(「ファランドール」)「ららら♪クラシック」今回は…力強いフレーズが印象的ですよね。
書いたのはフランスの作曲家ビゼー。
その名を世界に知らしめた「カルメン」などオペラや劇のための音楽を得意としました。
ビゼーには生涯親交を深めた友がいました。
彼なくしては「ファランドール」はこの世に存在しなかったのです。
今日は名曲「ファランドール」の誕生秘話に迫ります!「ららら♪クラシック」今日はビゼーの「アルルの女」から「ファランドール」をご紹介します。
勇ましさとねそれからチャーミングな部分とが両立するようなとてもすてきな曲ですね。
それでは本日のゲストタレントの加藤紀子さんです。
(一同)よろしくお願いします。
今日ご紹介する作曲家ビゼーはフランスの人なんですが加藤さんフランスに留学されていた経験があるとか。
そうですね。
もう10年ぐらいたちましたが27歳の時に…そもそもフランスを選ばれたのはなぜなんですか?二十歳のお誕生日の時にフレンチ・ポップスの代表の歌手のフランス・ギャルという人の…60年代のアイドルなんですけどアルバムをもらった時にすごくかわいくてその映画とかも好きになって。
でしゃべれない。
自分でしゃべりたいのに全然しゃべれないって事に気が付いてだったら語学を勉強してもっとフレンチ・ポップスなりフランスの文化を好きになろうと思って。
すごい。
今日ご紹介する「ファランドール」はですね加藤さんには何か縁の深い曲と聞いたんですが。
私この曲をちっちゃい時に知ってるんですけど3歳の時からオルガンを習ってたんです。
その中で…じゃあ思い出の曲という事に…。
先生の弾いてくれたお手本と譜面でしかないので全然背景とかどんなサイズが合ってるのかも分からないんですけど。
今日はねじゃあ是非…。
すごい楽しみですね。
思い出に浸りながら。
それではどんな曲なのかVTRを見てみましょう。
「ファランドール」は現在ではコンサートホールでごく普通に演奏される曲ですがもともとは「アルルの女」という劇の中でお芝居と一緒に演奏される「劇付随音楽」として作られた曲だったんです!「劇付随音楽」とはテレビドラマや劇でお芝居を盛り上げるためにシーンに合わせてつけられる音楽の事。
例えば映画「ミッション:インポッシブル」を例に見てみるとミッションが成功した時に…。
このように絶妙なタイミングで音楽が流れますよね!お芝居や劇を盛り上げるために切っても切れない音楽!これが劇付随音楽です。
戯曲「アルルの女」にもシーンごとにさまざまな音楽がつけられました。
フランスの作曲家ビゼーは「アルルの女」のために全27曲もの劇付随音楽を書き上げたのです。
戯曲「アルルの女」はフランスの南東部に位置するプロバンス地方を舞台にした物語です。
どんな物語なのか簡単にご紹介しましょう。
祭りでにぎわうアルルの闘技場で農家の息子フレデリは美しい女に目を奪われます。
彼は一目見ただけのその女の事が忘れられずついに彼女と結婚しようとまで思い詰めます。
しかし女が別の男と駆け落ちする事を聞いたフレデリは傷心のあまり窓から身を投げ自らの命を絶ってしまうのです。
このクライマックスのシーンで流れるのが「ファランドール」の有名なメロディーです。
この物語を書いたのがベストセラー「風車小屋だより」でその名をはせたフランスの文豪…当時33歳のビゼーは劇場支配人からドーデの戯曲「アルルの女」の劇付随音楽を書くように依頼されます。
早速ドーデの書いた本に目を通したビゼー。
ドラマチックに描かれた物語の世界に大きな感銘を受けます。
作品から多くのインスピレーションを受けたビゼーは短期間のうちに次々と音楽を作り上げていきました。
ビゼーは物語の舞台であるプロバンス地方を過去に訪れた事がありその経験も生かして地域色豊かな音楽に仕立て上げました。
(「ファランドール」)戯曲「アルルの女」の初演は芳しくありませんでした。
しかしビゼーが作った劇付随音楽は極めて高い評価を得作曲家として大きくその名をはせる事となったのです。
勉強になりました。
全然そんなお話だと知らずに…。
結構最後は劇的でしたね。
すごい楽しそうに弾いてました。
ごめんなさい。
一目ぼれした男の人が失恋して死んじゃう話ですもんね。
それを中学生の加藤さんがノリノリで弾いていた。
