(繭子)時田繭子です。
今日からお世話になります。
(麗子)うちは繊維の開発まではやってないわよ。
あなたが思ってる仕事とは少〜し違うみたい。
(南上)あなたは私に不快感を与えている。
なぜだかって?美しくないから。
(修子)Emotionのランジェリーは世界最高と断言できる。
(修子)トランクショー期待してます。
(猿橋)南上社長が納得しないものはどんなに良いものでも絶対に世に出さない。
それがうちのモットーだからね。
(繭子)社長私にも仕事下さい。
お客さまのお相手とか。
(南上)Emotionは大切なお客さまを一人失ったわ。
(南上)あなたのせいで。
(ひろみ)Emotionのランジェリーは私なんかには似合いません。
どうしてもこれを着けてもらいたいの。
うちの商品に恋をしてくださったでしょう?
(史香)たくさんの人に買ってもらうって悪くないと思うけどなぁ。
セカンドラインをやってみようと思うの。
(瑞希)実際フミちゃんみたいな人なんだよね。
古い体制を壊す人って。
すいませんこんな格好で。
(竹内)その服の何が悪いんです?
(永井)ランジェリーを作る方って自信がおありなんですね。
御社のゴージャスなランジェリーでいらっしゃればよかったのに。
ランジェリーは人目にさらすものではございません。
分かったでしょ?だからヒラヒラのレースをつけるのよ。
必要のない無駄なものよ。
でも自分のためにつけるの。
美しさは武器よ。
(繭子)200デシテックスのリヨセルなら50cm単位でいけますか?あっそっちの方が安いですね。
じゃあ今から色確認しに行きます。
はい。
よろしくお願いします。
(繭子)よし。
ハァ…あっつ。
東京あっつ!
(猿橋)このたび御社とのコラボレーションによるEmotionのセカンドラインEmbyEmotion発表第1弾のサンプルが完成いたしました。
デザイナーはこちらの西沢瑞希です。
弊社で8年間チーフデザイナー南上マユミのアシスタントを務め南上からは全幅の信頼を得ております。
(瑞希)EmbyEmotionは20代から30代のライフスタイルに上質なものを求める女性がターゲットです。
お客さまの琴線に触れるようなイメージを作り出していきたいと思っています。
お配りしているのはプロモーション用の写真の一例です。
(猿橋)違う。
こっち。
(宗介)すいません。
(瑞希)コンセプトは「美しい自分との出会い」です。
(藤村)飯田さんすいません。
ちょっとここに立ってもらえませんか?
(史香)えっ?でもそれは瑞希さんが…。
(藤村)ああいや…。
これは社内プレゼン用なんで。
(史香)ああそれなら。
(シャッター音)お〜いいですね。
飯田さんは華がある。
このまま使えそうですよ。
(史香)また藤村さん上手だから。
いやいや作ってる人のイメージは大事ですよ。
南上社長がEmの広告塔になってくれたら最高なんだけど。
(猿橋)Emはファクトリープロダクトでハンドメードではないですから。
南上はそこの線引きには厳しいんですよ。
老舗の頑固親父だな。
アハハ。
(藤村)ハハハハ…。
(南上)では今回はいつもより少しデコラティブにしてみましょうか。
(林)はい。
(南上)レースとリボンをこんなふうにあしらって。
(林)悪いわねぇいつもより手間掛けちゃって。
(南上)私も作りがいがあります。
でねここにチャームを付けたいんだけど何かカワイイのないかしら?そうですね…。
あのう…すみません。
林さまにぜひお勧めしたいものが。
(林)ああ!ちょっと…カワイイ!あっ他にもカワイイ。
こういうの欲しかったの。
(ドアの開く音)失礼します。
林さまのパーツ揃えました。
そこに置いといて。
はい。
社長大丈夫ですか?しょうがないでしょ。
今は瑞希さんとフミちゃんがいないんだから。
あの2人の穴をあなた1人で埋めようとした私が間違ってたの。
自分を恨むしかないわね。
すみませんでした。
でも…。
これをすぐに出してきたのは偉かったわ。
ああいう打てば響くような対応がお客さまを喜ばせるのよ。
わあ…褒めてくださるんですか?素直に喜びなさいよ。
はい。
あっでもあのう…。
ん?今日VANDERBILT’Sさんの方結構大事なプレゼンあったんですよね?何?向こうが気になるの?あっいえいえあのう…。
ほら社長行かなくてよかったのかな〜って。
フッ…。
何ですか?
(瑞希)ねえ。
(宗介)はい。
(瑞希)3カ月後の売上見込みの数字が前の会議のときのまんまで直ってない。
(宗介)すいません。
(瑞希)あと販売価格は決定じゃないから予定って入れとかないと混乱するでしょ。
(宗介)すいません。
(瑞希)ハァ…。
(瑞希)フミちゃん。
また藤村さんに乗せられてない?
(史香)えっ?お願いだから冷静にね。
(猿橋)瑞希さん。
万事うまくいってます。
大丈夫ですよ。
(瑞希)大丈夫って何よ?
(猿橋)いやちょっと…。
きついのかなって。
きついわよ。
第1弾で発表するシリーズは当初3つのはずだったでしょ?なのにフミちゃん藤村さんに乗せられていつの間にか5シリーズよ。
それでデザインから素材調達から丸投げじゃない。
瑞希さんだからここまでできたんですよ。
やめて。
喜ぶとでも思ってんの?とにかくフミちゃんを落ち着かせないと。
あの藤村って人もあれ調子いいだけだから真に受けるとこの先Em自体がおかしくなるわよ。
参ったな…。
(瑞希)何が?プレッシャーでピリついてるのかと思ったら至極冷静。
(麗子)おはよう。
おはようございます。
(麗子)このところみんないなくて寂しいわね。
あっ…Emの発表もう少しですからね。
(梶)え〜俺がいるからいいじゃないですか!
(梶)マユちゃん先輩今日もカワイイっすね。
はい。
今日も頑張ってね学生さん。
は〜い。
(麗子)社長もねぇバイト雇うならもっと…ねえ?大学4年で就活しなくていいなんてのんきなご身分よね。
でも社長大丈夫でしょうか?Emotionの注文全部一人で仕上げてますけど。
(麗子)そこは意地でも作るでしょあの人は。
まあそうですよね。
マユちゃん一人だけEmotionの方に残されてつまんないんじゃない?いえ全然!私そんな気持ちまったくありま…。
お願いします。
Emに関わらせてください。
来ると思った。
社長の作業に支障が出ないように生地とパーツの調達はきちんとやります。
だから…。
駄目。
セカンドラインを立ち上げるプロセスをこの目で見たいんです。
勉強したいんです。
あなたね目の前にいらっしゃるたった一人のお客さまに売るより100人のお客さまに売る方がすごいとか思ってる?いいえ。
同じ物差しでは測れません。
目指してるものがまったく違いますから。
正解よ。
お〜あなたもEmotionの人になったのねぇ。
ちゃかさないでください。
でも数のダイナミックさに引かれる気持ちもあるわよね?まあ…大勢の人と一緒に大勢の人に好かれる物を作るって面白いだろうなとは…。
それも正解。
でもここがこらえどころなのよ。
こらえどころ?ハァ…。
・
(足音)お疲れさまです。
何か探し物ですか?
