2015年11月24日(火)

災害時の貴重な情報源、地域ラジオ広がる 機動性強みに地元と連携

朝霞市にあるコミュニティラジオ局の「すまいるエフエム」

 地域に密着した情報を提供するコミュニティラジオ局の開局や放送地域の拡大が県内で相次いでいる。9月に「エフエムかわぐち」が開局、来春には「こしがやエフエム」が開局予定で、「レッズウェーブ」の愛称で知られるシティーエフエムさいたま(さいたま市浦和区)は放送エリアをさいたま市全域に拡大した。

 県内では現在5局が運営。特に注目されているのは、災害や防犯情報の発信だ。自治体と防災協定を結んだり、県警との連携を検討する局もある。

 コミュニティラジオ局は大災害があった翌年に新規局が増える傾向にある。総務省によると、阪神大震災の翌年の1996年に37局、97年に25局、98年に30局、新潟県中越地震の翌年の2005年には14局、06年に16局、07年に18局が新規に開局した。10月1日現在、全国でコミュニティラジオ局は294局ある。

 11年の東日本大震災では、災害時に被害を軽減することを目的に臨時で設置される臨時災害局が岩手、宮城、福島の3県で26局(16局は既に廃止)立ち上がり、9月の関東・東北豪雨でも茨城県常総市などに臨時災害局が設置された。

 インターネットの普及により普段は簡単に情報が手に入るが、災害により情報通信インフラが壊滅的な状況になれば、ラジオは貴重な情報源になる。さらに地元の細かい情報に対応できる機動性はコミュニティラジオの最大の強みだ。

 朝霞市の「すまいるエフエム」は朝霞、志木、和光、新座市と防災協定を結ぶ。柏木恭一社長は「僕らは小さいがゆえに大きく発信はできない。大きいメディアはどんな被害があったかを外に発信するが、僕らは逆で被災地だけの情報に特化できる」と話す。

 柏木社長は東日本大震災の直後から数週間にわたり、電車の始発前にJR北朝霞駅などに行き、運行状況に関する張り紙を見てラジオで流した。「ネットに運行時間が出ていたが実際は違った。駅に行って張り出しを見るのが一番正確」と地元の情報を足で集める。

 災害時の自治体からの情報伝達の一つは防災無線だが、9月の関東・東北豪雨では雨で防災無線の音が聞こえないなど、情報伝達の難しさが浮き彫りに。熊谷で6人が殺害された事件でも防災無線の運用方法で疑問の声が出た。

 柏木社長は「防災無線の限界や不利な点は当然ある。聞こうと思うと聞こえないし、何か言っているな、じゃあラジオをつけようという連動があればいい」と自治体との連携強化を強調した。

 さいたま市と防災協定を結んでいるレッズウェーブは熊谷の事件後、防犯情報について県警と連携していくことを確認したという。

 こしがやエフエムの越野操社長は「越谷は(13年に発生した)竜巻を経験し、9月の水害でも駅が冠水するなどの被害が出た。災害など緊急時の情報伝達が大事」と言う。緊急時には越谷、吉川、八潮、三郷、草加市、松伏町の5市1町に放送区域を広げる予定で「情報をしっかり伝えたい」と話した。

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