2010年にフリークアウトが創業されてから5年あまり経ち、「DSP=Demand Side Platform」なんてことは勿論、インターネット広告に携わる方の多くの方が仕組みも含めて既にご存知かと思います。
しかし、実際に日本の広告業界でのDSPの扱われ方は特殊というか偏っていると思うところがあり、今更ながら「DSPとは」本来どういったものであるべきなのか、日本の広告業界の現状を紹介しながら考えてみたいと思います。
※筆者の体験や主観に基づく意見だということを予めご了承ください。
DSP(Demand-Side Platform)とは
「DSPとは」とGoogleやYahoo!で検索すると解説記事がたくさんヒットします。現時点で最上位のMarkeHackさんの記事を引用させていただくと以下のように説明されていました。
DSPとは、オンライン広告において、広告主側の広告効果最大化を支援するためのプラットフォーム(ツール)です。
これを日本の現状に即して書き換えるとこうなると思います。
DSPとは、ディスプレイ広告において、ラストクリックコンバージョンを低単価で獲得するためのアドネットワークです。
書き換えた部分について以下に少し詳しく解説いたします。
ディスプレイ以外の広告出稿は稀だが、実は動画も(テレビも)可能になりつつある
現在のDSPに入稿されているクリエイティブの多くはディスプレイ広告です。HTML5(昔はFlash)のアニメーションやネイティブもありますが、乱暴にまとめればバナーとテキストの広告です。
しかしながら、DSPとはインターネットに繋がっている様々な広告を買い付けることができるプラットフォームであるべきであり、北米ではTubeMogulやTheTradeDeskなどを通じてテレビにも広告出稿できるようになりつつあります。
現在は一部のプレイヤーに限られていますが、将来的にはマルチチャネル化はどんどん進んでゆくでしょう。クリエイティブごとにプラットフォームが変わると運用者の学習コストは増えるので。
ラストクリックコンバージョンが全て
日本のインターネット広告業界において「コンバージョン」とは、基本「ラストクリックコンバージョン」を指します。つまり広告をクリックたユーザーがそのセッションでコンバージョン(商品購入、資料請求など)しない限り広告は全く効果が無かったとみなされるケースが殆どということです。
ユーザーのリテラシーの上がった現在、99%以上の広告表示はクリックされていません。広告の閲覧自体にちゃんと価値を見出し啓蒙していかない限りはテレビや新聞の様なブランディングキャンペーンは増えず業界の成長は見込めないでしょう。
1つのキャンペーンに多数のDSPを同時に使う
少し脱線しますが、筆者がクリックコンバージョン偏重となっている理由と考えている事例を紹介します。
DSPも多分に漏れず、ラストクリックコンバージョンを指標とした「刈り取り案件」で利用されることが多いです。基本CPM課金のDSPで、CPC課金のGDN、YDNやCriteoより優れたパフォーマンスを出すことは運用者にとってかなり骨の折れる作業で、なかなかうまくいかず「GY、Criteoで良くね?」と思いつつ広告主に「何か新しいチャネル提案して」と言われまた新しいDSPを焼き畑的に提案することになります。
一つのキャンペーンで多数の広告メニューを使うと、広告主側の計測と各管理画面のビュースルー(間接)コンバージョンの数の乖離は当然大きくなります。それでは正当な評価ができないのでクリックスルーコンバージョンのみ成果と認められるのです。
使われ方はアドネットワーク
紹介したような日本での利用方法ではDSPとアドネットワークを差別化することは難しいです。そもそも両者の違いは何かというと、筆者は「独立性」、つまり広告主の効果最大化にフォーカスしている点が大きな違いだと考えています。アドネットワークに関しては「どのサイトに出るか、どのデータが使えるか」ということが強みとなりましたがDSPに関しては連携先のSSPやDMPが一緒なら変わりません。3つも4つも同時にDSPを走らせているキャンペーンは日本に多数ありそうですが、買い付け先のSSPは基本一緒なので(Yahoo!除く)、むしろ広告主から見れば身内で入札し合いCPMの高騰を招いてしまう可能性が高いです。
最後に
欧米では各DSPの特性を理解し、信頼した一つのDSPを中長期的に文字通りプラットフォームとして利用することが主流です。焼き畑的な使い方を見直し、広い視点でどうマーケティングに役立てるか考えることが今後の業界の発展にとって重要ではないでしょうか。
お目通しいただきありがとうございました。勉強もかねて投稿しているので、認識違い等あれば申し訳ありません。