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 18日に開かれた茨城県総合教育会議で「妊娠初期にもっと(障害の有無が)わかるようにできないのか。(教職員も)すごい人数が従事しており、大変な予算だろうと思う」「茨城県では減らしていける方向になったらいい」などと発言した県教育委員の長谷川智恵子氏(71)は19日、「障害のある方やご家族を含め、多くの方々に多大な苦痛を与え、心からおわび申し上げます」とのコメントを出し、発言を撤回した。

 長谷川氏の発言を「問題ない」などと話していた橋本昌知事も同日夜、「私の発言が障害のある方々あるいは関係者に苦痛を与えたとすれば、誠に遺憾」として、自身の発言を撤回する談話を発表した。

 長谷川氏は東京・銀座の日動画廊副社長。19日の取材に対し「配慮が足りず言葉足らずだった。障害のある人を差別する気持ちで述べたものではない」と話した。一方で、「(特別支援学校の)生徒さんたちの作品を見て、多様な才能があると理解した。美術の世界でお手伝いができればと思う。失言で迷惑をかけたが、茨城の国際化や美術・文化の振興をするために頑張りたい」などとして、教育委員を続投する意思を示した。

 県庁や県教育委員会には19日夕までに電話やメールで100件超の意見が寄せられた。「障害者や家族が不幸だという思い込みや偏見がある」「教育委員をやめるべきだ」「知事が擁護するのは問題」など、長谷川氏や橋本知事に対する批判的な内容が多かったという。

 ツイッター上では、「優生思想の正当化だ」「親が大変そうだからというなら、負担を減らすために社会ができることを考えるべきでは」といった批判のつぶやきが相次いだ。「五体不満足」の著書がある作家で東京都教育委員の乙武洋匡さんもツイッターに「私も生まれてこないほうがよかったですかね?」と書き込んだ。

 脳性まひの当事者である長野大学の旭洋一郎教授は「私たち障害者とその家族は、絶えず『かわいそう』『家族や社会の負担になる』という形をまとった優生思想によって、自分自身を否定される恐ろしさに脅かされながら暮らしている。世間にそのことを知らしめることに力を尽くすのが、教育委員という立場のはず。撤回すればいいというものではない」と話した。(酒本友紀子、仲村和代)