南北当局者会談の開催に向けた事前の実務協議が26日に板門店で開催される。これまで韓国政府は3回にわたり実務協議の開催を呼びかけたが、これに北朝鮮は回答をしなかった。それが20日になって突然北朝鮮は実務協議を逆提案し、実現の運びとなった。今後当局者会談の開催にまでこぎ着ければ、今年8月の南北高官級協議で合意した事案が全て実現することになる。
当局者会談の形式や議題、時期、会場などはまだ何も決まっていないが、北朝鮮が南北関係をしばらくは対話局面にする意図を示したことだけは間違いない。その点で今回の当局者会談に向けた動きは、とりあえずは歓迎すべきだ。しかし韓国政府は会談に臨むにあたり、北朝鮮がこれまでの態度を見直した理由をしっかりと把握しておかねばならない。
北朝鮮による最近の方針転換は経済、外交、安全保障など様々な分野に及んでいる。北朝鮮は先月の朝鮮労働党創建70周年記念の軍事パレードの際、中国から共産党序列5位の劉雲山・政治局常務委員を迎え入れ、その後は中国との関係改善にも積極的だ。核実験やミサイル発射実験は当分先送りとなり、韓国に対する軍事挑発も明らかに減った。また国連の潘基文(パン・ギムン)事務総長の訪朝についても協議が行われている。経済では庶民の間で市場が定着し、貿易も拡大して建設ブームも起こっているという。
北朝鮮では金正恩氏が権力の座についた直後の「軍事挑発と脅迫」を中心とした政治から、最近は「対話と融和」へと方針転換を目指しているかのような印象を受ける。来年は金正恩氏の執権から5年目を迎え、5月には36年ぶりに第7次党大会も開催される。この党大会では経済や外交政策での功績を発表しなければならないはずだ。
北朝鮮におけるこれら一連の動きと状況は、とりあえず南北関係にはプラスに作用するだろう。さらに一歩進んで南北当局者会談が定例化すれば、緊張の緩和や交流拡大のきっかけになるかも知れない。しかし北朝鮮による今回の戦略見直しは全てが良いことばかりではない。北朝鮮は今なお「核・経済並進路線」をそのまま維持している。また核兵器開発については自ら「完成段階に入った」などと公言していることから、これを素直に放棄するとは考えられず、核兵器を手にした状態で外交や経済政策を進めたいと考えているはずだ。だとすれば中国やロシアに対しては「核開発の凍結」の見返りに、改めて経済援助や外交政策での支援を求める可能性も高い。韓国には当局者会談を通じ、金剛山観光の再開や5・24制裁(哨戒艦「天安」撃沈を受け韓国政府が北朝鮮に下している制裁措置)の解除などを求めてくるだろう。
北朝鮮がこれらの意図を持って当局者会談に臨んできた場合、彼らの要求を何でも簡単に受け入れるわけにはいかない。離散家族再会といった人道問題については積極的に話し合いを進めるべきだが、核兵器開発や経済協力については韓国も明確な原則を定めて対応しなければならない。会談では北朝鮮に対し「変化の度合いに応じて求めるものを手にすることができる」という原則をしっかりと理解させる必要があるだろう。北朝鮮はこれまで先に見返りだけを手にし、その後は約束を平気で破るようなことを何度も繰り返してきた。北朝鮮が戦略を見直したのであれば、韓国もそれに応じて新たな戦略を構築しておかねばならない。