魚類最強のハンターホホジロザメ。
狙われているのはオットセイ。
サメが飛んだ!カメラは衝撃のハンティングを捉えました。
ここは南アフリカの小さな島。
子育ての時期島はオットセイの母親と子どもたちであふれかえります。
でも周りにはホホジロザメがうようよ。
「世界一危険な海」と言われます。
取材班はオットセイとサメの攻防に密着。
特製のオットセイカメラで空飛ぶサメの狩りの秘密を解明!さらに最新のドローンで追跡すると驚くほどたくましいオットセイの生き残り作戦が見えてきました。
群れが四方八方へ飛び散った!チームワークを駆使してサメを翻弄するんです。
世界一危険な海で繰り広げられる命の攻防に迫ります。
(テーマ音楽)ザトウクジラの豪快なジャンプ!マイルカの大群も現れました。
大西洋とインド洋2つの海が出会う南アフリカ。
豊富な食べ物を求めて大型動物が集う世界有数の豊かな海です。
小魚の群れを突き破って登場!今日の主人公ミナミアフリカオットセイです。
体長は1.5メートルほど。
アフリカ大陸南部の沿岸に暮らしています。
狙いを定めると見事にキャッチ。
小魚の素早い動きもなんのその。
クルクルと自在に泳ぎ回り次々に捕らえていきます。
この俊敏さこそミナミアフリカオットセイの武器なんです。
食事を終えたオットセイ。
水面をジャンプしながら泳いでいきます。
向かっているのは長さ150メートルほどの小さな島。
南アフリカ南部のシール島です。
岩の上にいるのは全部オットセイ!6月島は子育ての最盛期を迎えています。
ここは毎年1,000頭もの子どもが生まれるミナミアフリカオットセイの一大繁殖地なんです。
海から戻ってきました。
い〜よいしょっと。
柔らかい体を折り曲げながら器用に岩を登っていきます。
キョロキョロ辺りを見回して…。
(鳴き声)鳴いています。
子どもが近づいてきました。
この2頭は親子。
お母さんはお乳を与えるために帰ってきたんです。
子どもたちは生後7か月ほど。
まだ自分の力で食べ物をとることはできません。
島でお母さんの帰りをひたすら待っています。
お母さんは海へ出ると3日ほど帰ってきません。
久々のお乳です。
一度に育てる子どもは大抵1頭。
それをお母さんだけで育てます。
母と子は固い絆で結ばれているんです。
でもそんなオットセイを狙う者がいます。
そうホホジロザメです。
映画「ジョーズ」のモデルにもなったどう猛なハンターが島の周りをうようよしているんです。
ここでホホジロザメを8年前から調査しているエンリコ・ジェンナリ博士です。
博士の協力のもとまずはホホジロザメを観察してみましょう。
用意したのは金属製の頑丈な檻。
この中にカメラマンが入って撮影すればサメに襲われる心配はないと博士は言います。
さあスタンバイOK!サメをおびき寄せるためマグロの肉を投げ込みます。
早速あの特徴的な背ビレを発見。
ホホジロザメです。
エサのマグロに夢中になっている隙にその姿を狙います。
うわっ来ました!カメラマンと比べるとこの大きさ。
見ているこちらまでドキドキしますね。
体長は最大で6メートル。
哺乳類を主な獲物とする魚類最強のハンターです。
狩りの武器は開くと1メートル近くもある巨大な口。
口の中には鋭い歯がびっしり!歯は何層にも並んで生えていて次々と新しい歯が生え変わってきます。
さらに歯の縁はギザギザ。
かみついた獲物の肉を一瞬で切り裂くといいます。
まさに「ジョーズ」です。
撮影を続けていると…うわっ右からもう一匹!あちこちから現れます。
世界の海に広く生息しているホホジロザメ。
日本では1匹見つかるだけで大騒ぎになります。
それがここシール島周辺にはこの時期世界一とも言われる密度で暮らしているんです。
そんな恐ろしい海へオットセイのお母さんたちは出て行かなければなりません。
子どもにお乳を与えるには遠く離れた食事場所まで行く必要があるからです。
早朝島に戻ろうとしているオットセイを見つけました。
顔を上げ島の方向を確認しながら泳ぎます。
