アフィリエイターは年の途中で承認申請書を出しても今年から青色申告できますか?

あおい「?」「アフィリエイト収入が予想より多くなって10月に青色申告承認申請書を出すけど、『今年』から青色申告はできるの?」

青色申告承認申請書の提出期限に関するブログ記事はよく見かけますが、この質問への回答は一筋縄ではいかないため、非常に危険です。

この質問に対する答えというかパターンはあります。

3月15日までに申請していればOK

青色申告承認申請書の提出期限は2つです。

  1. 青色申告書による申告をしようとする年の3月15日まで
  2. その年の1月16日以後、新たに事業を開始したり不動産の貸付けをした場合には、その事業開始の日から2月以内

原則は1番目ですので、その年の3月15日までに提出していれば、問題ありません(平成27年3月15日は日曜日のため、16日までOKでした)。

しかし、今回の質問のように3月16日以降に申請書を提出しようと思ったら、原則には当てはまりません(平成27年は3月17日以降)。

そのため、2番目の「事業開始の日から2月以内」に該当するかどうかが重要になってきます。

3月16日以後に提出する場合

さて、「その年の1月16日以後、新たに事業を開始したり不動産の貸付けをした場合には、その事業開始の日から2月以内」となっています。

つまり、3月16日以後に提出する場合の話ですが、問題は、「新たに事業を開始したり不動産の貸付けをした場合」の部分です。

1.青色申告承認申請書が確実にNGになる場合

これだけはハッキリしているのですが、もし、平成26年までに「事業所得の白色申告」や「不動産所得の白色申告」をしていると、既にあなたは事業をしていることになります。

このため、例えば、平成27年10月から開業届を出したとしても、「新たに事業を開始したり不動産の貸付けをした場合」には該当しません。

  • 平成26年:事業所得で白色申告
  • 平成27年:3月15日までに申請書を提出しないとアウト

というわけです。

これについては、裁決事例(国税不服審判所というところで税務署と争った結果)でいくつもアウトにされています。

裁決事例 平成20年9月16日裁決(利益の発生が期待できない不動産の貸付けであっても不動産所得を生ずべき業務に該当することから「新たに業務を開始した場合」に該当しないとした事例)

平成27年10月から事業を開始したと思っていても、実際には、平成27年分はNGのため、青色申告ができるのは平成28年分からです。

平成28年3月15日までに、申請書を提出することになります。

2.サラリーマンを辞めて専業アフィリエイターになった場合

「私は平成27年10月から専業アフィリエイターとしてやっていきます。9月まではサラリーマンだったので、収入のメインは給料でした。退職して、10月からはアフィリエイト収入が私のメインの収入になるので、平成27年10月1日を開業日として、それ以降は青色申告します」

という場合ですね。

つまり、同じアフィリエイト収入なのですが、9月までと10月以降とでは立場が違います。

  • 平成26年:サラリーマンの副業=雑所得で申告
  • 平成27年9月まで:サラリーマンの副業=雑所得で申告
  • 平成27年10月以降:本業=事業所得の青色申告

というわけですね(繰り返しになりますが、平成26年に既に事業所得で白色申告をしているときは「1」になります)。

なるほど、これなら10月から事業所得・青色申告とすることも考えられます。

この場合は、説明しやすいところです。

ただ、実はこのパターンは私も少し迷うところがあって、知り合いの税理士とディスカッションをしていたのですが、事業所得とは何か、という過去の判例で説明するのはどうか、というのが1つの案でした。

過去の判例では、

  1. 営利性・有償性の有無
  2. 継続性・反復性の有無
  3. 自己の危険と計算における企画遂行性の有無
  4. 精神的あるいは肉体的労力の程度
  5. 人的・物的設備の有無
  6. 職業(職歴)・社会的地位
  7. 生活状況
  8. 業務から相当程度の期間継続して安定した収益が得られる可能性があるか

といった観点から事業所得とは何かについて判断されました(ただし、雑所得ではなく、給与所得との区別だったため、個人的には微妙な判例です)。

副業であっても本業であっても、1番目~5番目なんかは変わらないのです。

そもそも、アフィリエイトっていうのは最初は数円単位から数十円、数百円、数千円、数万円・・・とだんだんふくらんでいくため、雑所得と事業所得の境目がありません。雑所得から事業所得のグラデーションみたいなものです。

どこまでが雑所得で、どこからが事業所得かを決められないんですね。

しかし、6番目や7番目の観点は大きく異なります。つまり、サラリーマンの給料で生活しているか、専業アフィリエイターの収入で生活しているかってことです。

そういうわけで、平成26年に雑所得で申告しているのであれば、平成27年3月16日以降に申請書を提出した場合であっても、事業開始した日から青色申告が可能ではないか、というのが結論です。

まあ、この点は、税務署の担当者によって判断が分かれる可能性があるので、理論武装しておきたいところです。

なお、年の途中で青色申告になるとしても、それまでの分が「事業所得の白色申告」になるなんてことはありません。

つまり、

  • 平成27年9月まで:事業所得の白色申告
  • 平成27年10月以降:事業所得の青色申告

はできないということです。

これだと、1月に既に事業を開始していることになってしまいますからね。

3.サラリーマンのままで青色申告をする場合

サラリーマンアフィリエイターが、今年はどうやら収入が増えてきたので、ここらで青色申告承認申請書を出してみようか、と思った場合はどうでしょうか?

