工事やめろー!
普天間基地の辺野古移設に揺れる沖縄。
今週、政府が沖縄県を裁判に訴えるという異例の事態になっています。
日本全体の安全保障のためにも辺野古移設は不可欠だとする政府。
一方、沖縄は新たな基地負担を求める国の在り方を問うています。
重大な局面を迎えた普天間基地移設問題。
対立の深層に迫ります。
こんばんは。
「クローズアップ現代」です。
名護市辺野古の埋め立て承認を取り消した沖縄県を政府が提訴し政府と沖縄県は法廷で正面から争うことになりました。
裁判が行われている間も、政府は辺野古で普天間基地に代わる基地の建設工事を着々と進めるとしています。
地元、沖縄からは、強行でなりふり構わぬ姿勢に映る政府のやり方。
政府は県による承認の取り消しによって普天間基地の危険性が続くことやアメリカとの信頼関係に重大な損害が生じるとしています。
一方の翁長知事は、今後、裁判で埋め立て承認および取り消しの審査権限は、沖縄県知事にある。
普天間基地を、辺野古に移設しなければならない必要性は認められないなどと訴えるとしています。
政府と県の間で半年間にわたって行われた話し合いを経ても埋まらなかった深い溝。
この問題を捉える視点の違いが浮き彫りになりました。
政府は19年前に日米両政府が普天間基地の返還で合意し危険性の除去と抑止力の維持のために辺野古沿岸に移設することが不可欠だとしています。
一方、翁長知事は、70年前の沖縄戦の末にアメリカ軍に強制的に接収され基地が造られたうえ、さらに戦後本土の基地が沖縄に移転し基地の集中が高まった。
過重な負担を背負い続けてきた中で普天間基地の移設先がなぜまた沖縄なのか。
知事は、この問題は沖縄の誇りや尊厳に関わるとまで述べています。
沖縄県民が選挙で示した移設阻止という民意。
地方分権の流れの中で地方自治体の自主性や自立性への配慮も叫ばれています。
これらと国を守るという安全保障上との課題をどう両立させるのか。
両者の主張がすれ違い関係悪化に至ったその背景を探りました。
沖縄県に衝撃が走ったのは先月下旬。
想定より、はるかに早く政府が県を訴える方針を明らかにしたのです。
政府は県が行った承認取り消しは違法だとしています。
沖縄県は裁判で争う準備に取りかかりました。
その2日後。
政府は辺野古での埋め立て工事に着手します。
今後、およそ160ヘクタールを埋め立て5年後の工事完了を目指しています。
鋭く対立する政府と沖縄県。
両者は半年にわたり協議を行ってきました。
4月、翁長知事の就任後初めて行われた会談。
菅官房長官は移設の必要性について理解を求めました。
市街地の中心部にある普天間基地。
政府は、その危険性を一日も早く取り除く必要があると強調。
同時に、中国の海洋進出など安全保障環境が厳しさを増す中抑止力を維持しなければならないと説明しました。
これに対し翁長知事が訴えたのは沖縄が歩んできた苦難の歴史でした。
70年前、地上戦の末アメリカ軍に占領された沖縄。
住民の土地が強制的に接収され基地が造られていきました。
その後本土の基地が沖縄に移転し今では国内にあるアメリカ軍の専用施設およそ74%が集中しています。
翁長知事は日本政府と協議を行う一方アメリカにも働きかけを始めました。
安全保障政策に影響力を持つ議員などに対し県民の多くが移設に反対していると訴えました。
知事が会談した一人アメリカ議会の実力者ジョン・マケイン議員です。
かつて地元、沖縄が反対する中で基地を移設することに慎重な姿勢を示していました。
しかし…マケイン議員の考えは変わっていました。
辺野古への移設を進めるべきだと表明したのです。
なぜマケイン議員の考えは変わったのか。
安全保障の専門家パトリック・クローニンさんはアメリカがこの問題をすでに解決済みだと考えているといいます。
移設先を巡っては一時、県外も検討されました。
しかしおととし、前の知事が埋め立てを承認したことで沖縄が受け入れたと見なしているのです。
アメリカ政府にパンドラの箱を開ける余裕はありません。