しかもメタリックの衣装を着てノリノリで弾いてました。
全然さみしい事なんて思わずに。
間違えた。
加藤さんは映画やドラマなんかでこの劇付随音楽ですけれど音楽で心をグッと持っていかれるっていうような事あります?ミシェル・ルグランというフランス映画界の…。
巨匠ですね。
音楽界の巨匠と言われてる方が大好きでルグランの「ロシュフォールの恋人たち」という作品があって双子の姉妹という部分でいろいろ歌ったり踊ったりするんですがどのシーンでもハラハラしたりほんとときめいたり歌いだしたくなったり「何その面白い音楽!?」っていうものがついてたり……っていうのがルグランが初めてだったんですね。
ルグランもやっぱり脚本家と仲が良くてお互いのこういうのが得意だろうとか好きだろうっていうのを多分楽しく作ってるからこそまたいい作品が残るのかなっていうふうに思いました。
さあ戯曲「アルルの女」初演で劇付随音楽の評判がとても高かったというのはVTRにもありましたけれどもそこで…コンサートホールでオーケストラで演奏しても純粋に音楽のみで楽しめるように曲を編曲しています。
それがこちらです。
4曲からなる組曲というスタイルの作品を仕上げているんですね。
劇では例えば20秒くらいの短いシーンのものきちっと聴き応えのある音楽に書き換えていたり戯曲はあまり上演されなくなっていくのでこうして組曲にした事によってコンサートで演奏されているという。
もったいないですもんね。
せっかくの音楽が。
この中にでもあれ入ってないですよね。
「ファランドール」が。
そうですね。
そう。
ここには「ファランドール」はないんですね。
実はですね「アルルの女」組曲もう一つあります。
「組曲第2番」というのが存在するんです。
1つ目の組曲と同じく4曲からなる組曲なんですがこちらにある「ファランドール」が私たちがよく知っているよく聴いている今日ご紹介している「ファランドール」という事になります。
この「ファランドール」もじゃあ…劇付随音楽でしたっけその時とは違って大きなものになってるんですかね?そうですね。
劇中の「ファランドール」というのは作品あるんですが40秒ほどの短い音楽だったんですね。
なるほどね。
なんですか?怖い怖い。
びっくりしないで下さいね。
実はですねこの組曲第2番なんとビゼーが亡くなったあとにこちらギローという人物によってまとめられた組曲なんですね。
ほんと「誰?」っていうぐらいな。
僕もねでもこれ絶対ビゼーの作品だと思ってましたよ。
えっそんな方の事を…。
じゃあ大物じゃないですか。
え〜!ギローは1837年生まれ。
パリ音楽院に学びビゼーより2年後れて作曲家の登竜門ローマ賞を受賞します。
後に教師として多くの作曲家を育てフランス音楽の発展に貢献した人物です。
ローマ賞受賞後ギローは留学先のローマに渡りますが彼を温かく歓迎したのが一足先に留学していたビゼーでした。
ビゼーはギローの事をとても気に入り2人は1か月もの間イタリア国内を旅します。
ビゼーはギローと過ごした旅の思い出を母に手紙でこう伝えています。
2人の関係は親友としてその後もずっと続きました。
ビゼーは30代の頃から持病の扁桃腺の炎症が悪化。
耳を痛め音も聴き取りにくく作曲もはかどらない日々が続きました。
そんなつらい時にいつもビゼーのそばにいてくれたのが親友ギローでした。
時にギローはビゼーにピアノを弾いて聴かせ彼を勇気づけました。
そんなギローの優しさにビゼーはいつも癒やされました。
しかしそんな友との時間も長くは続きませんでした。
ビゼーは心臓発作を起こし36歳という若さで帰らぬ人となったのです。
親友の突然の死に悲しみに暮れたギローはある行動に出ます。
ビゼーが書いた「アルルの女」の劇付随音楽からいくつかの曲を抜き出し管弦楽用の組曲を作り始めたのです。
それは生前ビゼーが残した組曲とは全く異なる「第2の組曲」でした。
それと同じくらい恐らく…生涯親交を深めたビゼーとギロー。
2人の才能が結び付き生み出した「アルルの女」は後世も生き続ける作品となったのです。
なるほど。
悲しいお話ではあるんですけど…亡くなった事っていうのが。
だけど友情をもってやっぱり…ところでギローのまとめたこの組曲第2番で実はもう一曲現在でもよく演奏されたり聴く事の多い曲があります。
