インドのナレンドラ・モディ首相はイスラム教徒について、これほど扇動的なことは言ったことがないが、長年、反イスラムの偏見と暴力を容認してきたと批判されてきた。首相に就任してから最初の数カ月間は、経済改革に集中することで、一部の批判派を安心させた。
だが、この数カ月は、同氏の率いるヒンドゥー民族主義政党・インド人民党(BJP)のメンバーが反世俗、反イスラムの発言を強めており、牛肉を食べたとされるイスラム教徒の男性のリンチ殺人が全国ニュースになった。
欧州では、パリのテロ攻撃の前でさえ、難民・移民危機が反イスラムの政党や社会運動の台頭を煽る一因となっていた。ドイツが中東からの難民に門戸を開放すると、こうした移住者の宿泊施設に対する暴力的な襲撃事件が増加した。フランスでは、来月の地方選挙で極右政党の国民戦線(FN)が大きく議席を伸ばすことが広く予想されている。
米国でも反イスラム主義的な発言が増えており、大統領選指名争いの共和党候補の間では当たり前になっている。共和党員を対象とする多くの世論調査でリードするベン・カーソン氏は、イスラム教徒が米国大統領になることは許されるべきではないと述べた。ドナルド・トランプ氏は、米国への入国を認められたシリア難民は皆、強制送還すると語った。
イスラム世界と非イスラム世界が入り混じる現実
北米、欧州、中東、アジアでのこうした展開が重なり、文明の衝突という考えを煽っている。だが、イスラム世界と非イスラム世界は地球全体で入り混じっているというのが現実だ。
多文化主義はナイーブな自由主義の願望ではない。それは現代世界の現実であり、うまく回るようにしなければならない。それ以外の唯一の道は、さらなる暴力と死と悲しみだ。