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「憎しみは与えない」 テロリストへ妻亡くした男性投稿

テロリストへの手紙という形でメッセージを発信したアントワンヌ・レリスさんのフェイスブック

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 【パリ=渡辺泰之】「私の憎しみを君たちに与えない」−。パリ同時多発テロで妻を失った仏ラジオのジャーナリスト、アントワンヌ・レリスさんが、インターネット上につづった文章が世界中で共感を呼んでいる。

 レリスさんは、妻をバタクラン劇場の襲撃で亡くした。文章は十六日にフェイスブック上に掲載され、世界中に広がった。フェイスブックでは二十一万回共有され、内外のメディアでも取り上げられた。

 文章は、最愛の妻を失った悲しみに触れつつも、憎しみを越え、残された息子とともに「自由」であり続ける大切さを訴えている。

レリスさん=ツイッターから

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 レリスさんは仏ラジオに「私は息子に憎しみや暴力、恨みを抱えたまま育ってほしくない。彼に立ち上がる武器を与えたい。銃では決してなく、紙やペン、そして音楽という武器を」などと語っている。

<投稿された文章の全訳>

 「君たちに憎しみを与えない」

 金曜日の夜、君たちはかけがえのない人の命を奪い去った。私の最愛の妻、そして息子の母を。でも、私は君たちに憎しみを与えない。君たちが誰かも知らないし、知りたくもない。君たちは死んだ魂だ。君たちは神の名で無分別に殺りくを行った。もし、その神がわれわれ人間を自らの姿に似せてつくったのだとしたら、妻の体に撃ち込まれた一つ一つの弾丸が、神の心に撃ち込まれていることだろう。

 だから、私は決して、君たちに憎しみという贈り物を贈らない。君たちはそれを望むだろうが、怒りで応えることは、君たちと同じ無知に屈することになってしまう。君たちは、私が恐怖し、周囲の人を疑いのまなざしで見つめ、安全のために自由を犠牲にすることを望んだ。だが、君たちの負けだ。私はまだ、私のままだ。

 今朝、(亡きがらの)妻に対面した。幾晩も幾日も待ち続けた末に。彼女は金曜日の夜に会った時と変わらず美しく、そして、恋に落ちた12年以上前と同様に美しかった。もちろん、私は悲しみにうちひしがれている。だから、君たちのわずかな勝利を認めよう。でも、それは長くは続かない。彼女は、いつも私たちと一緒に歩む。そして、君たちが決して行き着くことができない天国の高みで、私たちは再び出会うだろう。

 私と息子は2人になった。でも私たちは世界のいかなる軍隊よりも強いんだ。私が君たちに費やす時間はもうない。昼寝から目覚めた(息子の)メルビルと会わなくてはならない。彼は毎日、おやつを食べ、私たちはいつものように遊ぶ。この幼い子の人生が幸せで、自由であることが君たちを辱めるだろう。君たちは彼の憎しみを受け取ることは決してないのだから。

 

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