(宗介)いたんだ。
フジックスのカタログ探してて。
ああそれなら…。
はい。
(宗介)ありがとう。
これは…。
あああのう…。
実習室っていうか自主トレっていうか…。
マユちゃん勉強してたんだ。
私服飾の学校出てないから知識もないしデザインもパターンも縫製も何にもできないから。
駄目だなぁ…。
はい。
ああ…違う違う!僕。
えっ?社長これ見たら感心するだろうね。
え〜どうせ嫌み炸裂ですよ。
焼け石に水って。
ハハハ…。
社長は完璧主義だからね。
あっでも…社長って昔何か失敗でもしたんですかね?えっ?何で?何か「こらえどころ」って…。
あっいや…。
いいんですいいんです。
うん。
(藤村)社内プレゼン評判いいですよ〜。
何でもっと規模大きくしないのかって上にせっつかれちゃって。
予定販売数が1シリーズ100って百貨店目線だと信じられない少なさなんでね。
ハッハッハッハ。
(猿橋)高評価はありがたいですが…。
これ仮の話ですけど全国展開するとか考えられませんか?売り場の設置費用をうちが持つとしたら1シリーズ1,000とか作れませんかね?これ必ずヒットしますよ。
ってことは5シリーズで5,000!?
(猿橋)いや生産数増やすなんてうちの南上が許しません。
(藤村)う〜んライン生産も確立できてるのにわざわざ小規模にとどめておくなんてビジネスではあり得ない。
(瑞希)もうやめましょう。
それじゃああの小さな店と何も変わらないじゃないですか。
EmbyEmotionは素晴らしい商品です。
Emなら私は自信を持って全国のお客さまにお勧めできます。
あなたはシグネチャーブランドだって立ち上げられる人です。
お言葉だけありがたく頂戴します。
でも現実的じゃないですよ。
いいな〜私もそんなふうに言われたい。
フミちゃん。
飯田さんにはオーラがある。
世の女性たちが憧れるファッションアイコンに成り得る存在ですよ。
うわっ何かさらっとすごいこと言った。
聞いてる方が照れますよ。
少し盛り過ぎた?かな?
(史香)え〜?
(藤村)ハハハハハ。
えっ?Emの仕事もしたいって言ったの?社長に?マユちゃんすごいね。
いや今の仕事が物足りないわけじゃないんですよ。
でも自分にできること少なくて何か心苦しいっていうか…。
結局社長は全部一人で作れるし。
僕だってそうだよ。
僕なんかいなくても猿橋さん一人いれば十分だし。
ああ…こんなグジグジ言ってちゃ駄目だよね。
やれることやるしかないもんね。
はい。
あっこれデパ地下で試食したらおいしかったんだ。
食べていいよ。
おいしそう。
でもちょっと…。
ああいいよいいよ。
はい。
う〜んおいしい!でしょ?あら〜仲いいのね。
うらやましい。
え〜…。
ほんなんじゃないですよ!ですよ。
そんなんじゃないですよ。
10月のトランクショーはこの2人にプロデュースを任せようと思うの。
(繭子・宗介)え〜!?
(史香)へぇ〜結構チャレンジング。
社長何かあったんですか?物理的な問題。
今私注文の品作るだけで手いっぱいなのよね〜。
その上…。
(麗子)ショーのプランニングまでしたら社長体壊すわ。
もう若くはございませんのでね。
(猿橋)Emが落ち着いたら瑞希さんとフミちゃんにもまた戻ってもらえると思いますけど。
すみません今は無理です。
分かってる。
だから今回だけショーの演出や進行はこの2人に任せようと思うの。
いいことよ。
若い人は挑戦させなきゃ。
ねえ?
(梶)あっじゃあ俺も!
(麗子)あんたは黙ってなさい。
案外ムード変わっていいかもしんないですね。
じゃあ決まりね!もちろんショーのテーマは私が決める。
あなたたちの最初の仕事はその材料集めよ。
私の制作意欲をかき立てるようなテーマを探し出して企画書にして出して。
(宗介・繭子)はい。
頑張れ。
(宗介)春夏物の過去5年間のラインアップはこんな感じだね。
「出会い」「ボッティチェリの春」「リゾート」「ゴッホのひまわり」なんてのもあるんですね。
やっぱりアート系で攻めた方がいいのかな?ですね。
美術館とか回ってみます?外国のイメージ使うのはどうですか?あっリオのカーニバルとか。
(宗介)ああブラジルは健康的な下着のイメージがあるよね。
夏っぽいし。
(宗介)うん。
あっこういうキューバやプエルトリコのサルサもいいよね。
あとニューヨークのレイ・バレットなんかはショーの音楽にしたら案外都会的な雰囲気も出るかも。
サルサか…。
へぇ〜宗介さんって音楽詳しいんですね。
でもラテンカルチャーをビジュアル化するのって難しくないですかね?
(瑞希)杏奈。
どうしたの?急に。
(瑞希)おなかすいた?ご飯食べてこうか。
(杏奈)う〜んご飯はいいからさ…。
(瑞希)うわっきた。
きたきた。
今度は何?サンダルはこの間買ったでしょ…。
コスメ?もう何でもママの使えばいいじゃない。
(杏奈)使えないよ。
サイズ違うし。
ママのは全部Emotionの超高いやつじゃん。
えっ?
(杏奈)ブラが欲しい。
みんなカワイイの着けてるの。
あっ…。
(杏奈)今ママ作ってるんでしょ?安くてカワイイブラ。
ママのデビュー作なんでしょ?お願い!1枚ちょうだい。
駄目?駄目じゃないよ。
ちゃんと買ってプレゼントするわよ。
(杏奈)やった〜じゃあ体育のときめっちゃ自慢しよう。
そうしたらママのブラもバカ売れするかもね。
(瑞希)お〜ホントに?
(史香)2月号2月号…これだ。
ハァ…あ〜もう。
何か…すごいですねラテンカルチャー。
ねっ。
(男性たち)踊りましょう。
えっ!?
(男性たち)来て来て…。
(宗介)踊りませんって!
(繭子・宗介)おおお…!ごめんね!ごめんね!ごめんなさい!ごめんなさい!
(宗介)ごめんごめん…。
・
(ドアの開く音)・
(梶)おはようございまーす。
(宗介・麗子)おはよう。
(麗子)あんたは掃除!
