排出ガス不正問題で危機に陥っているフォルクスワーゲン(VW)だが、少なくとも米国市場における売り上げにおいては、意外にも危機的状況とは掛け離れたところにいるようだ。
VWの米国における9月の売り上げは0.56%増だったが、10月の売り上げも、インセンティブによる効果でほぼ変わることなく、0.24%増となった。米自動車メディア『Automotive News』が伝えるところによると、売れ行きは好調で、増える需要に見合うだけの十分な在庫がないとディーラーが報告しているという。
VWは顧客離れを防ぐために、既存の顧客向けに2,000ドル(約25万円)のキャッシュバックや、車種によっては最高で4,200ドル(約52万円)もの値引きなどをしており、そうした対策が功を奏している。米国の自動車市場情報サイト『TrueCar』のデータによれば、VWの10月末時点における新車の在庫は48日分しかなく、これは同社にとって過去12カ月で最も少ない台数だ。しかも、この数字は販売が停止されているディーゼル車を含むものであるという。
こうした需要の高まりから、VW車の中には、すぐに購入できないモデルが出てきている。例えば、ミッドサイズ・セダンの「パサート」は大掛かりなリフレッシュを施した2016年型への移行期となり、現在は出荷量が少なく、2015年型はほとんど在庫が残っていない。新型「ティグアン」は10月の売り上げが167%も増え、供給が需要に追い付いていない状況だ。
こうした好調な売り上げのおかげで今回の危機を切り抜けているVWのディーラーではあるが、今度は別の問題が浮上しつつある。『Automotive News』によれば、VW社では12月中旬までの各ディーラーに割り当てるモデルの台数を既に決めているが、活発な需要を満たすには不十分かもしれないというのだ。今後の数週間は、VWディーラーで品不足状態が続くことになるかもしれない。
By Chris Bruce
翻訳:日本映像翻訳アカデミー