日本の安全保障政策にとって大きな転換であると政府自らも認めるモンダイを、事もあろうに与党の副総裁が「国民の理解が得られなくても…」と公然と口にしてしまうなんて、この国は、「平時」のくせに「異常事態」と言わざるを得ない。
ちなみに高村氏、同じ青森市内の講演では「選挙で国民の理解が得られなければ政権を失う」と語り、次の選挙で国民の審判を仰ぐ意向を示したという。「今、法案に反対している国民もどうせ1、2年すれば忘れるから大丈夫」と、日本の衆愚をナメているのか? それとも「次の選挙で自民党が負けても構わない」と、安保関連法案と刺し違える覚悟でもあるのだろうか?
そこで、ナルホド…と思ったのは「おそらく、安倍政権が安保法案の成立を強行することで国民から受ける罰よりも、成立させないことでアメリカから受ける罰のほうが大きいのでしょう」という思想家・内田樹(たつる)さんの指摘だ。
今、強行採決をしても衆院選は3年後。安倍さんの首相の座は当面安泰だが、ここで約束を守れなければ、アメリカから厳しい「罰」を受けて、政権などあっという間に吹き飛ばされるかもしれない…。ウン、それなら確かに、「国民の理解」なんて言ってる場合じゃないのかもねぇ…。
●川喜田 研(かわきた・けん)
1965年生まれ。モータースポーツ、特にF1関連の記事をはじめ、原発問題、TPP、憲法改正、集団的自衛権、沖縄基地問題を本誌で執筆。著書に『さらば、ホンダF1』(集英社)がある