クローズアップ現代「13億人のバーゲンセール〜急成長!中国・ネット通販〜」 2015.11.13


すさまじい勢いで増え続ける売り上げの額。
合計912億人民元。
中国のインターネット通販のきのう一日の売り上げです。
日本ですっかりおなじみとなった中国人による爆買い。
今、この購買力がネットの世界へ向かっています。
きのう、中国で行われたネット通販の大バーゲンセール。
人々はスマートフォンに向かい倉庫からは大量の荷物が吐き出され宅配業者が街を行きます。

このビッグチャンスをものにしようと日本企業も打って出ました。

中国13億人が熱狂したバーゲンセール。
その一日に密着しました。

こんばんは。
「クローズアップ現代」です。
日本に来て日用品から高額商品までいわゆる爆買いする中国人観光客。
その購買力の力強さ消費パワーから改めて13億人の市場が持つ潜在力を感じます。
この夏、上海株が急落し先月発表された中国のGDPは6年半ぶりに7%を下回るなど中国経済の減速が鮮明になっています。
こうした中、中国政府は個人消費を今後の経済のけん引役にしようとしています。
製造業で世界の工場とまでいわれ外需と不動産開発に依存する経済で急成長してきた中国ですが今、ニューノーマル・新常態を掲げ外需から内需主導への構造転換を目指しています。
中国の消費パワー。
スーパー、コンビニ、デパートの売り上げで見ると伸びは緩やかです。
一方、ネット通販で見ると取り引き額は急拡大していまして去年の市場規模はその前の年の1.5倍。
ことしは80兆円に達すると見られています。
中国のネット通販取り引き額はアメリカを抜いて今や世界一です。
購買力の高まりとともに台頭しているネットビジネス。
その勢いのすさまじさは中国のネット通販大手のアリババが大バーゲンセールを打ったきのう11月11日に象徴的に表れます。
もともと、この日は1が並ぶため「独身の日」と呼ばれ独身者が自分にご褒美を買う日でした。
今では中国全土を巻き込む買い物の日となっています。
きのうだけでアリババの売り上げは1兆7000億円。
巨大市場をビジネスチャンスにしようとセールに挑む日本企業もあります。
内需が中国経済立て直しの鍵となるのか。
買い物に沸いた一日をご覧ください。

北京オリンピックの競技場に置かれたバーゲンセールの特設会場。

午前0時の開始と同時に売り上げ額を表示するカウンターが急上昇。
中国全土から注文が殺到しました。
専用ウェブサイトに掲載されているのは洋服やおむつなどの日用品。
さらには自動車まで。
600万種類に上る商品が軒並み半額以下の大セールです。
日付が変わると同時に、一斉にスマートフォンに向かう人たち。

開始から僅か12分。
サイトの売り上げは100億人民元。
日本円で1900億円を突破しました。
これまでネット通販の普及が遅れていた中国。
そこに革命を起こしたのがバーゲンを仕掛けたアリババです。

サイトの売り上げは年間47兆円。
この3年で4倍近くに急成長しています。
その秘密はコピー商品が多く出回る中国で信用を確保する独自の決済システムにあります。
従来のネット通販では客は、注文後まず最初に店への支払いを済まさなければなりませんでした。
しかし店から商品が届かなかったり届いても偽物だったりとトラブルが後を絶たずネット通販は根づかなかったのです。
一方で、この会社のシステムでは客は事前にネット上にお金を預けておきます。
客が注文をするとまず店から商品が届き客はそれを確認。
商品に納得して初めて支払いが行われるのです。

北京に暮らすこの女性。
街の店舗に並んでいる中国人向け商品には信用が置けないといいます。

今ではすっかりネット通販に魅了されているこの女性。
きのうのバーゲンセールでもネットショッピングを堪能しました。

中国経済が減速する中でもこの日ばかりは消費者の購買意欲は衰えません。
外資系企業で働く許麗ハンさんです。
最近、友人たちとの会話は夏の上海株の暴落など暗い話が少なくありません。

ふだんはむだづかいをしないよう心がけている許さん。
年に一度のこの日値段が安くなった日用品を中心に次々と購入しました。

中国全土から殺到する注文。
この日だけで4億6700万件に上ります。

ふだん400人が働くこの会社の倉庫では3000人に増員し24時間態勢で商品を発送します。
宅配業者もこの日のうちにできるだけ多くの荷物を届けようと大忙しです。

地方のテレビ局もこの日のバーゲンの様子を大きく伝えました。

ことしはこれまで消費の中心ではなかった農村地域からの購入も目立ちました。
中国全土が熱狂したバーゲンセール。
この日1日の売り上げは1兆7000億円を突破。
過去最高を更新しました。