(梶)えっ!?えっちょっ…。
どう?トランクショーのテーマは。
昨日企画書出しました。
もう?仕事早いじゃないの。
ハァ〜…。
ああ…。
私としたことが徹夜なんぞしてしまったわ。
ああ…お肌が〜…お肌が。
麗子さんごめんなさい一度うち帰りたいんだけど。
(麗子)いいですよ。
午前中は大丈夫です。
じゃあ頼むわね。
あっああ…あの!社長社長。
あのうトランクショーの企画書は…。
ああ。
ごめん。
ぴんとこない。
駄目ですか…。
せっかくラテンを押していくならもっと情熱的というか胸の高鳴りみたいなものを表現しないと駄目でしょ。
あなたたち真面目過ぎるのよ。
音楽のルーツ解説してどうすんの?これじゃ色も絵も浮かばない。
何かこう…。
そう。
Emotionがない。
へっ?じゃあね。
すぐにパックするわ。
気持ちはEmotionなのに。
1920年代とかも好きそうですよね社長。
(宗介)うん…。
でも今回はパスかな。
ことしのパリ国際ランジェリー展のテーマが「グレート・ギャッツビー」だったから似ちゃうよね。
そうなんですね。
『オリエント急行殺人事件』をモチーフに1930年代を意識したラインのブランドもある。
秋冬物だけど案外何でもありなんだよね。
すっごい勉強してますね。
僕も自主トレしようと思って。
えっ?ああ…いや。
いやでもさ「Emotion」って実際何なんだろうね。
う〜ん…。
(三木)あのう…ちょっといいかな?あっ三木さん。
どうぞどうぞ。
(三木)あのねアートをこつこつ勉強するのも悪くない。
でも昨日今日業界に入ったど新人が知識から探ってもクリエーティブなテーマなんか浮かびっこないと思うのね。
あの…アパレル関係の方とかですか?ああ…僕のことはいいから。
あのねマユちゃんこういうときは盗むの。
盗む?何を?どこから?あとは教えない。
2人仲良さそうで悔しいから。
(山)あっ三木さん三木さん。
お気に入りの由梨ちゃん。
(由梨)こんばんは。
(三木)あっ由梨ちゃん。
(山)いらっしゃい。
(三木)座って座って。
お邪魔しました。
あっ…えっと地元の友達の由梨です。
一緒に上京してきて。
(宗介)ああよく話してる。
会社の先輩の姫路宗介さん。
どうも。
(由梨)マユがいつもお世話になってます。
いやいや…僕はそんな。
ああじゃあそろそろ行くね。
(由梨)えっ!?いいですよ。
まだ途中だったんじゃ?
(宗介)いいんですいいんです。
じゃあ今日回ったとこまとめとくから。
あしたまたね。
はい。
(山)じゃあね。
また。
(山)どうぞ。
(由梨)ちょっとちょっとちょっと!何?宗介さん?いい感じじゃん。
はっ?よくあるのよ。
職場でチーム組まされて一緒に仕事していくうちに好きになっちゃうって。
何言ってんの!?ないよそんなの全然。
(由梨)え〜?さっきの雰囲気絶対そうだったから。
もう由梨は何でもそういうふうに見えちゃうんだよ。
マユもない話じゃないわけだからね。
宗介さん。
それはありま…せん。
(麗子)どうしたの?頭痛いの?ああ…アイデアが浮かばなくて。
Emotionの。
ハァ…。
駄目だ。
ごめんマユちゃん。
あっはい!
(宗介)これから銀行なんだ。
戻ったら僕も考えるから。
分かりました。
いってらっしゃい。
・
(猿橋)どうした?いえいえ…。
じゃあしばらくお借りするよ。
何意識してんの私!もう由梨が変なこと言うから。
何を意識してるって?えっ!?いや…いや別に何も。
あれ?社長ご自分でコーヒー入れるんですか?しょうがないでしょ。
あなたも忙しいんだから。
えっ…。
何よ?いえあのう…。
う〜んいい香り。
あのう社長。
もう何よ?社長はどういう気持ちでランジェリーを作ってるんですか?またどストレートな質問ね。
どういうときに作りたいって思うんですか?こういうランジェリー作りたい!って。
そんなこと急に聞かれたって…。
分かんないわよ。
いい香り。
お願いします。
このとおりです。
(瑞希)そんな深刻な話だったんですか?だってこの間は…。
(藤村)私も立場上VANDERBILT’Sの意向には沿わなきゃいけないんです。
もしこのまま1シリーズ100しか売らないって貫くとこの話自体が…。
なくなるんですか!?そんな…。
数を増やすなんて無理です。
うちの社長知ってますよね?ああいう人ですよ。
南上を説得できればこの話は進むんですか?フミちゃん。
またどうして簡単にこの人の話に乗っかるの?瑞希さんこそどうして同じこと繰り返すんですか?えっ?
(史香)前のトランクショーでも最後の最後でデビューできなかったでしょ?いい物作ってたのに。
シグネチャーブランドも立ち上げられる実力を持ってるのにそれで本当にいいんですか?Emは規模を大きくして全国展開したいと思います。
(猿橋)待て。
俺は聞いてない。
この間のあれは藤村の勝手な希望だろう?このままだとEmの話自体がなくなるって言うんです。
はあ?
(瑞希)私それだけは…。
藤村の話真に受けるなって言ったの瑞希さんでしょ?大丈夫です。
今でも十分に向こうにメリットがある。
やめるはずがない。
(史香)だけどそこそこの値段で作って10人だったお客さまが100人に増えてもそれって藤村さんが言うとおり今までと何も変わりませんよね?セカンドラインをつくる意味ってランジェリーの魅力を日本中の女性たちに伝えることじゃないですか。
それならもっと広く認知してもらわなきゃ意味がありません。
言っていることはよく分かるわ。
要するに世の女性たちに響く売り方をしなきゃいけないと思うんです。
具体的にどうするの?憧れに火を付けるんです。
フッ…。
言葉はエモーショナルね。
(史香)強いブランドイメージをつくるんです。
イケてる女の子はEmのブラを着けてなきゃ駄目だぐらいの。
それで世の中に一気に火を付けるんです。
瑞希さんの考えは?私は…。
やみくもに規模を大きくするのは危険だと思います。
でもターゲットを広げるという戦略は私も賛成です。
今は中学生ぐらいの若い女の子もおしゃれなブラジャーを欲しがります。
ティーンの子は何でも憧れから入るし。
女性は憧れから物を買います。
あの人みたいになりたい。
あの人とおんなじ物を持ちたい。
それが女性が何かを買う一番の理由です。
その気持ちをくすぐれば商品は必ず売れます。
売れるでしょうね。
でもあの人みたいになりたいとかあの人と同じ物が欲しいなんてお客さまに思ってもらいたくない。
ましてやこれを持ってなきゃ駄目だなんて上から目線で押し付けるようなこと物を作る人間としての道を逸脱してると思わない?それはそうですけど…。
決めるのはお客さま。
私はお客さまにいい物を自分で選ぶ目を持ってもらいたいの。
(史香)最初からいい物を選ぶ目を持っている人がこの世の中にどれぐらいいますか?いい質問ね。
誰も何も分かっちゃいませんよ。
何を選んでいいか誰も分からないんです。
だったら安心させてあげるのは悪いことじゃないでしょ。
これさえ買ってれば間違いない。
それがブランドの力なんじゃないですか?正論ね。
でもそこにストーリーはあるの?はっ?これさえ買っていれば間違いないという商品にストーリーはある?
