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サイエンスとサピエンス このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

2015-11-08 中国SFがヒューゴ賞受賞 このエントリーを含むブックマーク

 SF関係者ではすでに過去のニュースだが、中国本土で書かれた長編SFが2015年のヒューゴ賞受賞作に選ばれた。まさに快挙といえる。

 劉慈欣というシステムエンジニアの作品『三体』である。表題は三体問題の三体なのだが設定が凝っている。

 3つの恒星系で生まれた三体星人が作り上げたおそるべき冷酷非情な先進文明が地球侵略を進めるという設定だけでは時代がかったスペースオペラ的なストーリーな感じだ。しかし、文化大革命による知識人弾圧を背景にリアルタイムな設定で迫力ある物語世界を創造することに成功しているようだ(現時点で翻訳がないのでwikiに依存した)

 ともあれ、日本のSFとしては、伊藤計劃『ハーモニー』がフィリップ・K・ディック記念賞の特別賞(2010年)をとったのが海外での最高評価である。

それと比較すれば中国人の成長ぶりの速さとパワーに圧倒される。

 1950年ごろまでは中国本土は政治的軍事的動乱にさらされていたのだ、文化大革命も混乱を増長させただけだった。高度経済成長は1990年代からであり、その熱気がこうした作品に結実したのだろう。

 他方、日本SFの黄金期はすでに過ぎ去っているかのような感がある。多分、小松左京、星新一、筒井康隆がその世代であった。その後のファンタジー系の軟性が高まりゲーム文化の奔流に呑み込まれて、高みに飛翔することなくオタク文化の一分枝にとどまっているようだ。

 戦争や過酷な粛清などを知らない温室では大きな物語を知らないままに、そうなってしまうのだろう。内向きな日本SFの現実というのは、ザラザラした非情な歴史がなかったことの証明だ。

 大塚英志や東浩紀がそうした傾向性を論評して久しいこともいい添えておこう。

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