伝説的ヤクザ映画「仁義なき戦い」シリーズ以来、27年ぶりにスクリーンでの競演となった梅宮辰夫、山城新伍、松方弘樹ら極道御三家。そのひとり山城新伍さんが、撮影現場でのウラ話や映画についての持論を熱く語ってくれた。
―「仁義なき戦い」以来3人の競演は久々ですが。
率直な気持ち懐かしかったよ。それぞれ同じ様な時期にデビューして、それなりに道は違えど役者の世界で生き残ってきて、こうやって競演できたってことは、感慨深いものがあったね。うん。
―すでに最初の時点で、3人のキャスティングが決まっていたそうですね。
そう。まあ「仁義なき戦い」の時は子分役だったんだけど、今回は3人とも親分役だった。今撮ってるヤクザ映画でも、命を狙われる組長役やってるし、俺達もそういう年齢になったんだな。(だからか)松方は酒飲まなくなったし、梅宮は9時に寝ちゃうし。俺だけだよ、いまだに夜遅くまで飲んで歩いてんのは。
―それでもいざ本番に入ったら、役の違いなんて関係ないものですか。
気持ちで動いちゃうもんだよ。役者なんてものはさ。それに気持ちだけは(若い頃と)まるで変わっちゃいないよ。
―今作は今までの極道映画にはないソフトなイメージがありますね。
男ならドンパチを見たいってのが本音だろ?だけど女性にはダメなんだな。恋愛要素を入れたりして、女性をターゲットにしたソフトな極道映画ってどんなものができるかっていう冒険みたいなもんだよね。
―今作でデビューとなる若い監督を起用したり…ですね?さすがに3人の競演を監督するとなると、ビビってしまったかもしれないですね(笑)。
映画を良くするも、悪くするも監督次第だから。そういう意味では(本作の極道は)セリフが長くて、ちょっと喋りすぎかもね。会議じゃないんだから(笑)。でも若い層、特に女性にもウケる今風の効果は出たと思うよ。
―主演の哀川翔さんはいかがでしたか。
素直で気持ちのいい役者だよ。素直だから打てば響くってな感じだな。(本来)役者の良さってのは批評家とかが感じるものじゃないんだよ。役者の良さは役者が感じることなんだから。
ジョークを交えつつ(下ネタばっかり?)、作品の魅力を語ってくれた山城新伍さん。映画通の片鱗を垣間見せつつ、独自の映画論に花が咲いた会談はあっという間に終了してしまった。久々にスクリーンに登場した貫禄十分の3人の競演シーンは必見だ。「実録ヒットマン〜妻その愛〜」は12月28日より、名駅前グランド5にて特別ロードショー。
【作品寸評】
「今までにない異色の極道映画」。その触れ込みに偽りはなかった。ドンパチ、流血など今までの極道映画で当たり前のことも、ちゃんと押さえてはいる。しかしそれを主張せずにさらりと流して、テーマは悲哀を主流に置いた人間ドラマの方向へ。個人的に極道映画は、西部劇やSFのように、エンターテイメントな部類に位置付けられると思う。非現実的な世界だからこそドンパチは外せないが、新しい極道映画のムーブメントは確かにこの作品に現れている。これを見逃す手はない。
(了) |