹底的に、と思ってね。「ちょっとだけ社会を風刺して……」とかも無しで。完全に振り切れちゃって、もう何も悩まない、悩みとか思い出とか忘れさせられるくらい気持ちいいものにしようと。それで『地獄でなぜ悪い』みたいな方向に走ったんですね。
── なるほど。それで、次はラップのミュージカルやって笑かそう、と。