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【VWショック〜どうなるエコカー戦線〜】〜自動車アナリスト遠藤功治氏に聞く〜



11月2日、東京では第44回モーターショーが開催されるなか、米環境保護局(EPA)が、ポルシェの「カイエン」やアウディの「A8」、フォルクスワーゲン(VW)の「トゥアレグ」などの7車種に搭載されたディーゼルエンジンのソフトウェアに不正なプログラムが組み込まれていると指摘した。VWの営業利益の約6割を占める主力のポルシェとアウディにも問題が浮上したとなると、今後のVWの経営は厳しいものになると言わざるを得ない。この“VWショック”は、日本の自動車メーカにとって追い風になるのか。

今週の放送ではアドバンストリサーチジャパン マネージングディレクターの遠藤功治氏を招き、今後のVWの経営や、自動車業界の勢力図に変化が起こるのかなどの話を聞いた。

今年9月、VW車のディーゼルエンジンに掲載されたソフトが、排ガス試験の際だけ窒素酸化物などの有害物質の排出を抑制するようプログラムされていたという不正問題が発覚してから、1ヶ月以上が経過した。当時問題となった車は排出量が2リットルのもので、今回新たに指摘された車は排気量3リットルのものだ。

現在VWは「排気量が3リットルの車のディーゼルエンジンに不正はない」と言っており、真相はまだはっきりしていない。この1ヶ月強でVWの経営や市場にどう変化が起きたのか。「この1ヶ月で、VWの国内の月間販売台数は半減した。アメリカでは30件以上の集団訴訟が起き、48万台だったリコールが1100万台となり、更に80万台が対象になるとされている。VWは対策費用として8,700億円を特別損失に計上したが、それが、1兆円、2兆円、さらには10兆円に膨れ上がのでは、とまで言われている。これはドイツ経済のみならず、欧州全体の経済を揺るがすことになる」と遠藤氏は述べ、事態は9月時点より悪化していることを指摘した。

歴史も伝統もあるVWだが、その経営の在り方は特異である。「VWの元は、ヒトラーが立ち上げた国策会社であり、歴史がある。現在のVWの株保有比率は、一般の投資家が約10%であるのに対し、90%が州政府・ドイツ政府・ポルシェ家とピエヒ家という構成で、VW法のもと買収されないような仕組みになっている」と遠藤氏は述べ、同社が如何にドイツ経済、また政治にまでも根を張った会社であるかを解説した。

そんなドイツの老舗にメスを入れたのは米・EPAだ。「なぜアメリカから指摘を受けたのか」という安倍編集長の問いに対し、遠藤氏は「日本・アメリカ・ヨーロッパで、特に問題視されている有害物質が異なることが背景にある。日米は、大気汚染の原因となるNOxの規制に重点を置いており、海抜0メートルの国を持つヨーロッパは、地球温暖化の要因とされるCO2の排出量を減らすことを重視している。現在の技術ではどちらか一方の排出量を削減しようとすると、もう一方の排出量が増えることになる。そのため、CO2の排出量を抑えることのできるディーゼル車は、アメリカのNOxの環境基準をクリアすることが難しく、NOxの排出量を抑制しようとすると、燃費やハンドリングが悪くなる。だったら、テストのときだけクリアさせ、『NOxの排出量を抑えたまま、燃費が良く、ハンドリングも良いディーゼル車』という印象をアメリカの消費者に与えて売り込もうという意図があったのだろう」と答えた。

VWの対策引当金は、10兆円に上るとも予想される中、同社が保有するキャッシュが4~5兆円であることを踏まえると、「倒産」という言葉も浮上するのではないか。これについて遠藤氏は、「VWは、アウディ・ポルシェだけでなく、ベントレー・スカーニャ・ブラッディなどのブランドを抱えるだけでなく、主に東欧に分布する部品メーカまで含め、傘下の企業が数知れない。VWが潰れるようなことが起きると、EU全体と東欧の約60万人の雇用が失われることになる。そうならないためにも、各国、特にドイツ政府がサポートするはずだ」と述べ、倒産を心配する声がドイツ国内ではほとんど聞かれないと指摘した。

また遠藤氏は、日本のメーカにとって、ヨーロッパ市場での売り上げはもともと小さく、VWを買い替えるとしても欧州のユーザーは他のドイツ車、もしくは他の欧州メーカーの車に乗り換えるだろうとして、日本車が販売を伸ばすチャンスには簡単にはならないと述べた。

一方で、「アメリカでのシェアが3位のトヨタにとっては追い風である。従来、『ディーゼル車のVWか、ハイブリッド車のトヨタか』という選択の仕方をした保守的で富裕層の多いカリフォルニアを中心に、アメリカでは、日本のエコカーを売り込む契機となるはずだ。また、今回の不正問題以前から景気低迷を背景にVWのシェアが縮小した中国では、よりリーズナブルな日本車が持ち直すことができるのではないか」と述べた。

自身もモーターショーに参加した安倍編集長が「今後の各社のエコカー戦略はどうなるのか」と質問すると、遠藤氏は「今後20〜30年は、ハイブリッド車(HV)と、プラグインハイブリッド車(PHV:電気自動車とハイブリッド車との中間の自動車で、自宅で充電できるもの)の2本柱だろう。EV(電気自動車)、FCV(燃料電池車)にも期待したいが、前者はなかなか充電時間が短くならず、後者は水素ステーションがまだ国内でも4地域にしか設置されていないという問題がある。

また、FCVはWell-to-Wheel、つまり水素ステーションの設置や燃料を作る為に天然ガスを使う過程も含めるとCO2の排出量が大きいという点で、本当にエコなのかという指摘もある。企業努力によるコストダウンや国・地方公共団体の補助金に支えられて今やっと1台700万円で販売することができるようになったが、まだ支援は必要だろう」と述べ、その普及には時間がかかるとの見通しを示した。

(この記事は、ニコ生【Japan In-depthチャンネル】2015年11月4日放送 を要約したものです)
※トップ画像:ⓒJapan In-depth 編集部

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