(史香)ストーリーって何ですか?私は単純に春だからという理由だけでグリーンとイエローのカワイイブラを作れと言われても作れない。
だけど17歳の女の子が初デートに着けていくブラを作れと言われたらすぐに作れる。
女の子の顔が見えるから。
そこにストーリーが見えるから。
決して見せるわけではないけれどちょっと大人っぽいものを着けてみたい。
だけど17歳だからあんまりセクシーじゃ自分で笑っちゃう。
だから涼やかで元気なタンポポみたいなブラを作りたいと思う。
グリーンとイエローの。
すごく分かります。
お金を出して何かを買おうとするときお客さまには必ずストーリーがあるの。
たとえ直接顔を合わせることはなくてもそのお客さまの今の気分をすくって物を作る。
それが奉仕する作り手の姿よ。
お客さまを盲目にしてこれさえ買っておけば間違いないと教え込むなんておこがましいわ。
(ドアの開閉音)
(宗介)どうした?Em大変そうですね。
うん。
でも分かりました。
えっ?これですよ!えっ?お前ら何やってんの?何これ…どういうこと!?はい?あ〜何でそっち行くんだよバカー!
(猿橋)えっ?好きって言いなさいよ〜!
(繭子・宗介)あー!きたー!キスきたー!俺は俺の仕事するしかないかな。
これでどうですかね?ちょっと右にも…してもらっていい?これぐらい?
(宗介)ああいいね。
どうですかね?今寝てましたね?寝てません。
ふーん。
(繭子・宗介)できた〜!説明してくれる?今回のトランクショーのテーマは…。
「ストーリー」です。
どんな女性にもストーリーがあります。
特に出会いの春やアクティブな夏には新しいストーリーが生まれます。
これからどんな展開になっていくんだろうというドキドキ感がテーマです。
ふーん。
一番の目玉はそれぞれの商品に具体的な物語をつけることです。
社長のおっしゃってた初デートや長い片思いの末の告白とか。
恋愛に特化するの?それじゃちょっと稚拙過ぎないかしら…。
恋愛は一例です。
ただ一番受け入れられやすいのは確かです。
胸キュンストーリーは普遍的ですからお客さまを瞬間的にキャッチするには妥当なテーマだと思います。
ふーん。
ショーの中で新作を10セット発表するなら6〜7セットが恋愛がテーマのストーリーでも飽きさせることはありません。
なぜなら彼女たちのストーリーには間違いなくEmotionがあるから。
「ストーリー」ね…。
いいわね。
えっ?ホントですか?まっ私が言ったんだけどね。
(繭子・宗介)はい。
それにストーリーはこれから始まるものだけじゃないわ。
過ぎ去った時間にもストーリーはある。
忘れられないストーリー。
胸にしまっておくストーリー。
最後の一つはそれを表現したいわね。
いいショーになりそうね。
(宗介・繭子)はい。
(繭子・宗介)やったー!イェイ!イェイ!イェーイ!ちょっ…ちょっとマユちゃん先輩!いった〜…。
(麗子)残り拭きなさい。
胸にしまっておくストーリーって?知ってるくせに。
あなたにだってあるでしょ?一つや二つ。
そうね。
あるわね。
まっ長いこと生きてると色々あって困るわね。
そうよ。
でも忘れた。
あっ忘れた忘れた。
忘れようとしなくても忘れちゃうしね。
何でここ来たんだろう今。
販売促進部の佐川部長とお話させていただきました。
プロジェクトが消滅するなどという脅し文句で無理やり全国展開を承服させるような手法をそちらがとるならこちらもこの話はなかったことにしますとお伝えしました。
Emotionはヒット商品を作りたいわけではありません。
われわれが美しいと思える商品をわれわれが納得できる形でお客さまにお届けする。
数は問題ではありません。
まるで宗教だな。
フッ…南上教だ。
私も崇拝者の一人なので。
分かりましたよ。
ご理解いただけてうれしいです。
(藤村)でもさぁ猿橋さん…。
ビジネスはそんな奇麗事じゃないよ。
帰るか。
今回のショーに出ていただくのはあなたとあなたと。
え〜と…。
あなた。
(宗介)う〜んいいかも。
ですね。
いいっすね〜。
おっなかなかおしゃれじゃないの〜。
瑞希さんとフミちゃん来てませんか?今日も向こうじゃないの?けさこっちに来てもらうように言ってたんだけどなぁ。
出ないなぁ…。
電車とか乗ってんじゃないですか?
(猿橋)う〜ん…。
・
(男性)すいませんバイク便です。
(麗子)はーい。
着々と進んでますなバカップルチーム。
(繭子・宗介)バカップルじゃありません。
ですよね〜?あ〜…肩が動かない。
ちょっとはり行ってきていいかしら?
(麗子)何かしら?あなたによ。
もう腕上がんないのよ。
開けて。
(麗子)はいはい。
社長肩もみましょうか?あ〜ありがとう。
ハァ…。
うん?えっ!?どうかしました?「新ブランド発足のお知らせ」「拝啓時下ますますご清祥のこととお喜び申し上げます」「このたびVANDERBILT’STOKYOはプライベートレーベルVANDERBILT’SFactoryを発足させる運びとなりました」「その第1弾といたしましてランジェリーブランド…」VANDERBILT’STOKYO…?えっ!?
(宗介)瑞希さんと史香さん…。
「女にはストーリーがある」何これ…どういうことですか!?えっ…。
いらっしゃいませ。
(店員)何かお探しですか?えっ…あっ…。
こ…このブラジャー下さい。
あっ…か…花粉症なんです。
秋の。
ブタクサ…ブタクサです!
