JR西日本が、広島、島根両県を結ぶ三江(さんこう)線(108キロ)の廃止を検討していることが明らかになった。

 昨年は岩手県のJR岩泉線と北海道のJR江差(えさし)線の一部が廃止された。経営再建中のJR北海道は今年8月、留萌(るもい)線の一部も廃止する方針を表明した。いずれも赤字のローカル線だ。

 00~13年度に全国では35路線(673キロ)が廃止されたが、このうちJRは1路線だけだった。国鉄からの移行期に赤字路線を大量整理したためだったが、ここへきて再び動きが加速する可能性がある。

 JR各社は基本的に、都市部の稼ぎでローカル線の赤字を埋めてきた。だが人口減少時代に入り、こうした経営構造が成り立ちにくくなっている。

 過疎に歯止めがかからない限り、路線廃止の流れは避けがたい。山あいや海沿いを走る路線は災害にも弱い。時に数百億円にのぼる復旧費は重荷だ。土砂崩れで不通になったまま廃止された岩泉線はその典型だ。

 だが公共性の高い鉄道事業の性格から、廃止はあくまで最終手段と考えるべきだ。法律上、鉄道会社は国に届け出るだけで路線を廃止できるが、できるだけ時間をかけて沿線住民の理解を得る必要がある。

 三江線の場合、JR西日本は、乗客が1日平均183人しかおらず、年10億円近い赤字になっていると説明する。

 ただ、列車は1日17本だけ。午前に列車が出ると夕方まで1本も来ない駅もある。乗客を増やすため、利便性を高める努力をどこまで尽くしたのか。住民が抱く当然の疑問に、JRは丁寧に答えていくべきだ。

 地元も「とにかく存続を」と訴えるだけでは限界がある。

 明治以来、鉄道が交通の主役だった日本では「鉄路は地域のシンボル」と言われてきた。ただ、鉄道は路線を簡単に変えるわけにいかず、運行ダイヤも融通がきかない。過疎地に適した足とはいいがたい。

 需要をよく見極める必要がある。高校生の通学や高齢者の買い物、通院が主ならば、路線やダイヤを柔軟に組めるバスや予約制の乗り合いタクシーがより喜ばれる場合もありえよう。

 人口が少ない地域ではどんな交通でも黒字化が難しい。運行経費をどこまで公費で負担するかという議論も欠かせない。

 大事なのは、地域に必要な足は自分たちで守るという意識だ。自治体が先頭に立ち、住民と知恵を出し合いながら、どういう公共交通が望ましいか、早め早めに考えていくべきだ。