辺野古移設は日米が合意しその後、再検討し何度も合意した過去の問題です。
翁長知事は何を期待しているんでしょうか。
翁長知事がアメリカで会った関係者は10人以上。
その多くが、辺野古が唯一の解決策という意見でした。
一方、移設計画への理解を得たい日本政府は、新たな手を打ちます。
辺野古を含む沖縄県北部の振興策を次々と打ち出したのです。
菅官房長官は北部の村長たちと会談。
世界自然遺産への登録をはじめ地域振興への支援を約束しました。
さらに、辺野古地区の代表者らを総理大臣官邸に招きました。
移設に反対する沖縄県や名護市を通さず地元に直接財政支援することにしたのです。
辺野古の住民からは政府の振興策に期待する声も上がっています。
地区で商店を営む許田正儀さんです。
かつて、隣接するアメリカ軍基地から多くの兵士が訪れた辺野古の町。
しかし大きな産業はなく人口は大幅に減少しています。
以前は騒音を心配し移設に反対していた許田さん。
しかし今は、振興を条件に基地を受け入れることもやむをえないと考えています。
一方、県内への移設では沖縄の負担は変わらないと反対する人もいます。
普天間基地のそばに暮らす宮城政一さんです。
宮城家代々の土地はアメリカ軍に強制接収され今は基地の中にあります。
11年前には宮城さんの自宅近くにヘリコプターが墜落する事故も起きました。
宮城さんは速やかな返還を望む一方で県内への移設には抵抗があるといいます。
埋め立て工事が始まった先月29日。
菅官房長官は、グアムにいました。
沖縄の負担軽減に協力を要請するためです。
グアムには、沖縄に駐留するアメリカ海兵隊員の一部が移転する計画があるからです。
一方、沖縄県は裁判に向けて準備を進めています。
県は裁判で知事の権限や地元の声を尊重するよう訴える方針です。
今夜は、政治部の高橋記者と、沖縄放送局の中村記者と共にお伝えしてまいります。
まず高橋さん、最後まで政府と県が折り合えず、法廷で争うことになりましたけれども、その間にも、工事は続いていく。
翁長知事は、銃剣とブルドーザーで強制接収されたことを思い起こすと話していたんですけれども、なぜこれほどまでに強硬な姿勢を、政府は取るのですか?
まず、今回の提訴というのは、辺野古への移設方針は変わらないという政権の覚悟を示したものなんです。
これまでに歴代政権はさまざまな移設先について、検討を重ねまして、民主党政権時代には、実に40か所もの候補地を検討しました。
こうした経緯を踏まえまして、政府は、普天間基地の危険性を除去するためにも、また安全保障環境が厳しさを増す中で、抑止力を維持するためにも、現実的で唯一の解決策が辺野古しかないというふうに判断したわけです。
県が反対する中で、アメリカ軍ではなくて、日本政府によって基地の建設が進む。
沖縄の人々は事態をどう見ていますか?
沖縄県が反対しているにもかかわらず、しかも日本の政府によって基地の移設が進められようとしているとして、沖縄の人たちは、反発や怒りを通り越して、ある種のやるせなさを感じている人も多いと思います。
政府は、移設を進める理由の一つとして、日本の安全保障を挙げているんですけれども、沖縄戦を体験した人の中には、政府がそのことを主張すればするほど、70年前の地上戦を思い出して、沖縄が再び戦場になるのではないかと、不安を募らせているんです。
一方、普天間基地の一日も早い危険性の除去を求める人たちの中には、翁長知事の行動は、基地の固定化につながるとして、冷ややかなまなざしを向けている人がいるのも事実で、この双方の亀裂が、広がっていくのではないかと懸念する考えも出ているんです。
翁長知事は日米安保は重要である、そして危険除去も大切である、さらにこれから安全保障の環境というのも変わっているという認識もおありで、そこは政府との考え方を共有している部分が多いのですけれども、辺野古への移設については、絶対容認できない、これは沖縄の尊厳やアイデンティティーにも関わる問題だと言っている、その思いというのはどういうものなんでしょうか?
