ファイザーＭ＆Ａ、米政府が批判　節税目的「フェアでない」

　【ワシントン＝川合智之】米製薬大手のファイザーとアイルランドの同業大手アラガンの合併合意に関し、米政府などから批判が相次いでいる。アーネスト米大統領報道官は23日の記者会見で、個別の買収案件には言及しないとしながらも「中流家庭の利益にならない」と課税逃れを目的とした合併を非難した。これまで米国社会に様々な恩恵を受けていながら、節税のために本社を移転する行為は「フェアではない」と指摘した。

　来年11月の米大統領選の民主本命候補、ヒラリー・クリントン前米国務長官（68）も23日の声明で「米国の納税者が貧乏くじを引く」とファイザーを批判した。

　クリントン氏は「税基盤を壊す租税地変換の取り締まりに猶予は認められない」と強調。同様の合併を制限する規制案を「数週間以内に公表する」と述べ、大統領に当選すれば税制改革を断行すると訴えた。民主候補のバーニー・サンダース上院議員（74）は「世界一高い薬代を払っている米国民にとって災難だ」と批判した。

　米財務省は19日、税率の低い国への本社移転を防ぐため、税率の低い国にある規模の小さな企業を規模の大きな米企業が買収することを制限する追加規制を発表し、ファイザーをけん制した。一方でファイザーは23日にアラガンとの合併合意を発表。総額1600億ドル（約19兆７千億円）での事実上の買収で、米メディアは節税効果が年間約20億ドルに上ると報じた。