関西空港と大阪(伊丹)空港の運営が、来年4月から民間に委ねられる。現在は新関空会社の持つ運営権が、オリックスと仏バンシ・エアポートの企業連合に売却されることになった。企業側は以後44年間で、総額2兆2千億円を払う。

 1日計10万人が利用する両空港は、日本の西の玄関口だ。民間の知恵による活性化を期待する声は大きい。

 企業側は44年後の旅客数と営業収益を、14年度の約1・7倍に増やすとの目標を掲げた。年490億円超を払いながら利益をあげるのは容易ではない。くれぐれも安全性や利便性を損なわないよう注意してほしい。

 もともと運営権の売却は、関空建設に伴う1兆1千億円の借金を返すため、政府が発案した。民間資金を活用したインフラ整備は安倍政権の成長戦略の一つだが、実際は関空の経営の行き詰まりを解決する「失敗のツケ回し」の側面が強い。

 新関空会社は2兆円超の価格設定にこだわり、入札に参加できる企業の代表も国内勢に事実上絞った。このため多くの企業が尻込みし、正式な参加はオリックス連合だけだった。

 これでは競争原理が働かない。空港運営権の売却は仙台空港で交渉が進み、高松や福岡などでも検討中だ。今回のやり方が妥当だったか。今後のためにも検証が必要だ。

 アジアの富裕層増大で訪日観光客は伸び続けている。

 格安航空会社の拠点化に注力した関空は、それを追い風にここ数年、利用者を伸ばしている。それでも韓国・仁川やシンガポール・チャンギといったアジアの巨大空港には路線網、旅客数とも遠く及ばない。

 企業連合の中核となるバンシは、欧州を中心に25空港を運営する。関空の弱みである欧州や北米への新規就航で交渉力を発揮してほしい。

 訪日客の急増で、関空では休憩場所の不足や入国審査の混雑に不満が強い。利用者の視点に立った改善も期待したい。

 新関空会社は引き続き関空、伊丹の施設を保有する。過去には国の出向者が力をふるう傾向が強かったが、今後は運営への干渉を最小限にすべきだ。便数増につながる規制緩和やアクセス交通の改善など、国がやるべきことはほかにある。

 神戸空港とのすみ分けも課題だ。神戸市は利用が伸び悩む空港の運営権をオリックス連合に売却したいとする。ただ、押しつけは好ましくない。関空と伊丹を民間に託す以上、企業側の自主判断に委ねるのが筋だ。