それを待ち構えるホホジロザメ。
静かに深みへと沈んでいきます。
その時です。
うわっやられた!空中へ逃げるオットセイ。
しかしホホジロザメの巨体も空へと飛び上がりました。
恐るべき狩りです。
海から突如現れたホホジロザメ。
一体どうやって襲ったんでしょうか。
そこでオットセイカメラ!研究者の指導のもと製作したオットセイの模型。
そこに複数の小型カメラを搭載して襲ってくる時のサメの動きを捉えます。
ホホジロザメは水面に浮かぶオットセイのシルエットを目当てに獲物を見つけるといいます。
果たしてオットセイカメラにも襲いかかるでしょうか?来た〜!はじき飛ばされるオットセイカメラ。
ホホジロザメの全身が空中に飛び出しています。
この時2つのカメラがホホジロザメの豪快かつ緻密な動きを捉えていました。
まずはオットセイの真下を撮影したカメラの映像から見てみましょう。
来ました!姿が見えてからの時間を計ってみるとなんとたったの0.5秒!この一瞬で逃げるのは至難の業です。
続いてオットセイの視線の方向に向けたカメラの映像を見てみましょう。
今ぶつかってきましたが…うん?ホホジロザメが見えません。
スローで確認してもやはり襲ってくるサメは写っていません。
つまりオットセイには見えない方向から来たんです。
ホホジロザメは水深10メートル付近でオットセイを待ち構えます。
水面を進むシルエットの動きから進路を予測し急浮上。
オットセイの死角となる真下から不意打ちをかけていたんです。
浮上しながらぐんぐん加速するホホジロザメ。
水面で最高速度に達します。
その勢いで空中へ飛び出すんです。
最近の研究でオットセイがホホジロザメの襲撃を特に受けやすい場所があることがわかってきました。
島のすぐそばの300メートル四方。
「デンジャラス・ゾーン」と呼ばれています。
襲撃の9割がこのデンジャラス・ゾーンに集中しているんです。
1日に10頭ものオットセイが襲われることもあるといいます。
母親が食事から帰ってこなければ子どもはお乳をもらえません。
サメが原因で命を落としてしまう子どもも少なくないんです。
おおおお…オットセイのお母さんも子どももかわいそうですなぁ。
そうですねヒゲじい。
うんうん…でもちょっと待った。
うん?あのうどうしてオットセイはホホジロザメに囲まれたこんな危険な島で子育てしてるんですか?もっと安全な場所ですればいいのに。
それがシール島の周辺ではここしか子育てできる場所がないんです。
え?どどうして?昔オットセイは広い範囲の海岸で子育てをしていました。
あ〜はいはいはい。
でも人間がオットセイの毛皮などを目当てに乱獲してしまったんです。
ひひどい。
はい。
現在捕獲は禁止されていますがオットセイは今も人を恐れて人が近寄りにくいシール島だけでしか子育てをしないんです。
そうだったんですか。
はい。
小さな島に密集してすむようになった結果今度はホホジロザメが集まってきました。
ホホジロザメもまた乱獲などで世界的に数を減らしています。
彼らにとってもここは貴重な狩り場なんです。
そうはいってもこんな調子だったらオットセイはいなくなっちゃうんじゃないですか?そこは大丈夫ですヒゲじい。
オットセイはやられてばかりじゃありません。
どういうこと?先ほどホホジロザメはオットセイのシルエットを見て襲いかかると言いましたよね。
はいはい。
そこで島が目前に迫るとこんな行動をします。
どれどれ?あっいなくなっちゃった。
そう海底まで潜ったんです。
息が続くかぎり島までなるべく深い場所を泳ぎます。
これならシルエットを隠せるので安全です。
そうか。
サメよりも深い場所を泳げば見つかりにくいというわけですな。
そのとおりです。
ホホジロザメ対策はほかにもあります。
夜に島を出ていくんです。
そうすればシルエットも暗闇に紛れ敵に発見されにくくなります。
これはほかの地域ではめったに見られない行動なんです。
へえ〜やりますなぁ。
はい。
オットセイはヒゲじいが驚くような作戦をまだまだ繰り出しますよ。