(店員)今お持ちいたします。
少々お待ちくださいませ。
(修子)「ストーリー」というコンセプトはいつどのように生まれたんですか?Emotionにいたときに社長の南上とマーケティングの話になってそのときに「ストーリー」というキーワードが出てきました。
(修子)ではSTORYは南上社長の発案ということですか?えっと…。
(史香)インスピレーションを得て今の形にしたのは私たちです。
南上社長とは関係ありません。
(修子)お二人は南上社長とは決別したんでしょうか?いや…決別も何もSTORYは若い世代の方々をターゲットにしたまったく新しいブランドです。
商品も生き物ですから時代と環境にマッチした新種が生まれるのは当然です。
まるでEmotionを淘汰するような言い方ですね。
ハァ…。
マユちゃん行ってきたんだ。
はい。
ちょっと前に。
どんな感じだった?見ていい?すごくいい感じのお店でお客さまも大勢。
そっか。
へぇ〜奇麗ね。
もうやめなよこんなの見んの。
「女性一人一人が隠し持つストーリーを表現しようと思った」よくこんなこと言えますよね。
商品もコンセプトも全部Emotionのじゃないですか。
なのに…。
これも。
これもこれもこれもこれもこれも!何で…。
マユちゃん何冊買ってきたんだよ?ランジェリーの記事なんて今まで一つも載せてなかったくせに。
「イケてる女子はみんな『STORY』」何これ。
いいじゃない。
STORY。
ふ〜ん。
「女なら中身にこだわれ」そのとおりよ。
社長…。
久保さまと林さまのできたからフィッティングにいらっしゃれる日を伺っといて。
はい。
(麗子)じゃあご注文頂いてる分はこれで全部?できたわね。
あ〜これでやっと休めるわ。
あら?うん。
これおいしい。
これどこの?どこのでもいいでしょ。
あら?機嫌悪い。
社長は何でずっと何にも言わないんですか?こんなことになって。
よかったじゃない。
ランジェリーの記事が増えて。
何言ってんですか?私たち全部盗まれたんですよ。
何を?えっ?それを作ったのは瑞希さんでしょ。
でもEmotionのテイストそのままよ。
そうですよ。
「ストーリー」っていうコンセプトだって。
「ストーリー」って言葉が商標登録されてるわけじゃないでしょ。
こっちはこっちでやればいいじゃない。
えっ?ショーの招待状はまだ印刷してなかったわよね?
(宗介)はい。
ストップしてます。
日にちを変更して作って。
トランクショーは決行よ。
テーマは「ストーリー」さあさあ時間がないわよ。
頑張りましょう。
あっ…また作んなきゃいけないのね。
あ〜地獄地獄。
ですよね…。
こっちが先だって言ってやりましょうよ。
できますよ!コンセプトもショーの進行も全部決まってるし。
材料も手配してあります。
モデルさんたちも準備万端です!やるぞー!おー!
(猿橋)ご迷惑をお掛けしてすいません。
違約金と言っては何ですけど…。
(男性)頂くのも気が引けるんだけどもうちもほら工場も人も空けて待ってたもんだから。
いやこれ当然の金額で。
今月中には振り込みます。
大丈夫なの?会社畳むなんて言わないでよ。
いやいやいやそんなことは。
ハァー。
ただいま。
おかえりなさい。
(宗介)お疲れさまです。
どうしたの?お前ら。
やるんですよトランクショー。
(猿橋)えっ?テーマは「ストーリー」です。
マジか…。
(繭子・宗介)はい。
お願いします。
173通です。
(女性)はいかしこまりました。
招待状出してきました。
ええ。
このまま恵比寿で宗介さんと合流して照明の打ち合わせしてきますね。
はい。
はい。
じゃあ。
あっちょっちょっと!ちょっと!
(アヤ)はい?危ないですよ。
どうしたの?お嬢さん。
ああ道に迷ったのね。
どこ行きたいの?教えてあげましょうか?えっ?
(アヤ)この辺面白いでしょ。
昔っからのお店が多いから。
ああここのねどら焼きおいしいのよ〜。
テレビにもよく出てるわよ。
あっちょっ…。
あのう…おばあちゃんおうちはこの辺なんですか?うん。
近くよ。
近く。
もう50年以上も銀座一筋。
生き字引よ。
フフフフ。
ああ着いたわ。
えっ?あんたが来たがってた焼き鳥屋ここでしょ?親子丼がおいしいのよね。
すいてる時間でよかったわね。
じゃあね。
あっちょっちょっと。
ん?なあに?あのう…。
ごめんなさい。
ちょっと。
あっフフフ。
お姫さまになったみたいだわ。
よし。
ありがとうございました。
助かりました。
お昼ちゃんと食べてお仕事頑張んなさいよ。
はい。
うん。
よし。
あと3体。
奇麗だなぁ…。
よし。
みんなを呼んで。
いや…ちょっと待ってください。
分かりました。
えっ?いやちょっと…。
(麗子)ちょ…ちょっと見せて。
「御社の新商品およびショーに使用されるサンプルは当社VANDERBILT’STOKYOの自社レーベルSTORYの商品と酷似しており販売戦略のコピーその他印刷物においてもその盗用が疑われ当社の権利を著しく損ねるものと判断いたしました」訴えるって冗談じゃないですよ!向こうが盗んだくせに!返り討ちにしてやればいいんですよ。
そうですよ。
裁判上等。
こっちが先だって法廷で証明してやりましょう!それが無理なのよ。
どうしてですか?裁判費用が半端ない。
長引く可能性もある。
それにこういうのは後から世に出た方が圧倒的に不利だ。
もともとはうちが先です。
印刷会社さんとかモデルさんとかに証人になってもらいましょうよ。
客観的証拠になるかどうか…。
じゃあどうすればいいんですか?和解の条件として向こうはトランクショーの中止を求めてる。
えっ?
(麗子)「ストーリー」で対抗されちゃ困るってことか。
(猿橋)下手に強行して裁判で負ければ高額の損害賠償を求められる。
そうなったらEmotion自体が確実につぶれる。
トランクショーは中止しましょう。
2人ともここまでよくやったわ。
ありがとう。
大丈夫?すいません。
でもどうして?納得できません。
瑞希さんも史香さんもこんなことするような人じゃないでしょ。
いや〜分からんよ。
女は。
怖い生き物だから。
あの2人が結託してるってこの俺が気付かなかったんだ。
あああれだな。
浮気男ってこんなオチだったりするよな。
女2人だましてるつもりが最後は女同士がつながってて地獄に落とされるっていう。
ハハハハ…。
何でそんなふうにちゃかすんですか!?しゃれになんなかったか。
猿橋さんっていつもどっかはすに構えてて物事真面目に捉えないんですよね。
でもそれってきつい状況真に受けて傷つくのが怖いだけなんじゃないんですか!?逃げてるだけなんじゃないんですか!?
(宗介)マユちゃん…。
猿橋さんだってあれだけEmに力入れててずーっと一緒にやっててこんな仕打ち悔しくないはずないでしょ。
だったら悔しいって言えばいいじゃないですか。
カッコ付けてないで!別にビジネスではよくあることだよ。
どういうことですか?Emotionを訴えるって。
リスクヘッジですよ。
実際裁判になることはない。
STORYを守るためですか?そのとおりです。
発売1週目で予定数のほぼ2倍売れた大ヒット商品ですよ。
銀座だけじゃない。
全国で。
ここでケチがつくのは会社としては避けたい。
確信犯って怖いですね。
えっ?
(瑞希)そもそもSTORYはEmotionが…。
(藤村)あ〜すいませんあのときは。
私が先走ってしまって。
嘘。
計算ずくでしょ?だとしたらどうするんですか?えっ?