そうですね、翁長知事は、基地が造られた歴史が繰り返されようとしている今、この流れを止めなければ、沖縄の尊厳が傷つけられると考えているんです。
43年前に、沖縄が日本へ復帰した際に、沖縄の人たちは、せめて本土並みに基地が減ってほしいという願いを持ったんですが、その願いは今もかなえられていません。
反対に、日本を取り巻く安全保障の変化で、今はその最前線に立たされ、こうした中、翁長知事は、さらなる基地の負担を背負わされるのは、到底耐えられないと主張しているんです。
高橋さん、強制収用された基地に悩まされてきた沖縄は、国が造る基地を、今度、沖縄がみずから認めることは尊厳に関わるというふうに思っているわけですけれども、国はもっとそうした気持ちに寄り添うことはできないのでしょうか。
沖縄が先の戦争で地上戦を経験して、本土復帰が遅れたこと、今もアメリカ軍の基地が集中して負担になっていることは、政府も当然、重く受け止めているわけです。
ただ、政府は普天間基地の移設計画は、あくまでも19年前の日米の返還合意が議論の出発点だというふうに考えているわけです。
翁長知事が主張するように、戦争直後にまでさかのぼって議論することは、あまりにも現実性を欠き、問題の解決を困難にすると考えているわけです。
菅官房長官、1か月間、先の集中協議を行いましたけれども、翁長知事のこうした主張を聞いて、方針転換を促すことは不可能だと判断したことも、今回、提訴に踏み切った背景にあるわけです。
反対する県や市を通り越して、地元自治体に直接、財政支援をするという方向も見えてきたわけですけれども、分断を生じさせる懸念がありますけれども、このまま政府は進んでいくのでしょうか?
辺野古周辺の地区に対して、直接振興予算を交付するということについては、地方自治体への介入だという批判があるのも確かに事実です。
ただ、菅官房長官は、一番負担がかかる地域に、できるかぎり配慮をするのは当然だという考えなんです。
また沖縄が必ずしも移設反対一色ではないことを浮き彫りにしたいというねらいもあるわけです。
出口の見えない政府と県のこの対立。
解決に必要なものは何か、専門家に聞きました。
植村教授は高橋さん、基地建設を強行した場合、基地の運用、それから、あるいは沖縄とアメリカ軍の関係、沖縄と日本政府との関係が悪くなるのではないかという指摘がありました。
強い姿勢で進むことへのリスクに対して、政府はどう向き合おうとしているのでしょうか。
政府は沖縄の理解を得るためには、負担を軽減するための努力が欠かせないとしているわけです。
菅官房長官は先月、沖縄の海兵隊およそ4000人の移転先となっています、グアムを訪問しました。
そしてアメリカ側に移転を早期に実現するよう要請したんです。
これには沖縄の負担軽減を進める、政権のいわば本気度を示すねらいがあるわけです。
また政府は、普天間基地のオスプレイの訓練移転などを進めて、沖縄の負担を全国で分かち合う努力を続けたいとしているんです。
中村さん、政府は裁判に勝てるという強い自信を見せています。
翁長知事は、基地は造らせないし、造れないと述べているんですけれども、沖縄としてはこれからどのように闘おうとしているのでしょうか?
翁長知事は、政府と対立が続く今の状況を、沖縄は海に浮かぶ木の葉のようなものだと例えていまして、この現状に対して、極めて厳しい認識を持っているんです。
しかし、移設計画の阻止に向けて、あらゆる手を尽くして、決して諦めない考えです。
菅官房長官との最後の協議のあと、知事は、お互い70年間、別々に生きていたと述べているんですけれども、それはどんな思いが、そこには込められているんでしょうか?
沖縄では意に反した基地が造られ、日本のためにその負担を負い続けてきた。
その沖縄の歴史に共通の理解を築くことができず、政府からは突き放されたような思いを抱いたのだと思います。
なぜ辺野古への移設に反対するのか。
その背景には、負担を全国で分かち合ってもらいたいという、沖縄からの切実な訴えがあります。
政府とそして沖縄の間に横たわる深い溝、その深層についてきょうは政治部の高橋記者と、沖縄放送局の中村記者と共にお伝えしてまいりました。
今夜のクローズアップ現代はこれでお別れです。
2015/11/20(金) 02:19〜02:45
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代「“辺野古移設”対立の深層」[字][再]
国と沖縄県の対立が深まる、アメリカ軍普天間基地の移設問題。法廷闘争に発展する情勢となっている。関係を解きほぐすには何が必要なのか。これまでの経緯を検証し、考える
詳細情報
番組内容
【ゲスト】NHK沖縄局記者…中村雄一■,NHK政治部記者…高橋佳伸,【キャスター】国谷裕子
出演者
【ゲスト】NHK沖縄局記者…中村雄一■,NHK政治部記者…高橋佳伸,【キャスター】国谷裕子
ジャンル :
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
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