(テーマ音楽)静岡県西部浜名湖。
海につながる汽水湖です。
海の水が入りまじる湖には多くの魚介類が集まります。
その数700種。
生き物の宝庫です。
浅瀬に茂るのはアマモの草原。
ここで育った生き物たちが海へと旅立ちます。
魚を狙う夜のハンターはカニたち。
日本では数か所にしかいない幻のカニも現れます。
晩秋の浜名湖。
生き物たちの営みを見つめます。
黒潮が流れる遠州灘に面した浜名湖です。
湖は幅200メートルの水路で海とつながっています。
もともとは海と湖を隔てていたこの場所に500年前津波が押し寄せ海水が入り込む汽水湖になったのです。
潮の満ち干によって湖の中に大量の海水が出入りします。
その水の量は一日におよそ4,000万トンにも及びます。
海とつながる湖の南部。
海の魚たちが次々と入ってきています。
こちらは遠州灘でよく見られる…湖に迷い込んだようです。
体長20センチほどのイシダイもいました。
海の岩礁で暮らす大型の魚ですが食べ物が豊富な浜名湖に住み着く事もあります。
海の魚たちにとって穏やかな浜名湖は居心地が良いようです。
黒潮に乗ってはるか南の海からやって来る魚もいます。
真っ青なソラスズメダイです。
本来は熱帯の海に暮らす魚です。
こちらも熱帯からやって来た…熱帯の魚たちは水温が下がる冬の浜名湖では暮らしていけません。
晩秋はこうした魚たちを見られる最後の季節です。
湖を見渡すと浅瀬が広がっています。
平均水深は5メートル以下です。
その浅瀬にびっしりと生えている植物がありました。
砂地に生える海草の…太陽がさし込む浅瀬はアマモにとって最適な場所。
浜名湖のアマモ場は日本有数の面積です。
アマモの根元でスジハゼを見つけました。
砂地の穴を住みかにしていますが実は穴を掘るのは得意ではありません。
代わりに穴を掘ってくれるのは…ハゼはその見張り番としてずっと隣にいました。
アマモ場でよく見かけるのは海の魚の子供たちです。
体長4センチほどのハオコゼの子供です。
アマモ場は天敵から身を守る格好の隠れがになるのです。
こちらの子供は…夏に親がアマモに産みつけた卵からかえり秋には大きさ1センチまで成長していました。
アマモの葉をつついています。
葉についた藻などを食べているのです。
アマモ場は子供たちに食べ物も与えてくれます。
こちらはサザナミフグの子供。
海で海藻に産みつけられた卵が偶然浜名湖にたどりつきました。
悠々とアマモ場で育つサザナミフグ。
大きくなるまで仮住まいです。
浜名湖は海の生き物の子供たちを育む揺りかごになっています。
海から離れた浜名湖の北部では山々が近くまで迫っています。
山から流れ出る淡水にはミネラルなどの栄養がたくさん含まれています。
そのためこの辺りの湖の中は大量のプランクトンが発生するのです。
湖の底にアサリがいました。
アサリは海水と淡水が程よくまじり合う水を好みます。
管から水を吸い込んでプランクトンをこし取るように食べています。
山と海に囲まれた浜名湖のアサリは全国でも屈指の生息密度を誇ります。
私たち人間の暮らしもその恩恵を受けているのです。
(虫の鳴き声)夜暗くなった湖の中は昼間と違った様子を見せます。
湖底では夜のハンターたちが姿を現します。
こちらはタイワンガザミのオス。
両腕を広げると40センチほどもある大型のカニです。
オールのような後ろ足を器用に使って自由自在に泳ぎ狩りをします。
目の前の魚に狙いを定めます。
逃げられてしまいました。
食べ物が豊富な浜名湖に住むカニの仲間は90種を超えます。
その中には幻と呼ばれるカニがいます。
湖の底の物陰。
幻のカニが身を潜めていました。
甲羅の幅が20センチを超える…ノコギリの歯のようなトゲが並んでいるのが名前の由来です。
体に不釣り合いな巨大なハサミを持つトゲノコギリガザミ。
このハサミで貝や魚を捕らえる事で浜名湖の生き物たちの頂点に君臨しています。
まるまると大きい胴の形から浜名湖では「胴満ガニ」と呼ばれています。
沖縄など温暖な汽水域に多いカニ。
浜名湖が北限でここでは冬眠をします。
秋胴満ガニは冬眠を前に盛んに狩りに出ます。
狙っているのは湖の底にいる貝です。
アサリを捕らえた胴満ガニがいました。
巨大なハサミを器用に使ってアサリをつかみます。
(アサリの殻を砕く音)硬い殻をいとも簡単に砕く胴満ガニ。
浜名湖最強の生き物です。
晩秋浜名湖では冬支度が始まっています。
アマモがまばらになって短くなっていました。
枯れ落ちたアマモは湖の中の養分になります。
やがて来る春に向けて新しい葉に生え変わっていくのです。
アマモ場で育ったサザナミフグ。
ここよりも暖かい外海へ旅立ちます。
浜名湖の王者胴満ガニ。
冷え込む冬を前に冬眠の準備を始めていました。
晩秋浜名湖。
入りまじる海水と淡水が多くの生き物たちの命を支えています。
2015/11/22(日) 07:45〜08:00
NHK総合1・神戸
さわやか自然百景「晩秋 浜名湖」[字]
浜名湖は海水と淡水が混じる汽水湖。1日4000万トンの海水が出入りし、700種の魚介類にあふれる。甲殻類の頂点に立つのが、本州では浜名湖だけのトゲノコギリガザミ
詳細情報
番組内容
遠州灘に面する浜名湖は、海水と淡水が混じる汽水湖。1日4000万トンの海水が出入りし、700種を超える魚貝類にあふれる。海から名物のウナギはもちろん、クロダイなどが湖内へ回遊しにくる。甲殻類の頂点に立つのが、本州では浜名湖にしかいないトゲノコギリガザミ。地元では“幻のカニ”とされ、丸々とした姿から“胴満ガニ”と呼ばれる。晩秋の湖底では、冬眠を前にトゲノコギリガザミが一斉に狩りにでかけていく。
出演者
【語り】中村慶子
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
趣味/教育 – 旅・釣り・アウトドア
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
OriginalNetworkID:32080(0x7D50)
TransportStreamID:32080(0x7D50)
ServiceID:43008(0xA800)
EventID:9351(0x2487)