(藤村)証言でもしますか。
全部われわれが盗んだって。
(史香)もう引き返せないんですよ。
いいじゃないですか。
お嬢さんだって喜んでるんでしょ?雑誌全部買ってる。
お小遣い少ないのに。
いい子ですね。
そうよ。
自分が作った物ですよ。
こんなに売れてうれしくないんですか?うれしいわよ。
でもこんなやり方…。
私は違うな。
プロセスはどうあれ今の成功は私が10年前に夢見たとおり。
こんなふうになりたかった。
こんなふうに日本中の女の子が私が作った物を身に着けるのが夢だった。
だから全然後悔してない。
私はこのまま行ける所まで行く。
ホントにすみませんでした。
(沙里衣)もういいよ。
大丈夫だから。
いやでもこれは仕事だから。
そうだね。
仕事がなくなったのは残念。
悔しいよ。
でもマユの気持ち分かるから。
もう1カ月ですか。
新規の注文がなくなってから。
やっぱりトランクショーの中止が痛かったわね。
でもシーズンごとに買ってくださってる方も注文ゼロって…。
(梶)STORYに持ってかれちゃったのかな…。
痛っ!あっ…すいません。
林さまと久保さまの分で入金は最後…。
たぶんこれかなりまずいわ。
Emを立ち上げるときうちだいぶ借金しちゃってるはずだから。
えっ?
(猿橋)事業計画書は以前お出ししてますので今日は売り上げ計画書それに収支のシミュレーションをお持ちしました。
今後1年間の販売目標額と…。
いや…熱意は分かります。
とても。
でも追加融資はちょっと厳しいでしょうね。
どうして…。
(男性)聞いてるんですよそちらの事情。
訴訟を起こされてるって。
えっ…。
(男性)これはねぇ非常にまずいですよ。
いやそれは今もう和解の方向で…。
(男性)流れしだいでは当行としても回収の方に回らざるを得ない。
(猿橋)ちょっと待ってください。
今日は追加融資の話に来たんです。
融資の引き上げなんて聞いてない。
そんなことされたらうちはつぶれる!ハァ…。
やっぱり訴えられたっていうことが大きいわね。
取引先への支払いと返済が重なる上に入金がゼロじゃ…。
私が甘かったんだわ。
事業を広げればお金の規模も現金商売とは訳が違ってくる。
Emの損失は自分にも責任が…。
いいえ。
経営者は私よ。
(ドアの開く音)
(麗子)ごめんなさい。
ちょっと…。
話があるって宗介君が。
すみません勝手なこと言っちゃって。
こんなときに言うのもどうかと思うんですけど僕ずっとこの仕事向いてないなって思ってて2年いても女性の下着全然慣れないし。
僕どうせお荷物かなって。
でもお前ここんとこすごい頑張ってたじゃないか。
(宗介)だからちゃんと自分の仕事だって思えるもの探したいんです。
辞めさせてください。
(宗介)急にすみません。
お願いします。
(麗子)あっ!びっくりした!大丈夫?最低だわ。
社員に気を使わせるなんて。
宗介君?彼はEmotionのためを思って辞めた。
私また同じことしてる。
大事な仲間につらい選択をさせてまた同じ壁を越えられない。
このまま進んでいいのかしら?みんな分かってますよ。
違う。
誤解してるよ。
僕はEmotionの戦力になりたかったのになれなかったからそれでいじけて逃げ出したんだ。
違います。
何で断言できるの?だって宗介さんはちゃんと仕事して…。
逃げ出すって言ってもあれだな。
猿橋さんには…。
一度ぐらいは認めてもらいたかったなぁ。
結局最後まで僕はあの人の役に立てなかった。
だったら認めてもらえるまでやりましょうよ。
本心なんだよ。
えっ?ちゃんと自分の仕事だって思えるものを探したい。
僕はこれをやってくんだって仕事がしたい。
やっとそう思えるようになったんだ。
駄目かな?それはEmotionじゃないんですか?Emotionじゃない。
楽しかったね色々。
ギャラリー行ったりサルサ踊ったりね。
そんな顔しないで。
マユちゃん合ってると思うよEmotion。
だから頑張れ。
(梶)ちょっと…ちょっちょっと。
ちょっ…ちょっと。
そんなんでお客さん来ますかね?何弱気なこと言ってんの。
やるしかないでしょ。
はい。
一人でもお客さまに来てもらわなきゃ。
お願いします。
お願いします。
お願いします。
ありがとうございます。
お願いします。
けなげ…。
カワイイ…。
(梶)あっよろしくお願いします。
お願いします。
(梶)お願いします。
お願いします。
お願いします。
お願いします。
(梶)オーダーメードのランジェリー作ってます。
(梶)お願いします。
(梶)よろしくお願いします。
ちょっ…ちょっ!
(梶)よろしくお願いします。
ありがとうございます。
あれ?マユちゃん先輩?ふーん。
じゃあおばあちゃん芸者さんだったんですか?そう。
昔はね。
今はお三味線の先生よ。
へぇ〜。
お嬢さんお仕事は?ん…私はランジェリー…。
あっ…。
女性の下着を作ってます。
(アヤ)わ〜奇麗ねぇ。
あっでもごめんなさいね。
私ほらいつも着物だからブラジャーは着けないのよ。
あ〜…。
いいんですよ。
あ〜でも懐かしいわ。
昔主人とダンスに行くことがあってね。
ダンス?私ちゃんとした下着を持ってなくてこの近くのよく前を通り掛かってた下着のお店に主人と買いに行くことになったの。
そこの若くてカワイイ女の子の店員さんがすっごく丁寧に私に合うブラジャーを作ってくれた。
あっそれって…。
主人からの唯一のプレゼントで今でも大事にしてるの。
ボロボロになっちゃったけどちゃんと持ってるのよ。
あのう…。
(弁護士)では私は次の裁判があるのでここで。
(猿橋)よろしくお願いします。
・
(ドアの開く音)
(猿橋)どうも。
(藤村)ご無沙汰してます。
和解案頑張って作ってるじゃないですか。
(猿橋)ええ。
有能な企業内弁護士チームが常時面倒見てくれるお宅さんとは違うんで色々厄介ですよ。
(藤村)いい弁護士を紹介しましょうか?
