美の京都遺産 2015.11.22


美術史に残る名品である
光琳は二人の芸術家に私淑した
本阿弥光悦と俵屋宗達である
江戸時代初期に二人が生みだした芸術様式は100年後光琳によって大成されやがて「琳派」と呼ばれるようになった

だがこの絵は実物ではない
複製なのである

京都市中京区にある…
光琳の絵を複製した印刷会社である
創業130年
展覧会の図録や美術図書国宝重要文化財の複製など明治から今日まで美術印刷一筋に歩んできた
明治20年御所出入りの鋳物屋だった中村家の次男弥二郎によって創業
しばらくは貸本・出版業を営んでいたが明治38年印刷業に舵を切る
当時ヨーロッパを席巻していた最先端の写真印刷技術コロタイプを導入した
コロタイプは図柄を印刷するとき通常のフィルムではなくガラス板を用いる
まず最初に印刷原板を作る
感光材を塗ったガラス板にネガフィルムを密着させ紫外線を当てて画像を焼き付ける
それはガラス乾板と呼ばれる

フィルムは痛みやすいがガラス乾板は耐久性に優れ100年たっても劣化しない
またフィルムの階調がそのまま写し取られるため当時の画像がいつでも再現できるのである

明治の京都を写した絵はがき
失われた風景
変わらない風景
近代京都の記憶を鮮やかにとどめた「便利堂」のコロタイプ
倉庫にはおよそ2万点のガラス乾板が保管されている
入社31年の…
先人が残したある業績が「便利堂」の名を高めたという
我々の中でも最も大きい仕事だというふうに認識してるのは法隆寺の金堂壁画の撮影だと思います。
昭和10年に原寸大で全ての壁を撮るというそういう撮影をしておりまして同時に赤外線写真それから四色分解撮影というその当時の写真技術の全てをですねやれることは全てやったというふうな非常に偉大なお仕事だったと思います。
だが仏教美術の至宝は昭和24年不慮の火災に遭う
今も保存されてるんですけども非常にどう言うんでしょうか…元の姿をちょっと想像できないぐらいにひどい状況になっておりまして。
後に壁画を再現する際に我々が撮影をしたガラス乾板からコロタイプ版を作りましてそれが下地になってですね再現がなされております。
かつての金堂壁画を写したガラス乾板は国の重要文化財に指定された
絵はがき屋さん
「便利堂」と聞いて京都の庶民が思い浮かべるイメージであろう
そもそも「便利堂」の印刷は絵はがきから始まった

三条富小路にある…
1000種類を超える日本美術の名品を扱った絵はがきを販売している

竹内栖鳳上村松園冨田溪仙
京都画壇の大家も絵はがきを書き下ろした
だがコロタイプ印刷はモノクロにとどまっていた
昭和41年大英博物館の依頼で中国の絵巻物の複製を手がけた
これが世界初のカラーコロタイプとなった
カラー化されたことでもともと再現性に優れたコロタイプは絵画の複製など用途を拡大
専門性の高い研究に生かされるようになった
カラーコロタイプは浮世絵のように色を分解し一色一色刷り重ねていく
変色や褪色に強い顔料を多く含んだ粘り気のあるインキを用いる
尾形光琳の「風神雷神図屏風」を原寸大で複製する
これはその一部分である風神
基本となる墨の色
職人は濃淡を瞬時に見極め足りない所にインキを補う

風神は七色に分解された
何度も刷り直し風神が仕上がるまでにおよそ3週間かかった
(尾崎さん)本物…尾形光琳の風神雷神図を見たときにやっぱり色の表現質感立体感っていうのはやはり迫力がある。
でその迫力をどういうふうに印刷で表現するかっていうのに対してやはりコロタイプの技法っていうのが優れていると思います。
完成した風神雷神図屏風の複製は京都文化博物館で展示される
実物は東京国立博物館が所蔵し人の目に触れる機会が限られている
だが精緻な複製があることで人々は身近に名画を鑑賞することができる
琳派誕生から400年を記念してこの屏風は制作された

墨のにじみ筆の運び
印刷とは思えないほどディテールが忠実に再現されている
裏側は光琳に私淑した江戸の絵師…
本来はこのように風神雷神図と表裏一体で描かれていたが現在実物は切り離され別の屏風に仕立てられている
だがコロタイプが本来の姿をよみがえらせた
屏風は京都府に寄贈されやがて子供たちの教育に使われるという
10月
京都文化博物館で「便利堂」主催のコロタイプ・ワークショップが開かれた

(子供)ああ〜出来た!・ありがとう。
デジタルの時代に手作業のぬくもりを感じてほしいと西村さん
(西村さん)コロタイプ印刷っていうのはヨーロッパには残っていないんですね。
日本…唯一京都に2社になってしまってるんです。
ですから我々がこの技術を手放してしまう…やめてしまうとですね印刷の歴史からコロタイプっていうのが消えてしまうと。
この大切な技術を次の時代に伝えていきたいというふうな強い思いは持っておりますね。
京都に残された世界唯一の技で古の美をつなぐ「便利堂」である
2015/11/22(日) 06:15〜06:30
MBS毎日放送
美の京都遺産[字]

「古(いにしえ)の美をつなぐ・便利堂」

詳細情報
◎この番組は…
古都1200年の歴史の中で守り続けられてきた寺社仏閣・祭り・伝統工芸などの中より「美の再発見」をテーマに、ハイビジョン撮影による高画質映像でお送りする「映像美術館」。
 
音楽
久石譲
 
公式HP
【番組HP】
http://www.mbs.jp/kyoto/
おことわり
番組の内容と放送時間は、変更になる場合があります。

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 歴史・紀行
福祉 – 文字(字幕)

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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