今夜のゲストは、中国経済、ならびに中国のネットビジネスに大変お詳しい、富士通総研主席研究員の金堅敏さんです。
アリババの1日のバーゲンセールの売り上げ、1兆7000億円、都市からも、そして農村からも参加したと。
この結果、どう見ていらっしゃいますか?
最初は私もびっくりしてですね、なぜかというと、そんなに高い伸び率はないかと思ったら、なぜかというと、中国はEC、つまりネットショッピングの普及率は非常に高いんで、10%以上も超えてる。
日本は4.4%、アメリカは6.6%ぐらいですね。
個人消費に占める割合が10%?
そうですね。
非常に高いから。
で、もう一つは、こんなにたくさん1日でやると、このネットショッピングを支えるインフラ、あるいは、この土台、本当に大丈夫かと、そういう心配があるし。
パンクするんじゃないかと、システムが。
そうですね。
あとはやっぱり、GDP全体が、経済成長がスローダウンしてるので、消費は控えるんじゃないかと、そういう心配があるんですね。
ふたを開けてみると、非常に伸び率、活発になってると、需要、経済力、購買力があると分かりましたですね。
もう一つは、インフラが本当に改善されてるですね。
こんなに1日で、そんな何億人の買い物よりも、インフラダウンしないで、ちゃんと動いてる。
それは非常にすさまじいものだと、私は思うんですね。
そして、中国でインターネットにアクセスできている人口は、およそ半分というふうにいわれてますけれども、実際にネットショッピング、ネット通販をやる方々というのは、どれぐらいいらっしゃるんですか?
そうですね、ネットユーザーが大体6億5000万人ぐらいで、ネット通販やるのは、大体4億人ぐらいですね。
おっしゃった、パンクしなかったシステム、どういったところがこれだけの取り引きをサポートするうえで、大事なところっていうのは、どんなところが充実してたんでしょうか。

一番重要なのは、やっぱりいくつかですね。
一つは通信インフラ。
これ、通信インフラがないと、それはオンラインでできないし、あとは支払い、決済システム。
決済システムは、いちいち銀行へ行くじゃなくて、クレジットカードじゃなくて、すぐ決済できるようになるんですね。
オンライン決済システムと。
もう一つはやっぱり、物流ですね。
去年までは結構、物流、いろいろ問題があった。
1日でこんなに、4億個の小包が出ると。
ことしはそんな大きな問題にならなかった。
つまり、物流の中でも、結構改善されてるんですね。
あるいは、IT技術の応用とか、ロボットを応用するとか、あるいは、倉庫を合理化するとか、非常にバック、支える所が非常に考えて、革新していると、そういうところが、非常にもう一つの注目すべき点ではないかなと。
これだけの取り引きを支える基盤がもう、かなり強固になってきたということなんですね。
そうですね。
ただ、中国経済減速して、6年半ぶりに7%、割り込んで、もう少し買い控えするんではないかと、消費意欲はどこまであるのだろうかという心配もされてたわけですけれども、なぜ非常に旺盛な購買意欲があるんですか?
全体で調べてみると、あるいは、私の友達や親族とか、いろいろ聞いてみると、やっぱりいくつか、もともとそういう購買力の素地があると。
一つは、中国がもともと、貯蓄率が非常に高いですね。
だから、この貯蓄率が今、購買のほうに、消費のほうに向かってると。
将来心配だと使えないですよ。
逆に、将来心配しないように、政府が一生懸命支えてるんですね。
例えば社会保障システムとか、医療保険とか、そういうところが全国的に広げていくと、安心してお金を使うように。
もう一つ政府やってるのは、最低賃金を引き上げると。

どれぐらいですか?
毎年13%伸びてるんですね。
それは、経済成長が落ちてきてもやると、そういうことは、やっぱり政府が一生懸命、投資から、消費の経済ですね。
もう一つ、非常におもしろい中国の特徴では、金融資産、お金を持ってるのが、若い人が多いですね。
日本は結構、年寄りの人が持ってる、金融資産。
中国はやっぱり、20代から40代まで、こういう人が非常に多いですね。
こういう人たちは、ほとんどデジタル、あるいはオンラインですね、ネットユーザーになってるんで、これが結び付くと、非常に開花されると、そういう面があるんじゃないかなと思います。
さあ、続いて、この中国のネット通販市場に大きなチャンスを見て挑んだ日本企業の姿です。
アリババと連携している日本の大手通販会社が開いた説明会。
化粧品会社や飲料メーカーなど150社が集まりました。

中国のネット通販の可能性の大きさを強くアピールしました。

外国企業の参入を促したい中国政府は2年前特別な地区を設けました。
そこに倉庫を置けば税金の負担が軽くなり手続きも簡素化。
中国に店舗を置かなくても消費者に安く早く商品を届けられるのです。
この仕組みを利用しことし初めてバーゲンセールに挑戦した企業があります。
中国でも人気の高い子ども服メーカーです。

