大林宣彦監督“幻の唐津映画”制作へ
5日に推進委が発足
2015年09月03日 10時13分
◆構想40年、檀一雄原作
「尾道三部作」などで知られる古里映画の巨匠・大林宣彦監督(77)が、自身のデビュー作として温めていた唐津を舞台にした映画の構想が、40年の時を経て動き出す。原作は檀(だん)一雄(1912~1976年)の純文学短編小説「花筐(はながたみ)」。大林さんが脚本まで用意していた“幻の唐津映画”制作を後押しするため、5日に唐津市で推進委員会が発足する。
「花筐」は、戦前の10代の少年少女が織りなす青春群像劇を描いた1937年の作品で、若き日の三島由紀夫に影響を与えたとされる。小説の舞台は架空の場所だが、70年代半ばに大林さんが生前の檀にイメージを尋ねると「唐津なんです」と即答したという。二人は映画化を約束したが、檀は実現を前に亡くなり、大林さんは映画会社の意向で別の作品でデビューした。
大林さんは3月に唐津市内のイベントで講演した際、当時のエピソードを紹介し、「日本の素晴らしい遺産のような小説。檀さんとの約束を果たしたい」と熱い思いを語った。その様子が佐賀新聞などで報道されてから、幻の映画への市民の関心が少しずつ高まり、推進委設立の動きにつながった。
推進委は映画化に向けた市全体の機運を高めるとともに、資金調達の協力を呼び掛けていく。会長は唐津シネマの会の辻幸徳会長、副会長は唐津商工会議所の宮島清一会頭と唐津観光協会の山崎信二会長が務める。地元での動きと並行して大林監督も準備を進めており、今月末から10月にかけてスタッフとともに市内へロケ地の下見に訪れる。計画が順調に進めば、来年秋にも撮影を始める予定。
事務局の原雄一郎さん(40)は「唐津の文化、景色を映像に残して全国に発信したい。唐津のための作品が大林監督の手によるものなら最高」と話す。
発足式は5日午後6時から、唐津市の大手口センタービル3階ホールで。一般参加もできる。問い合わせは事務局、電話0955(72)3278。