「ゼロトレランス」という言葉がある。「寛容度ゼロ」と訳される。小さな問題をあいまいにせず、段階に応じて罰則を定めた行動規範を子どもに示し、破ったらペナルティーを科す。そんな生徒指導法のことだ。

 1990年代、学校で銃乱射事件が相次いだことを受け、全米に広まった。

 これにヒントを得た「学校安心ルール」という指導法を、来年度から大阪市教委が導入する。問題行動を5段階に分け、レベルごとに対応を定める。

 たとえばこんな具合だ。

 【レベル1】授業に遅れる▽ずる休み▽先生をからかう

 →その場で注意。聞かなければ別室指導。従わなければ奉仕活動か学習課題を課す。

 【レベル2】先生の悪口を言う▽友達を仲間はずれにする

 →複数教職員による指導と家庭への連絡。改善しなければ、数日間の奉仕活動……

 レベル4、5の暴力や傷害には、警察への通報や出席停止措置などが明記されている。

 対象は市立の全小中学校424校で、徹底させるため、市教委は学校がルール通りに動かなければ市教委に通報するよう保護者へ呼びかけるという。

 問題行動の背景は子によって違う。学校の事情もそれぞれだ。「ルールだから」とマニュアル的に対応するのは無理があると言わざるを得ない。

 「ぶれない指導で安心、安全な学習環境を確保する」のが市教委のねらいだ。だが、そもそも問題行動にどう対処するかは学校自身が決めることだ。

 市教委は「学校の裁量もある程度認める」と説明する。ならばなぜ、保護者に監視させるような仕組みまで作るのか。

 罰則規定をしゃくし定規に当てはめるようでは、子どもとの対話も失われかねない。

 確かに先生にかつての権威がなくなり、学校の規律をどう守るかは悩ましい問題だ。

 暴力を止めようとしたら「体罰だ」と言われたり、ささいなことでキレられたり。子どもが変わったと感じる先生も多い。

 ルールを守らせるのに手がかりが欲しい。そんな声もあろう。だが、統一的な基準を作るにしても、あくまで教員間の指導の目安にとどめるべきではないか。困難であっても、子どもに直接向き合う先生がその子に合った対応を考える。それが教育だからだ。

 市教委は来年度の1学期から試行し、2学期から本格実施するという。現場の教員からは疑問の声や、撤回を求める動きもある。強く再考を求めたい。