ちょっとこちらを聴いてみて下さい。
いかがですか?この曲。
どっかのホテルのロビーに来たような。
お昼のカフェに喫茶店にいるような優雅な感じが。
僕と同世代だとこれ深夜放送のテーマ曲で流れていたのをみんな覚えてらっしゃるんじゃないかな。
聴いた事ある。
本当にフルートが美しく優しいメロディーを奏でている曲で私も大好き。
「アルルの女」といえばこの「メヌエット」というイメージが強いんですが実は…今日裏切られますねたくさんね。
そう。
「メヌエット」はね…あまりこのオペラも上演されないのでギローが「アルルの女」の組曲の一つに紛らせちゃった。
じゃあほんとにギローはちょっとちょっとをなんかこう大きくするのがすごく得意な方なんですかね。
「アルルの女第2組曲」と堂々と言ってますけれども全然違うオペラからこの美しいメロディーを。
なるほどね。
でもやっぱりそういうところは目利きですよね。
この曲ほんとにいい曲ですからね。
この曲が「アルルの女」と思ってる方たくさんいらっしゃると…。
もう普通は疑わないんじゃないですか?でもそれを考えると…すばらしいメロディストと作曲編曲プロデューサーというのが合体してこの曲になったという。
好みを知り尽くしたからこそその作品に手を入れてもまるでビゼーの作品のように生まれ変わっているわけです。
…っていう部分も含めてすてきな方ですね。
「実はあれ俺やったんだ!」みたいな事言わない。
名前を変えがちですよね。
「第1組曲ビゼー」だけど「第2組曲はギロー」みたいに書いてしまいがちですけども。
だからギローはね学校で教えていたパリ音楽院の先生ですからあまりそんな華々しい事好きじゃなかったのかもしれませんね。
そうかもしれないですね。
でもいい話。
面白いですね。
今日の名曲はビゼーの…この曲はもともとコンサートで演奏される音楽ではなくお芝居を盛り上げるためにつけられた劇付随音楽でした。
ビゼーには音楽を志す同士として親交を深めた友がいました。
その名は…彼はビゼーが作った組曲とは別の第2の組曲をまとめました。
その中にあるのがあの「ファランドール」です。
ギローはビゼーのメロディーをどのように編み直したのでしょうか。
美濃さんが解説します!この2つのメロディーが曲の全てといっても過言ではないぐらいなんですね。
この2つのメロディーがどういうふうに展開していくのか今日は見ていきたいと思います。
まずはこちらをご覧下さい。
こちらですね。
まず「3人の王の行列」というメロディーが登場します。
こちらは短調。
悲しい調性ですね。
これで演奏されます。
なんかこうフランスのちょっとグレーかかった感じの中にこうあるような景色が見えました。
でも王様らしい重々しさとか重厚感ありますよね。
そして2つ目に出てくるのが「馬のダンス」という。
こちらは…。
長調。
明るい調で出てきます。
楽しい感じですよね。
知ってます。
弾いた覚えがある?はい。
順番に弾いた記憶が今…。
思い出しました。
そして最後にこの2つのメロディーが合体するんですけれどもここでは「3人の王の行列」冒頭では黒くなっていて短調だったんですけれども合体した所では白くなっていて長調になっているんですね。
いかがでしょうか?合体しているの分かりました?分かります。
全然分かりました。
楽しい雰囲気に変わりますよね。
そもそもの劇付随音楽の中にも出てきて…ではあの先ほど出てきた…では衣良さんお願いします。
はい。
こちらですね。
いかがでしょうか?これギローの仕業ですか?ものすごい細かくなんか刻んできましたよ。
そうなんですね。
ギローがまとめた組曲の「ファランドール」では最後に2つの民謡が合体する前に2つの民謡がそれぞれ短調になって交互に出てきているという事なんですね。
でもどうしてギローはこういうふうにまるまる付け足したりしてこんなふうにしたんですかね?いきなり合体すると長調と短調明るい調と悲しい短調…。
いきなり合体させるとちょっと急な展開という事で唐突感が出てしまいます。
このつなぎを侮ってはいけません。
なんですか?ギローのアレンジャーの技が…。
あっそうか。
キラッと光ってるわけですね。
まず「3人の王の行列」短調なんですけれどもこれ実はテンポが軽やかになって「馬のダンス」にちょっと寄り添うような形になるんです。
