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【社説】

南シナ海対応 自衛隊ありきではなく

 安倍晋三首相が南シナ海への自衛隊派遣を検討すると述べた。中国による人工島造成が航行の自由を侵す事態は許されないが、外交交渉で解決すべきだ。自衛隊派遣ありきであってはならない。

 安倍晋三首相とオバマ米大統領が十九日、マニラで会談した。会談は四月以来、約七カ月ぶりで安全保障関連法成立後は初めてだ。

 一時間半の会談で大統領は、南シナ海での中国の人工島造成をけん制するため、島の十二カイリ以内に米艦船を派遣する「航行の自由」作戦を「日常の行動として実行していく」と継続する方針を述べ、首相は作戦支持を明言。

 さらに首相は、南シナ海への自衛隊派遣を「情勢が日本の安全保障に与える影響を注視しつつ」検討する方針を表明した。

 菅義偉官房長官はきのう「米国の『航行の自由』作戦に自衛隊が参加する予定はない。具体的な計画も有していない」と、現時点での派遣計画はないと述べたが、自衛隊の南シナ海派遣への期待感が米側にあることは間違いない。

 在日米軍などを統括する米太平洋軍のハリス司令官は六月、海上自衛隊のP3C哨戒機が南シナ海で哨戒活動を行うことを「歓迎する」と述べたことがある。

 背景には、首相が掲げる「積極的平和主義」の下、四月に合意した日米防衛協力のための指針で、防衛協力の対象地域を「アジア太平洋を越えた地域」にも拡大し、九月に成立した安保関連法が、自衛隊が米軍などを後方支援できる地域を、日本周辺以外にも広げたことがあるのだろう。

 日本は海洋国家であり、貿易立国である。国民の暮らしを支える海上交通路(シーレーン)での航行の自由が侵されるような事態は断じて許してはならない。

 日本が、同じ海洋国家である米国とともに、航行の自由という国際法の原則を守るために協力することは当然ではある。

 しかし、軍事力で対抗するのは軍拡競争や不測の事態を招きかねず、賢明ではあるまい。

 仮に那覇を拠点とするP3Cを南シナ海に派遣する場合、実際に警戒監視に充てる時間は限られる。自衛隊による常時監視は非現実的だ。

 中国に自制と航行の自由への理解を求めるには国際社会を巻き込み、粘り強く説得するしかない。きょうからマレーシアで始まる東南アジア諸国連合(ASEAN)関連や東アジアの首脳会議がその機会となることを期待したい。

 

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