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元大使・天木直人氏「中東の不条理は武力では解決できない」

――日本人はどうしても「テロとの戦い」を欧米の視点で捉えがちです。

 ISのこれまでの発言にあるのは、植民地支配に対する抵抗なんです。第1次世界大戦後にサイクス・ピコ協定(英露仏で結ばれたオスマン帝国の分割)で支配され、第2次大戦後には米国がイスラエルを通じて中東を支配した。ISは新旧の帝国主義者に対して歯向かっているわけです。これに新旧帝国主義者は空爆でもって武力で抑え込もうとしているという構図。つまりISの敵は、この新旧帝国主義者とこれに追随してアラブを裏切ったサウジアラビアやヨルダンなど親米国家で、その他の国はほとんど無関係なんです。

――そういう意味では、日本も無関係ですよね。

 G8の主要国でISから本来、憎まれない国は唯一、日本なんですよ。イラク攻撃でブッシュをあそこまで応援した小泉さんの時に、アラブを失望させたことは事実です。しかし、失望させたことと敵に回すことは別で、敵ではなかった。ところが「有志国連合の一員としてISと戦う」など、安倍さんの一連の言動で、完全に敵だと見なされてしまった。日本は歴史的な認識が欠如した大きな間違いを犯したというのが私の見解です。日本が安倍さんではない首相で、「テロはもちろん間違っているけれど、武力では解決しない」と発言していれば、ISは日本を敵視しなかったでしょう。もちろんだからといって、ISが戦いをやめる保証はないですよ。だけど、そう発言していれば、日本は世界でいま一番指導力を発揮できる国になり得たでしょう。
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