(猿橋)ハハッ。
まったく悪びれるところがない。
ここまで堂々とやられるとひきょうという言葉の使い方も迷うな。
ひきょう?それは違う。
「数は問題ではない」とおっしゃいましたよね?数は問題なんですよ。
資本金にしても売上高にしても提携企業や社員数顧客の数でもVANDERBILT’SとEmotionでは規模が違う。
それはそのまま力の差です。
その差は正義や理念なんて柔なもんじゃ太刀打ちできない。
覚えておいてください。
数は力です。
数に力があれば誰も知らない小さなメーカーから多少アイデアを拝借してもそんな事実は容易にひねりつぶせる。
それをひきょうと言うんじゃないのか?まだお分かりになっていないようですね。
ビジネスは奇麗事じゃないんですよ。
言ったでしょ?そうここよ。
あ〜懐かしいわ。
どうぞ。
いらっしゃいませ。
大野さま。
えっ?えっ?おばあちゃん大野さんっていうの?何年ぶりでしょう。
またお会いできてうれしいです。
ああ…あなたあのときの子ね?ええ。
どうぞ。
(麗子)来る前に連絡くれて助かったわ。
あの後30年前の顧客リストをすぐ出してきて。
ストックルームを片付けてくれてたからね。
それで。
これですぐに分かったんですか?社長。
芸者さんは珍しかったんじゃない?それでもすごいですよね。
懐かしいですか?ありがとうございます。
失礼します。
(アヤ)これなんだけどね。
(アヤ)古いでしょう?もう30年も前のものだものね。
本当にありがとうございます。
こんなに大切に使っていただいて。
このレースの所がねほつれちゃって。
でも捨てる気になれなくって。
ご主人さまの思い出ですものね。
そうなの。
お直しさせていただきます。
ちょっとだけ今のお体の具合を見てもよろしいですか?あっ…ええ。
だいぶしぼんじゃったけどね。
(アヤ・南上)フフフフ…。
失礼します。
はい。
よいしょ。
失礼いたします。
(アヤ)私10代のころから着物ばかり着てたからちゃんとした下着持ってなくて。
そしたら主人が買いに行こうって。
私たちもう40とかそんな年で。
恥ずかしかったけど顔真っ赤にしながらこのお店に来たの。
覚えてます。
優しそうなご主人さまでしたね。
それね結局主人は一度も見てくれなかった。
そりゃあそうよね。
奥さんの下着なんて恥ずかしいものね。
できました。
わ〜すてきねぇ。
着けてみていただけませんか?えっ?お着物にも合うようにワイヤを抜いて胸の高さを出にくくしました。
ぜひ着けてみていただけませんか?ありがとう。
(アヤ)ああそうだ。
お代は?ああ…結構です。
レースは在庫から選びましたし修繕費はどなたからも受け取っておりません。
駄目よそれじゃ。
私の気が済まないわ。
いえ…。
少ないけど取っておいてね。
ありがとうございます。
お言葉に甘えて頂戴いたします。
・
(足音)社長。
色々ありがとうございました。
お金にならなくてすいません。
お金の問題じゃないでしょ。
買っていただいて長く愛してくださっているお客さまのために品物を奇麗に直してさしあげるのは当然の務めよ。
そうですね。
ありがとう。
えっ?いい方を連れてきてくれて。
思い出した。
お得意さまもいない。
毎日お客さまも全然来ない。
それでも若い私には自信があった。
この店をやってゆく覚悟があった。
自信と覚悟。
それさえあれば仕事はできるのよね。
(猿橋)イマイさんご無沙汰してます。
(男性)おう久しぶり。
(猿橋)どうも。
今日ちょっとお願いがありまして。
少しでいいんでお金貸していただけないですかね?
(男性)はあ?何言ってんの?いや少しでいいんですよ。
(男性)いや無理だよそんなの。
お願いしますよ。
ちょっと待ってください。
(猿橋)おお久しぶり。
元気?久しぶりじゃん。
(猿橋)いやいや頼むよちょっと待って…。
プライドねえのかよ。
(女性)最悪。
ちょっと今日お願いがありまして…。
君何してんの?ちょっとこっちに来なさい。
じゃあ19時で大丈夫?うん。
ありがとう。
(猿橋)おお久しぶり〜。
(女性)あっ…びっくりした。
2万でいい。
頼む。
2万だけでいいから。
どこまで最低な男なの。
(猿橋)申し訳ない!このとおりだ。
金貸してくれ!
(男性)お前のために集まったんじゃねえんだよ。
(猿橋)みんなありがとう。
すまん少しでいいんだ頼む。
ありがとな。
ありがとな。
女の下着屋にそこまでして…。
お前バカかよ。
ありがとな。
助かるよ。
ホントにありがとう。
(猿橋)あ〜もう!ああ!何!?何々!?お祭り?今日何の日?大勢ですいません。
あっ…。
いえ。
いらっしゃいませ。
このたびは母が大変お世話になりまして。
お…お母さまですか?何か下着の修繕をしてもらったとか。
あっ!大野さま。
(大野)はい。
母はちょっと患っているものですからご迷惑をお掛けしたのではないかと。
いえいえ全然。
ねっ?ええ。
明るくて楽しい方で。
ありがとうございました。
何だかこちらでお世話になってから母急に元気になりまして。
(女性)先生。
私これ欲しい。
(アヤ)自由にお選びなさい。
好きなの買ってあげるから。
(女性たち)ありがとうございます。
(女性)これカワイイですね。
(アヤ)ねえ。
大野さま!
(アヤ)女の子はたしなみが大事よ。
いい物身にお着けなさいね。
(女性たち)はい。
いらっしゃいませ大野さま。
(アヤ)あなた…。
これホントに着物の下でも楽でいいわ。
着けてくださったんですね。
ありがとうございます。
とっても気分がいいの。
不思議だわ。
30年も前の物なのにこれを着けると背筋が伸びるのよ。
まあ。
きっと主人が言ってるんだわ。
「お前しゃんとしろ」って。
(南上・アヤ)アハハハ…。
(女性)先生。
先生見て。
これやっぱりお洋服じゃないと駄目ですか?
(アヤ)う〜んそんなこともないけど…。
正妻ではないんですよ。
ずっとおめかけさんと呼ばれて。
必死に働いて男に酒をついで一人で私を育ててくれた。
あのがまぐちに10円20円をためて。
(大野)すいません。
あれは本当に母の精いっぱいの気持ちなんです。
はい。
いいわよ。
(女性)そうですね。
(女性)レースがついてて。
(アヤ)そう。
カワイイわね。
いっぺんに18セット!やりましたね。
何か分かんないけどよかった〜。
でも逆にこれいっぺんに作るとなると材料費が…。
現金よね。
現金がいるのよね。
ここは思い切って前払いでお願いしましょうか。
それは駄目。
それだけはできないわ。
私のへそくり出そうか…。
あんたバイト代出しなさいよ。
何で宗介君が辞めてあんたがいるのよ。
俺もともと交通費しかもらってないですよ。
あ〜私も貯金できるほどまだ…。
えっ!?ど…どうしたんですか?このお金。
昔の女に借りた。
はっ?ざっと5人ぐらい?女って弱ってる男に弱いんだよなぁ。
はあ!?Emotionはここを乗り切れば絶対にまだやれる。
はした金ですが使ってください。
じゃないと俺の気が済まない。
ヒメにあんな思いさせて…。
重い。
あなたが捨てたプライドの重さかしら。
悔しかったでしょうねサル。
私が悪かったんだわ。
奇麗事だけじゃないのよね商売って。
自分の好きなものだけを作ってそれを売っていればいいなんて…。
おこがましいのは私だったのかもしれないわね。
何だまだいたの?はい。
えっ?何?後ろ立つなよ。
すいませんでした。
何が?「逃げてる」なんて言って。
「悔しいって言えばいい」なんて私バカでした。
ホントに…。
謝るな。
謝るなよ。
俺がたきつけたんだよ。
藤村を。
その責任は俺が取んなきゃなんないんだよ。
(猿橋)はい。
ありがとうございます。
はい。
ではよろしくお願いいたします。
(猿橋)いってきます。
(麗子・梶)いってらっしゃい。
あっ麗子さん。
橋本さまの仕様書まだですか?はい。
今できたわよ。
ラメ入りのエンブロイダリーレース。
在庫あったかなぁ…。
(麗子)あらもうこんな時間!