爆買いの中国人観光客の増加で去年より1割以上売り上げを伸ばしています。

中国でのネット通販進出の責任者で執行役員の千田弘志さんです。
日本に来る客だけでなくネット通販を利用する億単位の中国人を、顧客として取り込みたいと考えました。

セールで注目商品としたのはこの靴。
4割引きで売り出します。

セールまで1か月を切ったこの日千田さんは中国のアリババ本社に向かいました。
この日、アリババの担当者からセール1日の売り上げ目標を提示されました。

千田さんは注目商品の靴を2万1000足用意したことを報告。
しかし…。

アリババ側は、さらに2万足追加するように求めてきました。

商品が不足すれば顧客が逃げてしまうと多めの在庫を確保するよう求めてきたのです。
千田さんはその場で日本の部下に電話しました。
千田です。
聞こえる?
聞こえます。
プラス2万足。
なんとかならない?
難しい言うてたら商売にならへんがな。
今、チャンスやねんで!
はい、そうですね。

急きょ、生産を前倒ししてなんとか追加の1万足を確保しました。

その2週間後。
千田さんは不安を募らせていました。

指摘を受け合計3万1000足の在庫を確保した靴。
鍵となる事前の予約がまだ19%と伸び悩んでいたのです。
千田さんはグループ会社の役員たちに進捗状況を報告しました。

報告を終えようとしたところ。

バーゲンセール当日。
午前0時に販売が始まると予想を超えるスピードで注文が入ってきました。

そして。

終わり。
終わりました!皆さん、お疲れさんでした。

注目商品の靴は3000足売れ残りましたが1日の売り上げ額はおよそ2億6000万円。
目標を大きく超えました。

今の千田さんは、中国市場の規模感を、肌で感じてましたけど、どうご覧になられました?
全体的には、やっぱりそういう経験しないと、なかなか難しいですね。
日本企業の中では、すでに経験のある、ファーストリテイリングとか、あるいは花王とか、大成功している、今回。
先ほどのビデオの中の企業は初めて、参入してるんで、やっぱり不安もあるし。
やっぱり、一回経験すると、いろいろ分析したり、データをもらったり、あるいは、自分の消費者とコミュニケーションを図っていたり、準備をもっと前にしてやっていくと、非常に順調に成長していくと思いますけれども。
本当にあのネットの先に広がる大市場、そして、日本に来て、そしてお買い物してくれる、中国の消費者、これを相乗効果を、どうやって作り出すのか。
それは非常に重要ですね。
普通、日本企業では、日本の店舗を担当する部署と、中国ネットビジネス担当部署とか、分けられるんですね。
これからはトータルで戦略をやらなきゃいけないと。
どこの部分は促販は、拡販はネットでやる、ここの部分は日本国内でやるとか。
例えば、差別化するとかですね、そういうことをやらないと、お互いに食いつぶしちゃうような可能性もあるから、そういう意味では、例えばネット通販ではいろいろ買えるけれども、日本に来ないと買えないものとか、あるいはサービスと一体化する、そういう体験とか、それが出ないとできないとか、そういう戦略をやっていくと、おのずとネットでも買うし、日本にいて、体験したいと、楽しいですね。
そういうこともやりたいと、出てくるんですね。
そういう相乗効果が出ていれば、一番いいですね。
ネット取り引きの売上額が急成長している中国。
これから内需で、経済の立て直しをしたいということですけれども、これからは、どういうふうにして、具体的に立て直しを図っていこうと、中国は考えているんですか?
中国全体としては、例えば、ネットビジネスですね、ネット通販も同じですが、促進する目的は、一つは新規産業を作る。
この新規産業はもちろん、ショッピングとか、あるいはネット決済とか、あるいは物流とか、いろいろ出てくるんですが、もう一つは、この消費者、賢い消費者の力で、中国の非常に伝統的な国有企業とか、改革を迫ると、そういう面もあるし、だから、CtoBですね。
最後に一つは、やっぱり農村地域の市場を開拓する。
そうなると、都市部と農村部の格差を解消する。
もう一つ、今、中国は結構、労働集約で、産業は海外に移転するんですが、こういう農村の出稼ぎ労働者も、農村に帰って、ネットビジネスやれば、就職先もどんどん増えるし、問題解決になる。
なるほど、雇用の場になるということですね。
2015/11/13(金) 01:00〜01:26
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代「13億人のバーゲンセール〜急成長!中国・ネット通販〜」[字][再]

11月11日は中国で「独身の日」と呼ばれ、消費を謳歌(おうか)する日。去年は1日で1兆円を売り上げた。この日の中国ネット企業や参入しようとする日本企業に密着する

詳細情報
番組内容
【ゲスト】富士通総研主席研究員…金堅敏,【キャスター】国谷裕子
出演者
【ゲスト】富士通総研主席研究員…金堅敏,【キャスター】国谷裕子

ジャンル :
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事

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