冒頭最初に出てきた時は…。
かなり厳かな感じですけれどもつなぎで出てくる時は…。
軽やかになりましたね。
テンポもすごく速くなってますね。
でキーが上がって。
このようにちょっと王様が「馬のダンス」に寄せてるような。
王様が寄ってったんですね。
そしてギローの技2つ目なんですけれども今度は「馬のダンス」最初に出てきた時は白くなっていましたがなぜか色が黒くなっている。
これはどういう事かというと「馬のダンス」長調だったものが短調で出てくる。
そっちのパターンですか。
そうなんです。
もう一度最初に出てきた時の「馬のダンス」を弾いておきます。
これがつなぎの部分では…。
短調になったの分かりますか?うんうん。
ちょっとこう切ない。
明るい感じはなくなりましたね。
だいぶ年をとったか。
はい。
へえ〜。
最後に2つの民謡がいきなり合体するとやっぱり刺激が強すぎるというあたりをですねギローは合体の前に互いの民謡をミックスしやすいようにお互いに寄り添う時間を作っているという。
最後明るく盛り上がってフィナーレを迎えたいという事ででもその盛り上がる前にグッと抑えて短調であるという事でより期待感が高まって最後のフィナーレが華々しくこの対比がうまく描かれるという意味でもこのギローの技は…。
演出家みたいな雰囲気ですよね。
編曲って演出なんですね。
よりこのメロディーを引き立てるために…。
最後まで耳を持ってかせるかっていう事ですもんね。
劇的な部分ですので是非この辺りに注意しながら演奏を聴いて頂きたいと思います。
では最後に演奏をお聴き頂きましょう。
ビゼー作曲ギロー編曲「アルルの女」組曲第2番から「ファランドール」です。
(一同)うわあ〜!かっこいい!かっこいいですね。
生で聴いたら盛り上がりますね。
最後とどめ刺されましたね。
ゾワッとしますね。
いかがでしたか?今日伺って自分の知らなかった情報がどんどん全部アップデートされた中で聴いたら本当にすてきな曲なんですね。
すごく好きになりました。
すごい。
同じメロディーがよく出てくるなっていうのはあるんですけどそれもギローがきっと耳に残すためにいろいろ変えて作っていったのかなとかいろいろ思いをはせる事ができたりして。
ギローが作った短調の部分あれが最後の盛り上がりの前に入るって大きいんだなって分かりましたねよく。
上手に何かのりしろのような本当においしい衣をつけてるようなつなぎの部分というのがとても重要なんですよね。
メロディーを生かすも殺すも。
確かにね。
会話もそうですもんね。
おっ?はいはい。
いやほら美濃さんが専門的に音楽の事話してくれて僕がつなぎでどうでもいい会話するじゃないですか。
このつなぎが意外とね。
どうでもいいだなんて。
衣良さんまさかのギロー説?うん。
謙虚じゃないギロー。
衣良さんこれからも楽しいトークで番組をつないで下さいね。
「SWITCHインタビュー達人達」。
アフリカのジャングルを分け入っていくのは…。
2015/11/21(土) 21:30〜22:00
NHKEテレ1大阪
ららら♪クラシック「ビゼーの“アルルの女”から“ファランドール”」[字]
コンサートの人気曲「ファランドール」。名曲の裏に隠された意外な事実が次々と!この曲はビゼーのものではなかった!?誕生の裏には親友の存在があった!
詳細情報
番組内容
コンサートの人気曲「アルルの女」から「ファランドール」。名曲の裏に隠された意外な事実が次々と明かされる!この曲はビゼーが亡くなってから出来上がった!?名曲誕生の裏に親友ギローの存在。ギローって誰!?「ファランドール」と並び「アルルの女」と言えば思い浮かぶあの名曲!実は「アルルの女」とは全く関係がない曲だった!【指揮】川瀬賢太郎【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団
出演者
【ゲスト】加藤紀子,【演奏】指揮者…川瀬賢太郎,管弦楽…東京フィルハーモニー交響楽団,オペラ研究家…岸純信,【司会】石田衣良,加羽沢美濃,【語り】服部伴蔵門
ジャンル :
音楽 – クラシック・オペラ
趣味/教育 – 音楽・美術・工芸
劇場/公演 – ダンス・バレエ
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