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「或る」列車、なのにこの存在感。
或る日、1通のメールが。列車旅を好む同志からのお誘いだが、内容がすごかった。
「JR九州のあのスイーツ列車、キャンセル待ちのチケットがとれました。一緒にどうですか?」 実感が沸くのにしばらくかかった。だって、あの列車って、「或る列車」、ですよ。 > 個人サイト オツハタ万博 誰も見たことのない場所へ「或る列車」とは、デザイン性の高い数々の列車で知られるJR九州の、今年繰り出してきた豪華スイーツ列車である。
JR九州の前身「九州鉄道」が発注していたにも関わらず活躍する機会のなかった、アメリカ製の豪華客車。その幻の列車を、ご存知JR九州のデザイナー水戸岡鋭治氏がスイーツ列車として現代に誕生させたのだ。この話だけで1本の映画ができそうである。 さてせっかくの機会、ここぞとばかりに記事化しようと、JR九州の広報さんに連絡をとったところ、資料写真として数枚の高解像度の写真が送られてきた。まずは心の事前準備として見ていただこう。これが、「或る列車」だ。 ウォールナット材を多用した、落ち着いた雰囲気のコンパートメント(個室)車内。たまに遭遇する古い車両の床に「木だ!」と驚くのとは違う意味の「木だ!」である。(写真提供:JR九州)
こちらはメープル材を用いたテーブル席の車内。細長い部屋なのでかろうじて列車内だとわかるが・・・。(写真提供:JR九州)
外観。もともとは廃車となっていた気動車(ディーゼル車)を、ここまで改造したものなのだ。列車界にも「匠」がいる。(写真提供:JR九州)
そして、ここからが本番の記事である。上の写真を見てお腹いっぱいになっている場合ではないのだ。順に旅を追っていこう。
その旅の同志・漫画家のヤスコーンさんと博多駅で落ち合い、特急「ゆふいんの森」(さりげなく自慢ポイントを混ぜる)で大分は日田駅へ。ここから大分駅までの約2時間20分が、今回の「或る列車」の行程なのだ。 日田杉を使った、気の利いた撮影スポットが。ここは撮っとこう。
駅ホームにはここが下駄の産地であることをアピール中のデカ下駄が置かれている。
盛り上がって参りました。
とは言え、クルーズトレイン「ななつ星」の停車位置を見つけ思わず浮気(撮影)してしまう私たちだ。
謎の白い布のかかった物体がホームに。
「或る列車」に積み込む食器類だった。舞台裏に早くもリーチ!
やがて、15時前の発車に合わせ、当該列車がしずしずと私たち乗客の面前においでなさった。おお、黄金色に輝いてらっしゃる……。
「おぉ、これからまさにアレに……」という顔で皆さん車体を撮影。
「やんごとなき」「いみじき」など思いつく限りの高貴な形容詞が頭を駆け巡る。
やんごとなきハート型。
やがて止まりたまふ。
つい息を呑んで見守ってしまった。というのはウソで、カメラが取り出せず急いでiPhoneで連続撮影、というあわただしさだった。だが堂々たる登場シーンなので、ここに全コマを載せてみた。
乗車口に向かう。すると、先ほどの金色の車体が目の前に出現なされた(どうしても丁寧語を使ってしまう……)。 い ら っ し ゃ る !
つやっつや。「Sweet Train」の「S・T」のハートの組み文字が麗しい。
こんな、連結部の外幌にもロゴが。凝ってますなあ。
金のベースに黒を差し色として、余すところなく「或る列車」たるべくデザインされている。いたるところにデザインが施され、その数は確かに膨大なのだろうけど、それらが一体となってドドッと迫って来て、それへの驚き自体が心地いい。
この列車からは「車両」とか「ディーゼル」といったワードは掻き消え、「夢」とか「楽しさ」というワードしか伝わってこないのだ。 唐突に現れる、土地の偉人系ゆるキャラ「たんそうさん」。国内最大の私塾を懸命に作ったら、わしゃ後世でキャラになったよ。
さていよいよ搭乗である。自分の名前を係の方に告げる。
そう、この列車は時刻表に載っておらず、ツアー商品として旅行会社でしか手配できない列車なのだ。 ヤスコーンさんに「よく取れたね!」と言ったら、「ダメもとでふと、キャンセル待ちを聞いてみたらたまたま空いてた」と言う。なんという強運かと思ったが、彼女はたまにそういうことがあるそうだ。「ふと思い立ったときに問い合わせると取れてしまう」。地味にうらやましい能力使いだ。 なんだか内部もすごいことになってる……(ざわつく周囲)。
では、チケット入手困難な未知の列車へ、いざ乗らん。
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