(女性)こんにちは。
あっ…。
いらっしゃいませ。
あっ。
(仲谷)久しぶりに新しいの作ってみようと思って。
よかった…。
ありがとうございます。
(シャッター音)あ〜うれしいです。
ありがとうございます。
ごめん聞こえなかった。
何?もう一度挑戦したいんです。
Emotionの商品をもっとたくさんの人に届けたいんです。
もう一度セカンドラインをやらせてもらえませんか?うわ〜ヤッバいわこれ…。
(男性)このシャンパンすぐに冷蔵庫の方にお願いしますね。
できればワインセラーに。
これ代金は?頂いてますよ。
時田さんから。
そうですか。
これいいやつなんですよね?え〜と…そうトランクショーのときとかにお客さんに出したりする…。
(男性)ええ。
だからわざわざフランスから空輸して。
そうそうそう空輸してね。
あのうこれ返品なんて…。
・できるわけないでしょ!
(梶)ああ…向こうか。
だいたいセカンドラインったってどこで売るのよ!?ここで売ります。
この店に置きます。
「ストーリー」を取られたからって意地になってるんでしょ?復讐心からでしょ!復讐心で物作っちゃいけないんですか!?うわ〜醜い。
あ〜美しくない。
うわ〜また出た「美しくない」何でもかんでも美しくない。
それ言えばこっちが黙ると思ってんでしょ!?うるさいわねもう!もうそれぐらいにして!お客さまがおみえになるのよ。
フッ…まるで親子ゲンカね。
こんな子産んだ覚えはありません!生まれた覚えもありません!
(麗子)でもありがたいです。
また来ていただけて。
(仲谷)トランクショー中止になってしまってホントに残念でした。
そうですね…。
私たちも頑張ってたのよね。
ええ。
全部できてました。
新作ですか?え〜見たい。
私すごい楽しみにしていたんですよ。
今あるんですか?はい。
あの見せてもらえたりなんて…。
(麗子)どうぞ。
こちらです。
(仲谷)失礼いたします。
わあ…すごい。
すてき。
(繭子・南上)ありがとうございます。
(仲谷)光栄です。
南上社長のお仕事をこんな間近で見せていただけるなんて。
このナイトウエアホントに奇麗。
お見せしたかったです。
ちゃんとモデルさんに着てもらって仲谷さまのようにEmotionを愛してくださるお客さまに。
すいません。
いえ。
・まるで子供ね。
思いどおりにならなくていじけてる。
そっちから折れてって全身でアピールしてる。
我の強い子だわ。
社長だって言ったじゃないですか。
「自分の方がおこがましいのかも」って。
そうよ。
でもそれは大量生産のシビアな世界を認めるってことで今のEmotionがその戦場に打って出られるって意味じゃない。
じゃあ結局何も変わらないってことじゃないですか。
変わらないことは悪いこと?私は30年前の自分の仕事を思い出して原点に戻れた気がしてたんだけど。
でもこれは!?泣き寝入りしろって言うんですか!?一足飛びにセカンドラインってわけにはいかない。
今はお金も人もいないんだから。
現実を見なさい。
はい。
でもあなたのそのうっとうしいくらいの気持ちをつぶしてしまうのは惜しい。
えっ?復讐じゃないのよ。
自分が今やれることにその情熱を注ぎなさい。
私は…。
みんなに知ってもらいたいです。
世界で一番美しいランジェリーを売ってるのはこの店だって。
どんなにいい物を作ってても知ってもらわなきゃ存在してないも同じです。
だから…。
ここに。
この全部に!Emotionの記事を載せてもらいます。
ショーやりませんか!?やるからにはSTORYを越えなきゃ意味がありません。
(瑞希)私は南上社長とは違う。
(藤村)売れる物を作ってくださいね。
(修子)ついにEmotionもPR始めたのね?あなたは幾らもらったの?記事にうちの商品のことを書いていただけないかと。
(三木)クソど素人の分際でその甘っちょろい考えが我慢ならないのよ!やっぱり挑戦し続けなきゃ駄目。
あの人は本物だって思います。
お客さまに最高に美しいEmotionの世界を見ていただきましょう。
2015/11/20(金) 21:00〜22:52
関西テレビ1
金曜プレミアム・アンダーウェア[字][多]
出演 桐谷美玲、大地真央 世界に先駆け地上波独占放送。
高級ランジェリー業界を描くドラマ。新入社員が初めて体験する仕事の面白さと難しさ。
詳細情報
番組内容
大学時代に繊維の研究をしていた“繊維オタク”の時田繭子(桐谷美玲)。繊維メーカーに就職を希望するも、ひょんなことから、銀座にあるオーダーメードの高級下着メーカーEmotionで働くことに。そこでは、創業25年にして日本のランジェリー業界を引っ張るアイコン的存在のEmotion社長・南上マユミ(大地真央)のもと、一流ブランドをしょって立つスタッフたちがそれぞれの仕事にプライドを持って働いていた。
番組内容2
田舎から出てきた繭子は、自分の人生で接したことのない価値観に戸惑いながらも、次第にこの仕事に魅せられ、周りに助けられながら成長していく。
【〜今週のあらすじ〜】
第2週:「仕事ということ、仲間ということ」
繭子が就職した銀座のオーダーメード高級下着メーカー・Emotionは、小さな会社ながら仕立ての良さで評判の高級ブランドのイメージを確立していた。そこに大きなデパートが提携の話を持ってくる。
番組内容3
社長の南上は、チーフデザイナーに西沢瑞希(酒井若菜)を立て、Emotionのセカンド・レーベル「EM byEmotion」を立ち上げることを決める。しかし、大きなビジネスをするには様々なハードルがあることを知らない南上と「Emotion」社員は大きな波に巻き込まれていく…。そんななか、南上は10月に実施するトランクショーのプロデュースを繭子と姫路宗介(桜田通)に任せると社員を前に発表する。
出演者
桐谷美玲
/
酒井若菜
千葉雅子
マイコ
海東健
佐藤めぐみ
桜田通
竹内寿
蘭寿とむ
折井あゆみ
石田ニコル
河北麻友子
/
田島令子
・
野間口徹
野村宏伸
小倉久寛
/
大地真央
スタッフ
【脚本】
安達奈緒子
【プロデュース】
関口大輔
【演出】
尾形竜太
葉山浩樹
【音楽】
Tim Wynn
【制作著作】
フジテレビジョン
【制作協力】
FILM
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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