(2015年11月24日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

英、イラクで初めてイスラム国を空爆 重火器陣地などを破壊

キプロス・リマソール近郊のアクロティリ英軍基地で離陸準備中の英空軍のトルネードGR4戦闘機〔AFPBB News

 デビッド・キャメロン英首相が発表した2回目の戦略防衛・安全保障レビューは、初回とはかなり異なる調子で書かれている。2010年発表の初回のレビューでは、首相は英国軍の規模の思い切った縮小に乗り出し、国防費を実質ベースで8%削減した。しかし、ジハード(聖戦)主義者のテロリストや、予測のつかない行動を取るロシアからの脅威が強まっている今、キャメロン氏は従来型の保守党のそれに近いスタンスに回帰している。

 パリへの攻撃から1週間あまりというタイミングで公表されたこともあり、これまでよりも力強い首相のアプローチは世間のムードと調和している。

 この5年間は政府が軍を無視しているのかのように見えることも多く、修正が必要だった。

 キャメロン氏は賢明にも、英国はほかの国家からの脅威に対抗する従来型の防衛に資金を投じるか、それともテロに対抗する手段に資金を投じるべきかという選択はできないことを、自らの原則として受け入れた。英国は両方やらなければならないのだ。

 今回の防衛レビューは、英国が直面する複雑な困難にいくらか取り組んでいる。その中核にあるのは、今後10年間における国防装備予算の120億ポンド増額だ。ここには、ロシアの潜水艦の脅威に対抗する海洋哨戒機9機の購入予算が盛り込まれている。イラク・シリアのイスラム国(ISIS)などのテロ対策予算も30%引き上げるという。

 今回のレビューは、5年前のお粗末で拙速な規模縮小がもたらしたギャップの一部を埋めるものだ。例えば、英国の空母戦能力の回復は、新しい空母2隻に乗せるF35戦闘機の調達を前倒しで進めることで加速される。陸軍が外国に派遣できる兵士の数も、2025年までには3万人から5万人に増える。

防衛レビューの強い口調ほど大きな変化はない

 これらはいずれも歓迎すべきことではあるが、今回のレビューは、キャメロン氏の強気な口調が暗示するような国防力の急激な向上をもたらすものではない。むしろ、「この針路を保って進め」という文書と見なした方がいいだろう。前回の2010年のレビューでも、国防費は2015年まで急激に削減されるが、その後は2020年にかけて増えると見込まれていた。その点において、レビューは前回から今回にかけてほとんど変わっていない。

 また、政府は国防費を国民所得の2%相当額――北大西洋条約機構(NATO)の基準――に維持しているが、これは会計上の手法による部分が大きく、新規の支出で達成できているわけではない。