【バック・トゥ・ザ報知映画賞】第10回(85年)助演女優賞・三田佳子
「女優!女優!女優! 勝つか負けるかよ!」の名ゼリフ。三田は「Wの悲劇」で大物女優を演じた。開幕直前の舞台袖。ある裏取引で主役を手に入れながら「出来ない」と震える若手女優(薬師丸ひろ子)の手の甲をたたいて肩を揺さぶり、ヒロインに役者魂を注入する“ザ・女優”の芝居は、いまも語り継がれる名場面だ。
「主役がどれほどの人に支えられているか。助演に回って改めて知る貴重な機会だったわ」。本人は「過去の自分にショックを受けるから」と、出演作をほとんど見ない主義。が、今作は伝説のシーンが多いので、一緒にDVDを見て話を聞いた。
それにしても、とんでもない役だった。ベッドで逝った自分の愛人の死のスキャンダルを、ヒロインを渡すことを条件に売れない女優に押しつける。決まっていた女優をウソの口実で降板に追い込む長いシーンも有名だ。三田は苦笑しながら、淡々と自分の芝居の映像を見つめた。
「偉そうに見えるこれらのセリフ回し。我ながらすごいかも。もう一度やれったって無理。しかも呼吸せず、ノンストップでやっている。今の私を思えば、神業ね」。メガホンは東映時代の仲間だった澤井信一郎氏。役を受ける際、役の大小は問わず、アイドルとして人気絶頂の薬師丸の役と「対等にやらせて」と芝居の真剣勝負を伝えた。「でも言っちゃった手前、眠れないくらい悩むことになったけれどね」
役の取引シーンはベッドに横たわる愛人の亡きがらのそばで展開するが、女優の業が前面に出ていた。「嫌がって逃げるひろ子ちゃんの力がすごくて。カメラから出ないよう、万力で引き留めたのよ」
この20年後。第30回(05年)で薬師丸が助演女優賞を取ったとき、壇上で彼女に花束を渡したのは三田だ。「あのとき20歳のひろ子ちゃんが、すてきな女優さんに。それをお祝いできるなんて」とサプライズ演出を快諾し、駆けつけたのだった。
役が、役を生むこともある。宮藤官九郎氏は舞台「印獣」(09年)で、この演技が忘れられず、三田を「大女優役」にして脚本を書いている。「覚えている人がいるから、いまの私がある。映画のあの役は、間違いなく、私の女優人生の宝物。これからもっと命削って頑張らないとね」(内野 小百美)
◆三田 佳子(みた・よしこ)1941年10月8日、大阪府生まれ。74歳。60年、女子美大付高を卒業と同時に東映入社。同年「殺られてたまるか」のヒロインで映画デビュー。東映時代に60本以上の作品に出演。代表作に映画「遠き落日」、ドラマ「外科医 有森冴子」(日テレ系)、主演したNHK大河ドラマ「いのち」「花の乱」。放送中の「花燃ゆ」にも出演している。
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