【萬物相】人間「金泳三」

【萬物相】人間「金泳三」

 故・金泳三(キム・ヨンサム)元大統領(以下、YS)の名前を聞けば、断食、失言、ジョギング、カルグクス(韓国式うどん)など数々のエピソードが思い起こされる。報道関係者たちの間でも彼の人間的な側面はいつも話題になっていた。1993年に金融や不動産の実名制導入を突然発表した時のことだ。YSがテレビカメラの前で談話を読み上げていると、急に大統領府報道官が血相を変えて近づいてきた。ケーブルがつながっていないため中継が行われていないということだった。あらためて準備を行う間、怒りを押し殺すかのようにYSは肘掛けをきつく握りしめていた。しかしその場は怒りを爆発させず最後まで耐え抜いた。

 しかしYSが完全に切れてしまうと本当に恐ろしく、取りあえずその場を立ち去る以外に方法がないとよく言われていた。就任直後にゴルフ禁止令を出したにもかかわらず、当時大統領府で総務首席秘書官を務めていた洪仁吉(ホン・インギル)氏がゴルフをしていたことが分かった。このゴルフについてはある新聞に風刺画まで掲載された。洪氏はしばらくYSの顔を避け、1週間後に会議に出席した時もYSの顔を見ることができず下を向いていた。この会議が終わるとYSが「ちょっと来い」と言って洪氏を呼んだ。緊張した面持ちでYSの前に立つと、YSはテーブルに脚を乗せて「特に変わったことはないだろうな? しっかりやれよ」と言ったそうだ。

 YSが民主自由党の代表を務めていた頃、大統領府で開催されたある国の外交使節を歓迎する行事にYSが招待された時のことだ。「YSの永遠の秘書」と呼ばれる金基洙(キム・ギス)氏は事前にYSに「この行事にはえんび服を着て出席してください」と伝えていた。ところが実際に会場に行くと出席者は皆普通のスーツ姿だった。一人えんび服を着てやって来たYSは何もなかったように振る舞い、行事は無事終えた。すると自宅に向かう途中、車が漢江大橋にさしかかるとYSは金基洙氏に「お前、漢江に飛び降りるか」と言った。金基洙氏はYSが側近に対してどのように怒りを示すかよく知っている。金基洙氏はこれまで35年以上にわたりYSと共に過ごしてきた。

姜仁仙(カン・インソン)論説委員
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