大阪市西成区で日雇い労働者らに親しまれてきた牛ホルモンに最近、異変が起きている。とりわけ小腸の希少価値が高まっていて、小売店でも店頭に並べられないほどという。漫画「じゃりン子チエ」にも登場する西成の「ソウルフード」に、なにが?

 平日の午後5時すぎ。JR新今宮駅の高架下のホルモン料理店「権兵衛」に作業着姿の男たちが集まってきた。目当ては大鍋の中で湯気をあげる1皿210円の「ホルモン煮」。肺や小腸、ミノ、センマイなど様々な内臓をしょうゆと塩、水で煮込んだ料理だ。

 酒を片手にホルモン煮に箸をのばす。それを鉄板で焼いたホルモン焼き(230円)やホルモン入り焼きそば(1玉400円)もおかずにし、白飯をかっこむ。「ホルモン増しで」と声が飛んだ。

 店主の泉谷敏樹さん(67)は、戦後すぐに祖父が始めた店を継いで37年。かつてホルモンを食べる人は少なかったが、食肉処理場があったこの地域では食べる習慣が根づいた。西成が舞台の「じゃりン子チエ」では主人公の女の子、チエがホルモンを焼く。

 権兵衛は内臓を1斗缶(約20キロ)で仕入れる。中には様々な部位が入っている。肺などの硬い部位もあるから、じっくり煮て軟らかくする。

 「最近、味が物足りなくなったのかな」と泉谷さん。1斗缶の内臓から、油分が多くて味に深みを出す小腸が減っているという。