26日からアジアBizコーナーをリニューアルし、アジア18の国・地域別にニュースやコラムを一覧できるアジアセクションを新設します。

Financial Times

フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

[FT]ガスプロムの欧州回帰が招く政治的衝突

(1/2ページ)
2015/10/1 16:22
小サイズに変更
中サイズに変更
大サイズに変更
保存
印刷
リプリント
共有

 投資家がこの2年間のガスプロムの戦略を理解しようとしても、頭が混乱してお手上げ状態になるだけかもしれない。それも無理はない。

 ロシアの国営ガス会社ガスプロムは昨年の大半を通じてアジア寄りに向きを変え、最大の輸出市場としてきた欧州に冷たくなっているように見えた。しかも、その理由はウクライナをめぐる東西間の緊張だけでなかった。

 ガスプロムは、欧州連合(EU)から独占禁止法違反の疑いと、いわゆる「第3次エネルギーパッケージ」を同時に突きつけられていた。後者は市場自由化の法令だが、ガスプロムの見るところ、それは欧州内のガスインフラを支配させまいとする動きだった。

 ロシア政府は昨年5月、長年の懸案だった中国へのガス供給契約を結んだ。続いて12月にはガスプロムが、ロシアの天然ガスを黒海海底経由で欧州中心部まで運ぶパイプライン計画「サウスストリーム」を撤回した。ガスプロムは代替計画として、トルコ経由でEU圏との国境まで通じる「トルコストリーム」計画を発表した。その先は欧州側に委ねることになる。また、ガスプロムはドイツのBASFとの資産交換も取りやめた。ガスプロム側はドイツでの天然ガスのトレーディング事業と天然ガス貯蔵設備を得る内容だった。

 しかし、「トルコストリーム」をめぐる交渉が停滞し、中国との契約も疑問が提起されるなか、ガスプロムは再び欧州側に向き直っている。ガスプロムは9月4日、バルト海経由でロシアとドイツを結ぶ巨大ガスパイプライン「ノルドストリーム」に2つの支線を共同建設することでBASF、エーオン、ロイヤル・ダッチ・シェル、OMV、エンジーと合意した。

 この2支線が加わるとノルドストリームの輸送容量は2019年までに倍増し、現在のロシアの欧州向けガス輸出量の3分の2の水準に達する。ドイツの国内需要を超える量であり、したがってドイツはロシアの欧州向けガスの中継(ハブ)拠点となる可能性がある。ガスプロムは、この可能性を強調するようにBASFとの資産交換を復活させた。

■ロシアの孤立を終わらせる

 ガスプロムは9月、EUの法的権限を認めようとしなかった姿勢を改め、独禁法違反問題でEUの欧州委員会に歩み寄る意向を示唆した。

 一連の動きは、ロシアの孤立を終わらせ、ウクライナ関連の経済制裁に巻き返しを図ろうとするロシア政府のより大きな動きにつながっている可能性がある。また、特にドイツ企業がロシアとのビジネスを取り戻したい意向の強さも映し出している。ドイツ政府の暗黙の了解もあるようだ。

 IHSエナジーでロシアのエネルギーを専門とするセイン・グスタフソン氏は、曲折を経てはいてもガスプロムはしばらく前から、変化する欧州市場で地位を守る戦略を模索していると言う。

  • 前へ
  • 1ページ
  • 2ページ
  • 次へ
小サイズに変更
中サイズに変更
大サイズに変更
保存
印刷
リプリント
共有

電子版トップビジネスリーダートップ

【PR】

【PR】

Financial Times 一覧

フォローする

Myニュース

有料会員の方のみご利用になれます。
気になる連載・コラムをフォローすれば、
「Myニュース」でまとめよみができます。

英海軍の隊員が戦艦「HMSブルワーク」のデッキに整列(23日、マルタの首都バレッタ)=ロイター

ロイター

[FT]英、空洞化した軍事力 回復に小さな一歩(社説)

 デービッド・キャメロン英首相が発表した2回目の戦略防衛・安全保障レビューは、初回とはかなり異なる調子で書かれている。2010年発表の初回のレビューでは、首相は英国軍の規模の思い切った縮小に乗り出し、…続き (11/25)

G20首脳会談前にオバマ米大統領=左=と話すロシアのプーチン大統領(15日)=AP

AP

[FT]ロシアとの関係を修復すべき理由

 パリ同時テロの後、2枚の写真が国際政治の変化について強力なメッセージを発した。その1枚は、米国のオバマ大統領がホテルのロビーでロシアのプーチン大統領と背を丸めて話し込んでいる写真だ。両者が前回会談し…続き (11/24)

米ニューヨークにあるファイザー。本社をアイルランドに移すとしている=ロイター

ロイター

[FT]クリントン氏、ファイザーの合併を非難

 米製薬大手ファイザーの最高経営責任者(CEO)は米政府に対し、ダブリンに本社を置くアラガンを1600億ドルで買収することへの支持を求めた。ヒラリー・クリントン氏をはじめとする政治家は同社の海外移転に…続き (11/24)

新着記事一覧

最近の記事

【PR】

リーダーのネタ帳

[PR]