文/内田良(名古屋大学大学院 准教授)
「ケガはつきもの」という思考停止状態
スポーツの秋も過ぎ、師走もすぐそこだ。今年も残念ながら、学校管理下のスポーツ活動では多くの重大事故が起きた。そのいくつかの事例をもとに、事故の共通点と防止に向けた課題を探っていきたい。
まずスポーツでは身体に大きな負荷がかかる。その意味で、事故が起きやすくなるのは当然だ。だからといって、「スポーツにケガはつきもの」と考えてしまっては、もはや何も始まらない。これは、現状に向き合おうとしない思考停止の状態である。重大な事故はやはり起きないほうがよいし、小さい事故であったとしてもちょっとした工夫で防げるものなら、そのほうが望ましい。
2001年、国際的に定評のある医学雑誌British Medical Journalは、"accident"という言葉の使用を禁じるとした。「accidentとはしばしば、予測できない、つまり偶発的な出来事または神の仕業であり、それゆえに回避できないことと理解されている。しかし、たいていの傷害や突然の出来事というのは予測可能であるし、防御可能である」というのがその理由であった。
予測できない、したがって回避もできない事態がaccidentである。だが同誌は、事故は予測・回避できると考え、accidentからの脱却を宣言したのであった。
同じような事故がくり返される場合、そこには予見可能性がある。予見できるからには事故を防ぐことができたのではないかと、一度は考えてみなければならない。
コピペのような事故がくり返されてきた柔道
2011年冬から2012年春頃にかけて、マスコミでたびたび取り上げられた柔道事故は、まさに長年にわたってくり返されてきた事故と言ってよい。
学校の柔道では、1983~2011年度にかけて計118件の死亡事故が起きてきた。多くは、中学1年生または高校1年生の事故である(【図1】参照)。部活動の練習中に、投げられて頭部を損傷(死因は主に急性硬膜下血腫)することによって発生している(詳しくは拙著『柔道事故』を参照)。
私が柔道の事故事例を整理し始めた当初は、あまりに類似の事例が多いため、同一事例を重複して数え上げてしまっているのではないかと勘違いすることがしばしばあった。
それほどまでに、死亡事故がまるでコピペのように続いていたのだ。これは言い換えれば、コピペのように続いていることに皆が目を向ければ、死亡事故が一気に減らせるかもしれない、ということを想起させる。
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