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子会社の“損失隠し”で東芝が迫られる減損圧力

週刊ダイヤモンド編集部
2015年11月25日
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東芝が、ついに子会社の米原子力最大手、ウエスチングハウス(WH)について、過去の減損を公表した。これまで巨額損失を開示していなかったが、批判が高まったことで、ようやく適時開示した。今後焦点となるのは、東芝本体の減損だ。(「週刊ダイヤモンド」編集部 森川 潤)

 「もはや再起不能かと思った……」。東芝幹部は思わずこう漏らした。

目下、原油価格下落もあり、ウエスチングハウスの原発の新規建設に明るい兆しはない Photo:REUTERS/アフロ

 11月17日に、東芝が、東京証券取引所からの指摘を受け、ようやく公表した子会社の米原子力最大手ウエスチングハウス(WH)の巨額減損。12日に、WHの減損について、内部告発に絡む報道が出て以来、東芝社内ではのっぴきならない空気も漂っていた。

 それもそのはず。東芝自身がこれまで「事業は順調」と何度も強調してきた会社が、1000億円を超える巨額損失を計上していたのだから、誰が見ても「ウソ」「隠蔽」といった言葉が浮かぶ。東芝幹部らは、その間、苦しいつじつま合わせに追われていたのだ。

 東芝は17日の適時開示で、WHが2012年度、13年度の2年間で計約13億2000万ドル(当時の為替レートで約1156億円)の損失を計上していたことを公表するとともに、「意図的に損失を隠したわけではない」と釈明した。

 理由としては、減損したのは有価証券報告書に記載された子会社であるWH単体ではなく、WHグループ全体だったので、「開示基準に当たらないと判断していた」(東芝)のだという。そして、東芝本体の減損については「認識されなかった」とあらためて強調した。

 だが、本誌では8月1日号(緊急特集「不正会計に潜む真のリスク 東芝 終わらざる危機」)から再三指摘しているように、東芝社内でもこの“弁明”を額面通り受け取る向きは少ない。

 今回の問題では、東芝が06年に買収したWHの「のれん」が問題視されている。東芝とWHは買収時に、買収額と資産価値の差額として29億3000万ドル(同約3500億円)をのれん代として計上していた。だが、11年の福島第1原発事故で事業環境が悪化する中、東芝が買収時に掲げていた「15年度に売上高1兆円」という目標は遠くに消えてしまった。

 これにより、当初見込んでいた収益力が落ち、資産価値が減じたと捉えるのが当然だろう。のれん代は、米国の会計ルールによると、減損の兆候があれば、回収可能額を測定し、帳簿価格と比較する減損テストをしなければならない。

 WHでは、この減損テストについて、四つの事業分野ごとに実施しており、12~13年度については「新規建設」の分野などで減損することになった。これが今回の1000億円を超える巨額の損失だ。だが、他の事業分野の価値は維持されていることから、「WH事業部全体としては、減損は認識されなかった」として、東芝本体の連結決算には反映しなかったのだ。

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