米仏軍、IS幹部殺害指令 最強特殊部隊を投入 露軍と「共同軍事行動」
残虐非道な過激派組織「イスラム国」(IS)に対する、殲滅作戦が進んでいる。フランス警察は18日、パリ郊外にあるテロリストの拠点を激しい銃撃戦の末、制圧した。同国海軍の原子力空母「シャルル・ドゴール」も、IS攻撃に向けて出撃した。米国やロシアによる集中爆撃も続いている。これに対し、ISは、米ニューヨークへのテロ攻撃を警告する映像を公表した。世界に緊張が走るなか、「IS幹部の殺害」などを狙う、米仏露軍が誇る、すご腕の特殊部隊の存在が注目されている。
フランス警察の特殊部隊は18日、パリ同時多発テロの主犯格、アブデルハミド・アバウド容疑者(27)らの潜伏先とされる、パリの郊外サンドニのアパートを急襲した。激しい銃撃戦の末、約7時間後に制圧した。
フランス検察当局は19日、この急襲作戦により、主犯格とされるアバウド容疑者が死亡したと発表した。現場のアパートから見つかった遺体の指紋から身元を確認した。
シリア北部にあるISの本拠地への攻撃も続いている。
ロシア軍参謀本部は18日、「ISが支配する原油生産施設や、約500台のタンクローリーを攻撃した」と発表した。爆撃機による空爆や、巡行ミサイルによる攻撃とみられ、違法な輸出による収入源を絶つ狙いだ。ロシア通信が伝えた。
フランスが誇る原子力空母「シャルル・ドゴール」(全長261・5メートル、全幅64・36メートル。乗員約1900人。艦載機は固定翼機35機、ヘリコプター5機)も同日、南仏トゥーロンの海軍基地から出港した。週末にもシリア沖に到着する。
ロシア軍参謀本部は、シャルル・ドゴールが到着次第、ISに対して「共同軍事行動」を取ると発表した。
IS包囲網が狭まるなか、完全制圧を目指す地上軍派遣前に、少数精鋭の特殊部隊が投入され、その存在が注目されている。
『特殊部隊の秘密』(PHP研究所)の著書がある、フォトジャーナリストの菊池雅之氏は「米軍の『デルタフォース』と『SEALs(シールズ)』、ロシアの『GRUスペツナズ』はシリアに入っているはずだ。空爆でISの戦略拠点をたたき、特殊部隊と無人攻撃機でIS幹部を排除(殺害)する作戦といえる」と語った。
デルタフォースは、米陸軍の特殊部隊。都市部での戦闘や敵拠点の急襲、人質奪還などを目的に、1977年に創設された。79年に発生した駐イラン米国大使館人質事件では、翌年の救出作戦「イーグル・クロー作戦」を実行した。
米国防総省は先月22日、イラクのクルド自治政府の要請を受けた米軍特殊部隊が、クルド部隊を支援してISの拠点から人質約70人を解放したと発表した。この特殊部隊がデルタフォースとされる。
シールズは、ベトナム戦争中の62年に創設。米海軍が誇る「最強の特殊部隊」で、地球上あらゆる場所に投入される。2001年からは国際テロ組織アルカーイダ掃討作戦に参戦し、11年5月に最高指導者、ウサマ・ビンラーディン容疑者を殺害したことで有名だ。
ISの指導者、アブバクル・バグダディ容疑者も先月11日、イラク西部アンバル県のシリアとの国境近くで、イラク軍の空爆を受けた。バグダディ容疑者は負傷したが、生死は不明という。同容疑者は昨年6月、預言者ムハンマドの後継者「カリフ」を名乗り、指導者に就任した。
パリ同時多発テロに見舞われたフランスにも、「国家憲兵隊治安介入部隊」(GIGN)がある。陸軍・海軍・空軍に次ぐ、第4の軍隊・国防省国家憲兵隊に所属する。94年に発生したエールフランス8969便ハイジャック事件で存在を知られ、今年1月の諷刺週刊紙シャルリー・エブド襲撃事件でも出動したとされる。
首都で129人が犠牲となるテロ攻撃を受けただけに、今後、IS殲滅作戦に投入される可能性は十分ありそうだ。
ロシアが誇る特殊部隊、GRUスペツナズは、旧ソ連時代の1950年代に創設された。アフガン紛争やチェチェン紛争などに投入され、現在は、ロシア連邦軍参謀本部情報総局(GRU)に所属する。情け容赦ない攻撃で恐れられている。一部の欧米メデイアが先月、「ロシアは、シリアのアサド政権を守るためスペツナズを派遣している」と報じている。
前出の菊池氏は「デルタフォースは今年5月、ISの金庫番だったアブ・サヤフ幹部を殺害した。特殊部隊は能力が高く、確実に成果を挙げている。先日、『米政権がIS掃討作戦のために、イラクに攻撃ヘリ投入を検討』と報じられたが、これも特殊部隊の作戦強化のためとされる。しばらくは、空爆と特殊部隊、無人機攻撃による作戦が続くのではないか」と語っている。