え〜?どどんな?それは…このあと第2章でお伝えします!ダハハ…。
オットセイがジョーズから上手に逃げる作戦早く知りた〜い!第2章ではドローンで空から大追跡。
あれ?群れが四方八方へ飛び散った。
ホホジロザメを翻弄する究極の作戦とは?南アフリカの沿岸で冬だけに見られる黒い帯。
長さは最大で10キロにもなります。
これ一体何だと思いますか?正体はイワシの大群。
プランクトンを求めて数億匹が大移動するというんです。
「サーディン・ラン」と呼ばれています。
このイワシを狙ってやってきたのはイルカの大群です。
時には数百頭もの大集団になるといいます。
あっイワシにアタック!次々に捕らえていきます。
あれ?今度はイルカの上に何かがやってきました。
水中は泡だらけ。
猛スピードで空から飛び込んできます。
正体はカツオドリ。
狙いはもちろんイワシです。
上空から海面目がけて垂直に急降下。
豪快ですね!こちらも豪快さでは負けていません。
クジラです。
やはり食べ物を求めて集まってきました。
潜ってみるとさらに大迫力。
体長およそ15メートルのミナミセミクジラです。
あっ後ろからザトウクジラも!イワシからクジラまでさまざまな生きものが大集結する南アフリカの海。
スペクタクルな光景がいっぱいの豊かな海なんです。
恐ろしいホホジロザメに狙われながらも子育てを続けるミナミアフリカオットセイ。
7月。
子どもたちの様子に変化が見られました。
こちらのお母さんと子ども。
あっ飛び込んだ!こちらでも。
子どもたちが泳ぎの練習を始めたんです。
でもホホジロザメは大丈夫なんでしょうか。
実は島の周りは岩に囲まれた浅瀬になっています。
体の大きなホホジロザメは入ってこられません。
あれ?この子どもは水に入るのをためらっているようです。
ほかの子どもたちはどんどん入っていきますがなかなか決心がつかないようです。
さあ勇気を出して!ようやく入りました。
間もなく子どもたちはホホジロザメの包囲網をくぐり抜け食事に出かけなければなりません。
安全な浅瀬で練習を繰り返し俊敏な泳ぎ方を身につけていくんです。
この時期お母さんたちも正念場を迎えます。
成長した子どもにお乳を与えるためにますます食べなければなりません。
危険な日中でも食事に出かけるようになるんです。
そんなある日のこと。
あれ?直進していたオットセイが…突然方向転換しました。
一体どうしたんでしょうか?ドローンで空から観察してみます。
左へ行くオットセイ。
右に方向転換しました。
今度は左。
どうやらジグザグに泳いでいるようです。
このジグザグ泳ぎが見られるのは主にデンジャラス・ゾーンの中だということも観察からわかってきました。
ということはホホジロザメの攻撃から逃れるための作戦に違いありません。
思い出して下さい。
ホホジロザメはオットセイの泳いでいく方向を予測しアタックしていました。
でもオットセイが小刻みに方向を変えると進路が予測しづらくなります。
巨大なホホジロザメは小回りが利かないため途中で進路を変えることができないんです。
オットセイのジグザグ泳ぎ。
ホホジロザメの作戦の裏をかく高度な作戦だったんです。
さらにオットセイにはもう一つ秘策があることがわかってきました。
よ〜く見て下さい。
かわしました!無事に逃げ延びたんです。
こんなふうに攻撃をギリギリでかわすのがオットセイの奥の手なんです。
ちょっと待った!やっぱり来ましたねヒゲじい。
そうですよ。
奥の手だなんて大げさじゃないですか?たまたま運よく逃げられただけにしか見えませんぞ。
いやいやそれが偶然じゃないんです。
オットセイは攻撃の直前でも相手を察知できればほとんどの場合身をかわすことができるんです。
え〜?でも見えてからわずか0.5秒で襲いかかるって言ってましたよね。
そんな短時間で身をかわせるんですかね?はい。
オットセイの俊敏さをもってすれば十分間に合います。
そのためには攻撃してくるサメの姿を事前に察知できるかどうかがポイントになります。
