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物流企業
2015/07/13

常磐道・6号が使えない… 荷主、トラ事業者に迂回要請 風評被害リスク回避

t.kokudo
物流ニッポン

 荷主の指示で、常磐道や国道6号が使えない。風評被害を何とかして欲しい――。こんな悲鳴とも取れる声が、東北の太平洋沿岸部のトラック運送事業者から聞こえてくる。(黒田秀男)
 東日本大震災による東京電力福島第1原発事故により、福島県沿岸部の国道6号は通行止めになり、常磐自動車道も建設工事がストップしていた。ようやく2014年9月に国道6号、今年3月には常磐道が全線開通。事業者にとっては、従来の内陸部の東北自動車道、国道4号といった大動脈に加え、沿岸部の幹線道の開通で道路選択の幅が広がり、輸送の効率化やコストダウン、利便性の向上など大きなメリットを享受するはずだった。
 しかし、荷主の反応は違った。「(国道6号を含め)常磐道は、なるべく通るな」「原発事故の被ばく地区には近付くな。迂回(うかい)しろ」。輸送条件として、こうした要請や指示を出している荷主が少なくないという。
 そのため、宮城県など沿岸部の事業者が常磐以南や京葉地区へ輸送する際は、遠回りとなる東北道や国道4号を利用することになる。迂回しても、コストを運賃に反映してくれる荷主はほとんどいない。東京電力に補償を求めても、常磐道、国道6号が開通したため、応じてくれない。
 また、遠回りすることで、労働時間が延び、改善基準告示の順守にも影響が出てくる。
 荷主が恐れているのは風評被害だ。例えば、住宅用建材が東北から首都圏の現場に輸送され、完成検査で何らかの放射線量の数値が出れば、損害賠償を求められる。「どのルートを通って来たのか」と――。荷主はリスク回避として、常磐道や国道6号のルートを敬遠。水産物や農産物、食品、日用品の輸送も全て同じ理由とみられる。
 ただし、あくまでも大雪や土砂崩れなどの災害で、内陸部の道路を通れない時の代替ルートと位置付ける荷主もいるようだ。
 内閣府の原子力災害対策本部原子力被災者支援チームが6月24日に公表した資料によると、避難指示区域通過による被ばく線量は、国道6号で放射線量が最も多い区間(42.5キロ)を時速40キロで通過した場合が「1.2マイクロシーベルト」。これは、胸部X線集団健診の被ばく線量60マイクロシーベルトの50分の1程度だ。また、常磐道・広野インターチェンジ(IC)―南相馬IC(49.1キロ)を時速70キロで通過した際の被ばく線量は0.37マイクロシーベルトで、X線健診の160分の1に当たる――としている。
 更に、宮城県トラック協会(須藤弘三会長)が求めた、避難指示区域を通過する車両の積み荷に与える影響調査についても、表面汚染密度は実測値で「検出限界値未満」と、事実上の安全宣言を出している。
 この問題の根底には「放射線量は本当に大丈夫なのか」との不信感がある。解決するには、この不信感を拭い去ることだ。「健康上問題ない」という根拠となる数値を国が明示し、国民のコンセンサスを得るしかない。もしくは多くの車両が問題を意識せずに通行できる環境をつくることだ。
 ある物流子会社の責任者は「常磐道の通行料金を半額にすればいい」と説く。車両を誘導し、震災前と同じような状況になれば問題は解決する。
 石巻地区のトラック事業者はモニタリング数値の公表をマイクロシーベルトではなく、ミリ単位にしてはどうか――と提言。1.2マイクロシーベルトなら0.0012ミリシーベルトとなり、数値が低く感じられる。
 常磐道、6号の迂回問題は、地理的には一部の地域に限定される。しかし、被災地の復旧復興、国土の均衡な発展の上でも解決しなければならない問題。国には誰もが理解し、納得できるような対策が望まれる。荷主や一般市民の「放射能アレルギー」ともいえる漠然とした不安感、あるいは風評が払しょくされない限り、この状態は当分、続きそうだ。
【写真=ならはPAにある放射線量の表示板】