【バック・トゥ・ザ報知映画賞】第11回(86年)主演男優賞・内田裕也

2015年10月28日11時30分  スポーツ報知
  • 頭髪は白くなったが、サングラスの奥の眼光は今も鋭い内田裕也

 表彰式でもロックンロールを貫いた。黒いコート姿の内田はステージ袖に消えると、警官の制服姿に早変わり。「ビートたけし、三浦和義と出演者が2人も逮捕されたから、俺が止めなきゃと思ってね。日活の撮影所で制服と拳銃(小道具)を借りてきて、こっそりトイレで着替えて出てったんだ」。爆笑の場内で、不敵に笑いながら敬礼を決めた。

 受賞の知らせはハワイの映画祭で受けた。「タイの若手監督とベロベロに飲んでたら、ホテルのボーイが『ホウコク新聞から電話です』って言うから、どこの新聞かと思ったら報知でさ。『作品賞おめでとうございます』ってビックリしてたら、『重ねて主演男優賞も』だって。半分キレたね。からかうな、バカヤローって」。生まれて初めてもらった賞だったという。「報知が映画賞で一番最初だからね。俺の人生を変える作品になったわけだから、ホント感謝してるよ」

 内田演じるリポーターのキナメリを主人公に、ロス疑惑や豊田商事事件など実際の事件を織り交ぜながら、マスコミと大衆の姿を描いた。「当時は超ワイドショー大会でさ。スキャンダリズムに対するエスプリもあった」。脚本も自ら書き上げたが、前例のない企画に、東映の岡田茂会長(当時)には「こんなタイトルで映画になるか!」と突き返される始末。限られた予算のもと、ゲリラ的な撮影で完成させた。

 圧巻は豊田商事会長刺殺事件のシーン。「慶応義塾のマークにもあるけど、滝田(洋二郎監督)には『剣とペンが交錯するこの1カットのためにこの映画を撮るんだ』って言ったんだ」。殺害現場のマンションの一室に飛び込んだキナメリは、たけしら刺殺犯の2人組と格闘する。「何かに目覚めたように飛び込む時の顔が難しかったね。たけちゃんマンも興奮しやすいたちだからバンバン殴りやがってさ。俺も本気になってきて、危ねえって思ったよ」

 規格外の問題作は、ニューヨーク・タイムズにも取り上げられるなど世界の注目を集めた。一時は懇意にしながら「何にもしてない酔っぱらい」とののしられ、絶縁していたオノ・ヨーコさんもニューヨーク近代美術館での上映にこっそり駆けつけたという。「最高のリベンジだよね」。予測不能の怪人はニヤリ笑った。(高橋 誠司)

 ◆内田 裕也(うちだ・ゆうや)1939年11月17日、兵庫県生まれ。75歳。関西でバンド活動をし、上京後は日劇ウエスタンカーニバルなどで活躍。大阪でザ・タイガースを見いだす。60年代後半から海外に渡り、フラワー・トラベリン・バンドなどが評価を得る。日活ロマンポルノ出演を経て、映画製作に本格的に乗り出し、「十階のモスキート」「魚からダイオキシン!」などを手掛けた。

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