あ〜なるほどねぇ。
こちら泳いでいる時の顔の向きをよ〜く見て下さい。
片方下に向けているのがわかりますか?うん?ああ〜確かに。
これ死角になりやすい真下を警戒して一瞬でも早く攻撃に気づけるようにしているんです。
へえ〜!実はホホジロザメの最初のアタックをかわすことができればほとんどの場合オットセイは逃げきることができます。
それほど小回りと俊敏さでは優位に立っているんです。
そうなんですか!はい。
さらにこんなシーンも目撃しました。
手前にいるホホジロザメにオットセイのほうから近づいていきます。
ひえ〜それは危ない!ご心配なく。
オットセイはホホジロザメの存在に気づいているためこの状況では決して捕まることはないというんです。
ほ〜う!オットセイのすばしっこさがここまで武器になるとは思いませんでした。
ホホジロザメはこう言ってますぞ。
「オットセイもっとスピード落っとせい!」なんちゃってね。
食事に出かけていくオットセイたち。
いつにも増して大きな群れを作っています。
その中に…小さなオットセイを発見!子どもです。
大人たちと一緒に食べ物をとりに行くようになったんです。
でもこれこそオットセイにとって最大のピンチ。
スピードの遅い子どもと泳ぐため群れ全体がホホジロザメに狙われやすくなってしまうんです。
研究者によると大人たちは子どもが一緒の時には大きな群れを作るといいます。
なるべく多くの目で敵を警戒しいち早く察知できるようにしているんです。
そしてそんな群れが繰り出す究極の作戦があります。
まっすぐに進む群れ。
あっ!一体何が起きたんでしょうか?突然群れがバラバラになり全員が向きを変えました。
四方八方に散らばります。
ホホジロザメです。
狩りは失敗に終わりました。
多くの目で警戒することでホホジロザメの接近にいち早く気付いた群れ。
襲撃の直前一斉に四方八方へ飛び散ります。
こうしてホホジロザメに的を絞らせにくくするというんです。
仲間とのチームワークこそオットセイの最後の切り札だったんです。
取材も終わりに近づいたころ。
島には立派に成長した子どもたちの姿がありました。
守り育ててくれた母から離れ自分で食べ物をとるようになるのももうすぐです。
やっと子育てを終えたお母さん。
でもほっとしたのもつかの間。
4か月後には次の子どもの出産が控えています。
世界一危険といわれる海で暮らすミナミアフリカオットセイ。
最強の敵にもひるむことなくたくましく生き抜いていました。
そのワザや知恵そして勇気は母から子へと受け継がれていくのです。
(素彦)群馬の生糸を守るためにも2015/11/15(日) 19:30〜20:00
NHK総合1・神戸
ダーウィンが来た!「オットセイVSホホジロザメ 世界一危険な海の攻防」[字]
魚類最強ハンター・ホホジロザメがオットセイを襲う!壮絶な命の攻防を特製カメラ&最新ドローンを駆使して徹底解析!するとオットセイの驚異の生き残り作戦が見えてきた。
詳細情報
番組内容
映画「ジョーズ」で知られる魚類最強ハンター・ホホジロザメ。体長は最大6m。その巨体が空へ舞い、逃げるオットセイを捉えた!壮絶な命の攻防が繰り広げられるのは南アフリカの海。子育て中のオットセイを狙ってホホジロザメが集結し、「世界一危険な海」とも言われる。特製の“オットセイカメラ”や最新ドローンを駆使して、サメとオットセイの攻防を徹底解析。するとオットセイの驚異の生き残り作戦が見えてきた。歌:平原綾香
出演者
【語り】近田雄一,龍田直樹,豊嶋真千子
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
趣味/教育 – 旅・釣り・アウトドア
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音声 : 2/0モード(ステレオ)
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