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【戦後70年】
薄れゆく「火垂るの墓」の“面影”神戸の御影公会堂が改修 舞台の建物は相次いで取り壊しや改修
作家、野坂昭如さんの小説で、アニメ映画にもなった作品「火垂るの墓」に登場した神戸市立御影公会堂(同市東灘区)が老朽化のため改修されることが決まり、作中に登場する姿をしばらく眺められなくなる。今年7月から西宮回生病院(兵庫県西宮市)の旧病棟が取り壊されるなど「火垂るの墓」ゆかりの施設は相次いで失われている。御影公会堂についても「改修したら今の面影がなくなるのでは」とファンからは不安の声もあがっている。
「火垂るの墓」は野坂さん自身の戦争体験に基づいた物語。昭和20年の神戸空襲で大きな被害を受けた神戸市や西宮市を舞台に、終戦前後を懸命に生きる主人公とその妹を描いている。
同8年に建てられた御影公会堂は、作中で空襲で焼け野原となった街を、兄妹が眺めるシーンに、焼け残った建物として登場する。平成7年の阪神大震災でも倒壊を免れ、「火垂るの墓」ゆかりの建物の一つとしてファンや地元住民に戦争の記憶を伝えている。
しかし、20年に耐震強度を満たしていないことが判明。神戸市は約16億円かけて、大規模な改修工事を実施することを決めた。来年春に着工し、29年春に完了する予定。
工事では耐震性を高めるため壁を厚くする。このため、工事期間中はほとんど建物はシートで覆われ、外観を見ることができなくなる。また、地元住民らからの要望で、市は「外観は変えない。外壁のタイルも今の色に近づける」としているが、「現在の面影がどの程度残るか分からない」と不安の声もあがる。
「火垂るの墓」には、歩いている兄妹の横を路面電車が走る夙川橋(西宮市)や、主人公が亡くなる国鉄(現JR)三ノ宮駅(神戸市中央区)など阪神間の建築物が多く登場するが、年月の経過とともに改築され、当時の面影は残っていない。
また、作中で主人公が妹を安心させるため、空襲で亡くなった母が入院していると嘘をついたシーンで現れた西宮回生病院の旧病棟も老朽化(明治40年建設)のため取り壊され、来年8月に5階建ての新病棟に生まれ変わる。