このパターンが1番リスクが高い

専業アフィリエイターとは違って、あくまで本業は維持されるため、先ほどの理屈が通用しません。

  • 平成26年:サラリーマンの副業=雑所得で申告
  • 平成27年9月まで:サラリーマンの副業=雑所得で申告
  • 平成27年10月以降:サラリーマンの副業=事業所得の青色申告?

9月までと10月以降では、その内容が変わってないわけです。

それなのに、いきなり開業届を出したから「自分は個人事業者だ。事業所得だ」と言って、はたして通るのかと言えば、個人的にはリスクが高いなあ、と感じるところです。

開業届に対する誤解

「開業届を出したら個人事業者になる」という誤解がありますが、開業届は事業を開始したら出して下さいね、と書いてあるだけです。

所得税法第229条(開業等の届出)
居住者又は非居住者は、国内において新たに不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業を開始し、又は当該事業に係る事務所、事業所その他これらに準ずるものを設け、若しくはこれらを移転し若しくは廃止した場合には、財務省令で定めるところにより、その旨その他必要な事項を記載した届出書を、その事実があつた日から1月以内に、税務署長に提出しなければならない

事業を開始 ⇒ 開業届の提出義務

という一方通行の関係であり、その逆については何も言っていません。

開業届を出して、「それって本当に事業なの?」と引っくり返された事例は存在します。

例えば、架空の事業所得で赤字を出して、給与所得と損益通算をしたようなものです。

開業届を出していても、それは事業所得ではない、ただの雑所得だとして引っくり返されました。

したがって、仮に3月15日までに提出していたとしても、事業ではないもの事業所得にすると、リスクが残ります。

また、開業届を出さないと青色申告承認申請書が受け付けてもらえないという誤解というか、ハッキリ言い過ぎているものもよく見かけますが、青色申告承認申請書の提出の条件に、開業届の提出の有無はありません。

事業を開始 ⇒ 開業届の提出義務+青色申告承認申請書の提出可能

という関係があり、両方同時に出すことが多いだけです。

実際、開業届を出さずに青色申告承認申請書だけ出している方はたくさんいます。開業届の提出をしないことによる罰則はないので、問題はないといえばないのですが、融資や公的手続きの際に開業届を求められることも多いので、個人的にはちゃんと出すべきと考えます。

まとめ

ここで一旦まとめると、平成27年分から

【1】3月15日までに申請していればOK

⇒ただし、サラリーマンアフィリエイターの場合は、そもそも事業所得なのか?という疑問は残ります。

【2】3月16日以後に提出する場合

1.青色申告承認申請書が確実にNGになる場合

⇒平成26年に事業所得(または不動産所得)で白色申告をしている場合

2.サラリーマンを辞めて専業アフィリエイターになった場合

⇒途中まで雑所得、途中から事業所得・青色申告

3.サラリーマンのままで青色申告をする場合

⇒リスク高い

と考えます。

言わなくても大丈夫だと思いますが、法令解釈や実務に即して言っているとはいえ、アフィリエイトについては国税庁の公式見解や判例・裁決事例がまだまだ出ていないので、あくまで、私の個人的な考えである点は、ご了承ください。

平成27年分、全部OKという税務署の指導には「?」

さて、実は、続きがあって、10月に税務署に行ったら、「1月から収入も経費があるんです」と伝えたところ、じゃあ、開業日は「平成27年1月1日」にして、青色申告承認申請書も「平成27年分」から青色申告しますと書こうか、と担当者から指導を受けた話もあります。

これについては、知り合いの税理士と「ありえん」と言っていたのですが、意外とそういう報告が多いです。

しかも、「開業日前の分も含めて青色申告してください」と指導している場合もあって、とても違和感があります。

「開業日前の分」ってどういうこと?

まあでも、そんな税務署の担当者もいるから意外と通っちゃうんじゃないの、とか、後で税務調査があったら税務署の担当者に指導されたと言っても通用しないよ、とか活発な議論があったことはご報告させていただきます。

私の場合

さて、最後に私の場合はどうしたかということを書きたいと思います。

  • 平成25年分 雑所得
  • 平成26年分 雑所得 
  • 平成27年分 事業所得・青色申告

です。

本業ありのサラリーマンです。

正直なところ、平成27年は青色申告にするか悩みました。

青色申告承認申請書を提出したのは平成27年3月9日で、ちょっとギリギリでした。それくらい悩んでました。

なんで悩んだかというと、仮に3月15日に出したとしても、そもそも事業所得なのか?という疑問が少しあったからです。

この点は、さすがにアフィリエイト収入がサラリーマンの収入を超えていたら文句ないだろうと思ったので、1月と2月の収入を見て、提出しました。

まあ、売上200万円とか300万円でも事業所得・青色申告で出しても特に何も言われない方がほとんどかと思いますので、そこまで考える必要ないのかもしれませんけどね。

合わせて読んでいただきたいサイト・ブログ

FPウェブシュフ|青色申告開始手続きまとめ

アフィリエイトで青色申告を受けたい

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あおいのつぶやき

あおい「!」「なんだか難しいなあ。まあでも、アフィリエイトが認知されていないこと自体が、参入障壁なんだけどね」

クロネ

著者:クロネ

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