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二つのモスクがたたずむ街 群馬県の館林市を訪ねて(2)

「館林にいるのが一番、居心地がいい」

次の土曜日にクバモスクを訪れると、食事会用のカレーを作り始めたところだった。調理を担当するのは、世話好きなバングラデシュ人のアンサリさん、パキスタン人のラナ君、このモスクに来るのは2回目というマレーシア人のラジー君だ。

新米のラジー君を気づかってか、アンサリさんは「いくつ? 学生?」と質問攻めにしている。それにラジー君が律儀に答えるうち、最近「いい感じの日本人女性」がいることが発覚。「えー、やるねー、何歳?」と、さらに場は盛り上がる。すると、黙々とにんにくを刻むラナ君が「パキスタンの女の子のほうが、日本の女の子よりずっとかわいい」とボソッと呟いた。それに爆笑するラジー君。

モスクってこんなに楽しいところだったのか……! いつのまにか調理に参加しながら、在日ムスリムの恋愛話にのめりこんでいった。

古株の風格を漂わせた男性が、子供たちと一緒に厨房に入ってきた。パキスタン人のジャヴェイドさんだ。日本に来て27年。地元の会社に勤め続け、今は正社員で日本人の部下もいるという。彼の館林への愛は、筋金入りだ。

「館林が一番居心地がいい。物価も安いし、のんびりしているしね。高速を走っていて、館林インターを降りると、ああ、帰ってきたなって思うよ」

普段から、ご近所への気配りも欠かさない。

「断食月の時はモスクに大勢集まるから、事前に挨拶に行ったり、後でタオルを持って行ったりね。食事会の野菜は、必ず近所の八百屋さんで買ってるよ」

礼拝が終わり、食事が始まったのは9時過ぎだった。カレーはスパイスが効いた本格的な味で、とてもおいしい。

会話にも花が咲き、礼拝の時の厳かな様子から一変して、ポッと灯りがともったような明るい雰囲気に包まれる。モスクで育まれたこうした温かい人間関係や、館林の住み心地の良さが、次々とイスラム教徒がこの街に集まる理由なのだろう。ジャヴェイドさんに、これからも館林に住み続けたいか聞いてみた。

「もちろん! もう家も買ったし、もう心はすっかり日本人のつもりだからね」

COURRiER Japon Vol.133 天才の「法則」